国土交通省は、令和8年4月分の「建築着工統計調査報告」を公表しました。

4月の新設住宅着工戸数は62,569戸で、前年同月比11.4%増でした。 6か月ぶりの増加です。持家、貸家、分譲住宅がいずれも増えました。

一方で、季節調整済年率換算値は724千戸で、前月比1.7%減となりました。こちらは4か月連続の減少です。

つまり、表面上は「前年同月より増えた」月です。ただし、足元の勢いをならして見ると、まだ強い回復とまでは言い切れません。

中小建設業にとって大事なのは、増えた・減ったの一言ではありません。どの地域で、どの用途が、どの工種に近いところで動いているかです。

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住宅は前年同月比で回復。ただし、単月の反発として見る冷静さも必要です

4月の新設住宅着工は、総戸数で62,569戸でした。

内訳を見ると、次の通りです。

  • 持家:16,296戸、前年同月比19.5%増
  • 貸家:29,265戸、前年同月比17.3%増
  • 分譲住宅:16,702戸、前年同月比3.4%増
  • 分譲住宅のうち、マンションは6,293戸、前年同月比18.4%減
  • 分譲住宅のうち、一戸建住宅は10,156戸、前年同月比24.3%増

特に目立つのは、持家、貸家、分譲一戸建ての増加です。木造住宅、戸建て、賃貸住宅まわりの工事を主戦場にしている会社にとっては、少し明るい数字です。

ただし、ここで見落としたくない点があります。

季節調整済年率換算値は724千戸で、前月比1.7%減です。 4か月連続の減少となっています。

前年同月比は、前年の数字が低かった場合に大きく見えやすい面があります。実際、令和7年4月の新設住宅着工は前年同月比26.6%減でした。今回の増加は、その反動を含んで読む必要があります。

経営判断としては、「住宅が全面的に戻った」と決めつけるより、「一部に戻りが出ているが、勢いはまだ確認中」と見るのが現実的です。

地域差が大きい。自社の営業エリアと重ねて見ることが重要です

今回の統計では、地域別の差もはっきり出ています。

新設住宅着工の総戸数は、主要圏域で次のようになりました。

  • 首都圏:前年同月比15.4%増
  • 中部圏:前年同月比40.4%増
  • 近畿圏:前年同月比4.8%増
  • その他地域:前年同月比2.8%増

中部圏の伸びが大きく、特に貸家は前年同月比81.4%増です。首都圏も持家、貸家、分譲住宅がいずれも増えています。

一方で、近畿圏では総戸数は増えているものの、分譲住宅は前年同月比17.3%減、マンションは40.8%減です。その他地域でも分譲住宅は9.6%減、マンションは55.9%減となっています。

ここから読み取れるのは、「全国平均」だけで受注環境を判断するとズレるということです。

同じ住宅でも、地域によって動いている分野が違います。首都圏では分譲住宅全体も増えていますが、近畿圏やその他地域では分譲住宅が弱い。中部圏では貸家が大きく伸びている。

地場の工務店、専門工事会社、設備会社にとっては、全国の数字よりも、自社が動ける商圏で、どの建て方・利用関係が伸びているかが重要です。

住宅投資予定額は15.6%増。金額面では上振れしています

参考資料では、新築に関する住宅投資予定額の推計も示されています。

令和8年4月の住宅投資予定額は、総計13,466億円、前年同月比15.6%増です。

内訳は次の通りです。

  • 持家:5,161億円、前年同月比19.0%増
  • 貸家:4,444億円、前年同月比28.8%増
  • 給与住宅:96億円、前年同月比73.3%減
  • 分譲住宅:3,765億円、前年同月比7.4%増
  • 分譲住宅のうち、分譲マンション:1,902億円、前年同月比4.8%減
  • 分譲戸建て:1,845億円、前年同月比24.3%増

戸数だけでなく、投資予定額でも持家・貸家・分譲戸建てが伸びています。

ただし、これはあくまで建築工事届などをもとにした予定額の推計です。実際の請負金額、追加変更、資材価格、労務費の影響とは一致しない場合があります。

それでも、実務上は参考になります。

受注単価が上がっているように見えても、利益が増えているとは限りません。 材料費、外注費、運搬費、現場管理コストが上がっていれば、売上増でも粗利は残りにくくなります。

