国土交通省は、民間企業や自治体などで働いてきた技術系社会人経験者を対象に、令和8年度第1回の総合職相当・技術系選考採用試験を実施すると発表しました。

募集区分は、課長補佐級と係長級です。採用予定数はそれぞれ十数名程度。受付期間は令和8年5月25日から6月22日17時までです。

対象分野には、土木、建築、住宅、道路、河川、上下水道、建設機械・施工、営繕などが含まれています。

つまり、これは単なる官庁の採用情報ではありません。建設業界で働く技術者が、国の政策側へ移る選択肢を持つというニュースです。

中小建設業にとってのポイントは「技術者の選択肢が増えている」ことです

今回の採用は、国家公務員試験によらない選考採用です。

民間企業などでの職務経験を持つ人材を対象に、国土交通行政の政策企画、立案、調査、研究などに従事する人を募集します。

応募資格は、令和8年6月1日時点で、次の職務経験がある人です。

  • 課長補佐級:正社員・正職員として通算7年以上
  • 係長級:正社員・正職員として通算2年以上

建設会社の現場で経験を積んだ人。設計、施工管理、積算、公共工事対応に関わってきた人。そうした人たちも、条件に合えば対象になり得ます。

中小建設業の経営者として見ておきたいのは、技術者の転職先が、同業他社だけではなくなっているという点です。

「うちは地元企業だから大丈夫」

「現場を任せているから辞めないだろう」

そう思っていても、技術者本人から見ると、選択肢は広がっています。民間、自治体、国。さらに、働き方や処遇、キャリアの見え方も比べられます。

見ておきたい数字は、給与と働き方です

受験案内では、モデル給与例も示されています。

課長補佐級は、本省補佐級・31歳、5級1号俸と仮定した場合で、基本給月額約44.6万円、年収約739万円とされています。

係長級は、本省係長級・25歳、3級1号俸と仮定した場合で、基本給月額約35.1万円、年収約581万円とされています。

いずれも、期末・勤勉手当を含む参考例です。超過勤務手当、扶養手当、住居手当、通勤手当は含まれていません。実際の算定は個人の経歴等や業務内容を踏まえるとされています。

勤務時間は、1日7時間45分。原則として土日祝日は休みです。休暇制度や育児休業制度なども案内されています。

ここで大事なのは、「国の給与が高いか低いか」を単純に比べることではありません。

見るべきは、技術者が自社を見るときの比較軸です。

給与。休日。残業。評価。将来の役割。家庭との両立。専門性をどう活かせるか。

これらが、今まで以上に横並びで見られるようになっています。

自社の採用・定着で考えたいこと

今回のニュースから、中小建設業がすぐに考えたいことは3つあります。

1つ目は、若手・中堅技術者にとって、自社で働き続ける理由が言語化されているかです。

給与だけで勝つのは簡単ではありません。ですが、中小建設業には中小建設業の強さがあります。

現場との距離が近い。判断が早い。若いうちから任される。地域に残る仕事ができる。社長や上司の顔が見える。

ただし、それは本人に伝わっていなければ意味がありません。

「うちにいれば、どんな技術者になれるのか」

「5年後、10年後にどんな役割を任せたいのか」

ここを話せる会社は、強くなります。

2つ目は、処遇と評価の説明力です。

給与水準そのものを急に変えるのは難しい会社も多いはずです。だからこそ、評価の基準が大事になります。

何ができるようになれば昇給するのか。資格を取ったらどう評価されるのか。現場代理人、主任技術者、管理職に進む道はどうなっているのか。

この説明があいまいだと、社員は外の情報を見たときに迷います。

3つ目は、働き方の見直しを「採用対策」ではなく「定着対策」として進めることです。

休日、移動、書類、残業、現場間の応援。現場の忙しさは簡単にはなくなりません。

それでも、業務の分担やデジタル活用で軽くできる部分はあります。書類作成の型をそろえる。写真管理を見直す。原価や工程の情報を共有しやすくする。

小さな改善でも、社員から見ると大きな違いになります。

今回の採用日程も確認しておきましょう

今回の選考日程は、次のとおりです。

  • 受付期間:令和8年5月25日(月)〜6月22日(月)17時
  • 第1次選考合格発表:6月26日(金)までに順次通知
  • 第2次選考:7月2日(木)〜7月9日(木)の指定する1日
  • 第3次選考:7月22日(水)〜7月30日(木)の指定する1日
  • 最終合格発表:7月31日(金)予定
  • 採用予定日:令和8年10月1日(木)

選考方法は、書類選考、面接試験、論文試験です。応募はメールで行い、履歴書と職務経歴書をPDF化して提出する形です。

もし社内に対象となる技術者がいる場合、すぐに何かが起きるとは限りません。

ただ、10月採用という時期を考えると、夏から秋にかけて人材の動きが出る可能性は意識しておきたいところです。

「選ばれる会社」になるために、まず棚卸しをしましょう

人材採用の環境は、静かに変わっています。

国も、自治体も、民間も、技術者を必要としています。土木、建築、施工、インフラに関わる経験は、社会全体で価値が高まっています。

だからこそ、中小建設業も悲観する必要はありません。

むしろ、今いる社員に対して、こう伝えられる会社になることが大切です。

「あなたの経験は、この会社でどう伸びるのか」

「この地域で、どんな仕事を残していくのか」

「そのために、会社は何を変えていくのか」

採用票を出す前に。求人広告を直す前に。まずは、自社の魅力と課題を棚卸しすることです。

それが、次の採用にも、今いる社員の定着にもつながります。

自社の採用・定着を見直すきっかけにする

今回の国交省の採用情報は、直接的には公務員採用の案内です。

ただ、中小建設業にとっては、技術者が何を見て職場を選ぶのかを考えるよい材料になります。

「うちの場合、給与や評価をどう見直せばよいか」

「若手に将来像をどう伝えればよいか」

「採用、定着、教育、原価管理、デジタル活用をどこから整理すればよいかわからない」

そう感じたら、一度外部の視点を入れて整理するのも有効です。

ネクスゲートでは、建設企業の持続的成長を支援する立場から、採用・定着、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで横断して、現場に合う形で整理と実行を支援しています。

無理な営業はいたしません。まずは「うちの場合はどう考えるべきか」という段階でも大丈夫です。

必要に応じて、お問い合わせはこちらからご相談ください。