国土交通省は、令和8年6月1日から6月30日までを「土砂災害防止月間」として、全国で土砂災害防止に関する行事、防災訓練、啓発活動などを実施すると発表しました。

今回の発表そのものは、月間行事や表彰、絵画・作文募集などの周知が中心です。 ただし、実施要領を見ると、中小建設業にとって見逃せない言葉があります。

「砂防設備等の点検」「土砂災害警戒区域等の確認」「避難場所・避難経路の確認」「砂防関係工事の担い手確保と安全確保」です。

梅雨、台風、線状降水帯のような大雨が現場を直撃する季節に入ります。 このニュースは、単なる啓発月間ではなく、自社の現場と人を守るための点検開始の合図として読むべきです。

何が始まるのか

令和8年度の「土砂災害防止月間」は、6月1日(月)から6月30日(火)までです。 そのうち、6月1日から7日までは「がけ崩れ防災週間」とされています。

国土交通省と都道府県が主催し、全国で次のような取組が行われます。

  • 土砂災害防止「全国の集い」の開催
  • 土砂災害防止功労者の表彰
  • 小・中学生向けの絵画・作文募集
  • 土砂災害・全国防災訓練
  • 都道府県によるパネル展、情報伝達訓練、避難訓練、施設見学、防災教育など

特に令和8年度の防災訓練では、「情報を確認し、みんなで声をかけあって早めに避難する訓練」が重点的に実施される予定です。 キャッチフレーズは、「声かけて みんなで動く まず避難」です。

建設会社の現場でも、これはそのまま使える考え方です。 「危なそうなら各自判断」では遅れます。 誰が情報を見るか。誰が止めるか。誰が声をかけるか。 ここを決めておくことが重要です。

中小建設業がまず見るべきポイント

今回の実施要領では、土砂災害警戒区域等の周知、避難場所・避難経路の確認、砂防設備等の点検、防災訓練などが重点事項に入っています。

中小建設業としては、まず次の4つを確認したいところです。

1つ目は、施工中の現場が土砂災害警戒区域等に入っていないか。 山間部、法面、河川沿い、造成地、急傾斜地の近くでは、現場単位で確認が必要です。

2つ目は、資材置場・残土置場・車両基地の周辺リスクです。 日常的に人が少ない場所ほど、異常に気づくのが遅れます。大雨後に「置いていた資材が流れる」「進入路が崩れる」といった事態は、工期にも安全にも直結します。

3つ目は、従業員の通勤経路と帰宅判断です。 現場は大丈夫でも、通勤路や帰宅路が危険になることがあります。特に山道、谷筋、河川沿いを通る社員がいる会社は、早めの退避判断が必要です。

4つ目は、現場代理人・職長・協力会社への連絡体制です。 土砂災害警戒情報などが出たときに、誰が確認し、誰に伝え、どの段階で作業を止めるのか。ここを曖昧にしないことです。

「防災訓練」は建設会社の社内訓練にも置き換えられる

国土交通省は、全国の土砂災害警戒区域等で、住民参加による実践的な訓練を実施するとしています。 都道府県の主要行事にも、情報伝達訓練、避難訓練、ハザードマップ確認、土砂災害警戒区域の確認などが並んでいます。

これは地域住民向けの話に見えます。 しかし、建設会社に置き換えると、かなり実務的です。

たとえば、6月の安全衛生協議会や朝礼で、次の確認を入れるだけでも意味があります。

  • 現場周辺のハザードマップを確認する
  • 大雨時の作業中止判断を確認する
  • 避難場所と避難経路を確認する
  • 協力会社を含めた緊急連絡網を確認する
  • 土砂災害警戒情報が出た場合の動きを確認する

大きな訓練でなくても構いません。 大事なのは、「知っているつもり」を「全員が同じ行動を取れる状態」に変えることです。

砂防関係工事に関わる会社は「安全確保」の文言を見ておきたい

実施要領には、重点事項として次の内容も入っています。

「砂防関係工事の実施等に必要となる担い手確保のための取組及び安全確保の徹底」

また、主な実施内容として、中長期的な担い手の育成・確保、継続的な砂防関係工事の実施、現場の実態や課題の継続的な把握、安全施工管理の技術向上、遠隔施工等を活用した応急対策実施体制の確認が挙げられています。

ここは、砂防・法面・治山・災害復旧に関わる地域建設会社にとって重要です。

砂防関係工事は、地域の安全を支える仕事です。 一方で、現場条件は厳しくなりがちです。急傾斜、沢筋、崩壊地、降雨後の不安定な地盤。現場に入るだけでリスクがあります。

だからこそ、「災害対応力」と「安全に施工できる会社であること」そのものが、地域建設会社の価値になると考えたいところです。

自社で6月前半に確認したいこと

今回の発表を受けて、中小建設業がすぐにできる確認は次の通りです。

現場ごとの確認

  • 現場が土砂災害警戒区域等に該当するか
  • 周辺に急傾斜地、沢、法面、崩壊跡がないか
  • 大雨時に退避できる場所があるか
  • 避難経路が1本だけになっていないか

会社施設の確認

  • 事務所、倉庫、資材置場、車両置場の周辺リスク
  • 排水路、側溝、法面、擁壁の異常
  • 大雨後の点検担当者
  • 夜間・休日の連絡手順

人の確認

  • 現場代理人、職長、協力会社への連絡網
  • 若手や外国人材にも伝わる避難ルール
  • 通勤・帰宅判断の基準
  • 「誰が作業を止めるか」の明確化

地域情報の確認

  • 自社の都道府県で行われる防災訓練や情報伝達訓練
  • 市町村のハザードマップ
  • 土砂災害警戒情報の確認方法
  • 近隣の避難場所・避難経路

経営者としての見方

この発表は、派手な制度改正ではありません。 補助金のように、すぐ売上につながる話でもありません。

それでも、中小建設業にとっては大切です。

なぜなら、梅雨と台風の時期には、安全判断の遅れが、人命、工期、信用を同時に傷つけるからです。

建設会社は、地域の災害対応を支える側でもあります。 同時に、自社の社員と協力会社を守る側でもあります。

6月の土砂災害防止月間は、社内でこう声をかける良い機会です。

「今年の雨の前に、現場と置場と連絡網を一回見直そう」

それだけで、会社の守りは一段強くなります。 そして、その積み重ねが、地域から選ばれる建設会社の土台になります。