国土交通省は、令和7年4月の道路法改正から1年を迎え、全ての地方整備局等と高速道路会社で「道路脱炭素化推進計画」が策定されたと発表しました。

道路分野では、ペロブスカイト太陽電池、地下水熱・地中熱を活用した融雪、使用済み電池を活用したソーラー街灯など、脱炭素に資する先進技術の現場実装を進める方針です。

道路工事、道路維持管理、舗装、照明、電気設備、除雪・融雪、土木資材に関わる中小建設業にとっては、今後の公共工事の仕様や提案テーマが変わっていく可能性があるため、早めに確認しておきたい発表です。

何が発表されたのか

今回の発表では、道路法改正を受けた「道路脱炭素化推進計画」の策定状況と、道路管理分野での先進的な取組事例が示されました。

令和8年4月30日時点の策定状況は、次のとおりです。

  • 地方整備局:10ブロック、計画策定率100%
  • 高速道路会社:6会社、計画策定率100%
  • 都道府県:14県
  • 市町村:20市町村

国土交通省は、道路は国内のCO₂排出量の約18%を占める分野であり、道路施策における目標設定や取組強化が必要だとしています。

現場実装が進む主な技術

発表資料では、道路管理分野の先進的な取組として、次のような事例が挙げられています。

  • フィルム型ペロブスカイト太陽電池を高速道路施設へ導入
  • 地下水熱・地中熱を活用した融雪
  • 使用済み電池を活用したソーラー街灯の設置
  • センサー照明による道路照明の高度化
  • 波力・風力・小水力・バイオマスなど自然エネルギーの活用

たとえば、フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、軽量・柔軟という特徴があり、これまで設置が難しかった場所への導入が期待されています。発表資料では、NEXCO西日本による高速道路施設への導入事例が紹介されています。

また、地下水熱・地中熱を活用した融雪は、除雪・融雪に伴う電力消費やCO₂排出の削減につながる技術として紹介されています。積雪地域の道路維持管理に関わる企業にとっては、今後の発注内容や技術提案の方向性に関係する可能性があります。

中小建設業にとっての実務影響

今回の発表は、建設会社に直ちに新たな義務を課すものではありません。ただし、道路管理者側の計画が整い始めたことで、今後の公共工事や維持管理業務では、脱炭素に関する仕様・評価・提案が増えていく可能性があります。

特に注目したいのは、次の分野です。

  • 道路照明のLED化、省エネ化
  • 再生可能エネルギー設備の設置・維持管理
  • 融雪設備、除雪効率化に関する技術
  • 低炭素材料、低炭素施工機械の活用
  • 道路空間を活用した発電設備や関連設備
  • トンネル・道の駅・駐車施設・遮音壁など道路附属施設での設備導入

道路管理者が脱炭素化推進計画を策定している地域では、今後の工事・業務発注において、従来の価格・品質・安全に加えて、エネルギー消費やCO₂削減の観点がより重視される可能性があります。

経営者がまず確認すべきこと

中小建設業の経営者は、まず自社の営業エリアに関係する道路管理者の動きを確認することが重要です。

具体的には、次の点を確認しておくとよいでしょう。

  1. 自社地域の都道府県・市町村が「道路脱炭素化推進計画」を策定しているか
  2. 地方整備局や高速道路会社の計画に、自社が関わる工種が含まれているか
  3. 今後の入札公告・仕様書に、LED化、再エネ、低炭素材料、低炭素機械などの記載が増えていないか
  4. 自社が保有する施工実績・技術・協力会社網で、脱炭素関連の提案ができるか
  5. メーカー、電気工事会社、設備会社、舗装会社などとの連携余地があるか

国土交通省は、道路分野のカーボンニュートラルに関するページで、脱炭素化政策集や道路脱炭素化推進計画策定マニュアルなどの参考情報を掲載しています。自社の営業・積算・技術部門で一度確認しておく価値があります。

「環境対応」は公共工事の提案力になる

今回の発表で重要なのは、脱炭素が理念ではなく、道路管理の実務に入り始めている点です。

これまでも、建設業では安全、品質、工期、価格が重視されてきました。今後はそこに、エネルギー使用量の削減、再生可能エネルギーの活用、低炭素材料の採用、維持管理コストの低減といった観点が加わっていく可能性があります。

中小建設業にとっては、大規模な研究開発を自社単独で行う必要はありません。まずは、発注者の計画を読み、どの工種でどのような技術が求められそうかを把握し、協力会社やメーカーと組んで提案できる体制を整えることが現実的です。

道路脱炭素化は、道路工事・維持管理に関わる会社にとって、今後の公共工事受注に影響するテーマになっていくと考えられます。