住宅関連の仕事が増えそうな会社ほど、今月の数字を「営業チャンス」として見るだけでなく、見積条件と原価管理を締め直す材料として使いたいところです。

非住宅は弱い。倉庫は増加、事務所・店舗・工場は減少です

住宅と対照的に、民間非居住建築物は弱い数字です。

4月の全建築物の着工床面積は803万㎡で、前年同月比5.1%減でした。3か月連続の減少です。

民間建築主の非居住用は266万㎡で、前年同月比26.5%減となりました。

主な使途別では、次の通りです。

  • 事務所:32万㎡、前年同月比16.4%減
  • 店舗:31万㎡、前年同月比22.5%減
  • 工場:37万㎡、前年同月比42.6%減
  • 倉庫:79万㎡、前年同月比49.8%増

ここはかなり実務的に効いてきます。

鉄骨、電気、空調、内装、外装、土間、舗装、外構など、非住宅比率が高い会社にとっては、「非住宅全体は減少。ただし倉庫は増加」という読み方になります。

事務所、店舗、工場の新築・増改築を主な受注源にしている会社は、案件化のスピードが鈍る可能性を見ておく必要があります。一方で、倉庫関連の仕事に接点がある会社は、物流・保管機能まわりの案件を丁寧に追う価値があります。

経営者が見るべきポイントは「平均」ではなく「自社の勝ち筋」です

今回の統計から、中小建設業が確認したいポイントは3つです。

1つ目は、住宅関連の戻りを、どの工種で取り込めるかです。

持家、貸家、分譲一戸建ては前年同月比で増えています。住宅基礎、木工事、屋根、外壁、設備、内装、外構などの会社は、元請・取引先の受注見通しを確認しておきたいところです。

2つ目は、非住宅の中で強い用途と弱い用途を分けることです。

非住宅全体は減少しています。事務所、店舗、工場は減っています。一方で倉庫は増えています。営業先、見積対応、協力会社の確保を同じ感覚で進めると、手応えに差が出ます。

3つ目は、人員配置を固定しすぎないことです。

住宅が増えているからといって、すぐに人を大きく増やす判断は慎重でよいと思います。季節調整済年率換算値は4か月連続で減っています。まずは、既存人員と協力会社の稼働を見ながら、繁忙がどの程度続くかを確認する段階です。

数字の見方としては、「受注量」「粗利率」「外注単価」「職人の空き状況」をセットで見ることが大切です。

着工が増えても、利益が残らなければ会社は強くなりません。逆に、全体統計が弱くても、自社の得意領域に需要が残っていれば、十分に戦えます。

今月の数字を、自社の受注会議に落とし込むなら

今回の統計は、景気の大きな流れを見る資料です。ただ、使い方を間違えなければ、月次の受注会議にも使えます。

たとえば、次のように確認できます。

  • 自社の売上構成は、住宅・非住宅のどちらに寄っているか
  • 住宅の中でも、持家・貸家・分譲戸建て・マンションのどこに近いか
  • 非住宅では、倉庫・工場・店舗・事務所のどこに強いか
  • 自社の営業エリアは、今回伸びている地域に近いか
  • 受注残は増えているのに、粗利率が落ちていないか
  • 協力会社の単価上昇を、見積に反映できているか

統計は、未来を当てるためだけのものではありません。自社の現場感覚が、世の中の流れと合っているかを確認する道具です。

現場では、すでに肌感覚があるはずです。「問い合わせはあるが決まりにくい」「見積は増えたが利益が薄い」「人は足りないが先の山が読みにくい」。その感覚を、今回のような統計と照らすことで、次の一手が少し見えやすくなります。

自社の受注環境を整理するきっかけに

今回の建築着工統計は、住宅に明るさがある一方で、非住宅には用途ごとの差が大きく出た内容でした。

こういう局面では、売上を追うだけでなく、どの案件を取りに行くか、どの原価を見直すか、どの協力会社体制を厚くするかを整理することが大切です。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。建設企業の持続的成長を支援し、ものづくりに集中できる建設業界へ近づけるための伴走をしています。

「うちの場合、この統計をどう見ればよいか」「受注はあるのに利益が残らない」「住宅・非住宅のどちらに力を入れるべきか」といった段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、まずは整理の壁打ちとしてご相談ください。

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