国土交通省は、ETC2.0プローブデータのオープン化に向けた試行として、令和8年度の調査協力者を公募すると発表しました。
公募の概要は次のとおりです。
- 公募名:ETC2.0プローブデータのオープン化に向けた基礎調査 調査協力者の公募
- 公募対象:地方公共団体、または地方公共団体を代表者とする共同体
- 採択予定数:20団体程度
- 募集期間:令和8年6月1日(月)から令和8年7月31日(金)12時まで
- データ貸与:ETC2.0プローブデータを無償貸与
- 分析費用:調査協力者が自らの費用で集計・分析、成果作成を実施
- 外部委託:守秘義務等を課した上で、建設コンサルタント等への外部委託も可能
- 主な活用想定:渋滞箇所の把握、生活道路の交通安全対策、災害時の通行実績把握など
- 急挙動データ:ゾーン30プラス10地区の急挙動データを6月上旬までに一部公開予定
今回の公募は、建設会社が単独で応募する制度ではありません。中心になるのは地方公共団体です。
ただし、見逃したくない点があります。地方公共団体がデータを使って、道路の危険箇所や渋滞箇所を把握し、対策を検討する流れが強まっているということです。
これは、地域の道路工事、交通安全施設、生活道路対策、渋滞対策、観光地周辺の交通整理、防災時の通行確保などに関わる会社にとって、じわじわ効いてくる変化です。
今回のポイントは「道路対策がデータ起点になっていく」ことです
ETC2.0プローブデータとは、ETC2.0車載器を搭載した車両から取得される走行履歴や挙動履歴などを、個別車両が特定できないよう処理したデータです。
国土交通省はこれまでも、道路管理者としてこのデータを渋滞対策、交通安全対策、災害時の通行実績把握などに活用してきました。
今回の試行では、地方公共団体等が実際にETC2.0プローブデータを使い、利活用する際の実務的な課題や改善事項を把握することが目的とされています。
ここで大事なのは、単なる研究では終わらない可能性があることです。
自治体が、
「どこで速度が落ちているのか」
「どの交差点で急ブレーキが多いのか」
「観光地の車両はどの道を通っているのか」
「災害時にどの道路が使われていたのか」
こうしたことをデータで見られるようになると、道路施策の立て方が変わります。
経験や要望だけでなく、走行データを根拠にした道路対策が増えていく。中小建設業としては、ここを早めに見ておきたいところです。
公募対象は自治体等。ただし外部委託の余地があります
今回の調査協力者の参加要件では、対象は次のように整理されています。
- 普通地方公共団体または特別地方公共団体
- 地方公共団体を代表者とする共同体
共同体の構成員としては、観光地域づくり法人、大学等の研究機関等が想定されています。
また、公募要領では、ETC2.0プローブデータの集計・分析や成果作成について、調査協力者が自ら実施するほか、守秘義務等を課した上で建設コンサルタント等へ外部委託することも可能とされています。
ここは建設業界に関係します。
特に、道路系の調査、交通安全対策、道路維持、土木設計、地域交通、観光地周辺整備などに関わる会社は、自治体側の動きを見ておく価値があります。
すぐに工事発注に直結するとは限りません。
しかし、自治体が分析を始めれば、その先には、
- 生活道路の安全対策
- 交差点改良
- 路面標示やカラー舗装
- 防護柵、区画線、標識などの交通安全施設
- 渋滞対策の検討
- 観光地周辺の交通動線改善
- 災害時の道路啓開・通行確保の検討
といった実務につながる可能性があります。
データ分析の結果が、将来の小規模・中規模の道路関連工事や調査業務の根拠になる。そう考えると、地域密着の建設会社にとっても無関係ではありません。
令和8年度公募で押さえるべき条件とスケジュール
公募要領では、調査協力者数は20団体程度とされています。
スケジュールは次の想定です。
- 令和8年6月〜7月:調査協力者の公募・選定
- 令和8年8月〜9月:採択・協定締結・貸与データ調整
- 令和8年9月〜:ETC2.0プローブデータの貸与、利活用開始
- 令和8年12月〜:調査協力者へのヒアリング調査
- 令和9年2月:調査結果のとりまとめ
貸与されるデータは、対象地域については調査協力者の利活用目的に応じた地域、対象期間については令和2年1月分から令和8年3月分までのデータを抽出して貸与することが想定されています。
また、令和8年度分のデータ貸与を希望する場合や、大量のデータ貸与を希望する場合は、採択後に個別相談・調整の上で検討されます。
令和7年度の公募と異なる点として、これまでにプローブデータの利活用実績がない地方公共団体からの応募も可能とされています。
一方で、申請者が多数の場合は、プローブデータの利活用実績があることや、ETC2.0プローブデータを経年的な道路交通状況の把握に継続活用する計画があることが、優位に評価されるとされています。
自治体側としては、初めてでも応募可能です。
周辺企業としては、自治体が「やりたいけれど、分析体制が足りない」と感じる場面が出てくるかもしれません。
そのときに、地域の道路事情を分かっている会社が、調査・分析・対策検討のパートナーとして関われる余地があります。
急挙動データの一部公開は、交通安全対策に直結しやすい動きです
今回の発表では、ETC2.0プローブデータの活用ニーズの一つとして、危険箇所の抽出など交通安全対策への活用が挙げられています。
そのため、国土交通省は、ゾーン30プラス10地区の急挙動データと、その活用方法を示した解説書を、道路データプラットフォームで6月上旬までに公開予定としています。
対象データは、令和6年4月から令和7年3月までの1年間のデータです。
急挙動データは、急減速などの挙動を把握するためのデータです。
発表資料では、急挙動データと事故データ等を重ね合わせて、危険箇所を抽出し、対策箇所を検討する方法が示されています。
中小建設業の現場感覚で言えば、これはかなり具体的です。
「ここは通学路で危ないと言われている」
「この交差点は見通しが悪い」
「朝夕だけ車が抜け道に入ってくる」
こうした地域の声に、データが重なってくるわけです。
住民要望、事故情報、急減速データが重なる場所は、今後の交通安全対策の候補になりやすいと見てよいでしょう。
地域建設会社は何を見ればよいか
今回の発表を受けて、中小建設会社がすぐに申請書を書く、という話ではありません。
見るべきポイントは別にあります。
まず、自社の営業エリアの自治体が、この試行に関心を持つかです。
道路部局、都市計画部局、交通安全担当、観光担当、防災担当などが関係しそうです。
次に、自社が関わる工種とデータ活用の接点です。
たとえば、区画線、舗装、道路附属物、交通安全施設、交差点改良、道路維持、橋梁・道路点検、災害対応などは、データ活用型の道路施策と相性があります。
そして、自治体がデータ分析を外部委託する場合に、どのような企業が必要とされるかです。
高度なデータ処理は専門会社や建設コンサルタントが担うことが多いかもしれません。
一方で、現地の道路事情、施工上の制約、住民対応、交通規制の現実、維持管理のしやすさは、地域の建設会社が強い部分です。
データを読む会社と、現場を知る会社が組む場面が増える。そんな流れも考えられます。
「データで決まる発注」に備える小さな準備
大きなDX投資をいきなり始める必要はありません。
まずは、社内で次のような情報を整理しておくとよいです。
- 過去に施工した交通安全対策工事の場所
- 事故やヒヤリハットが多いと感じる路線・交差点
- 通学路、生活道路、観光地周辺で相談を受けた箇所
- 雨天時・災害時に通行支障が起きやすい箇所
- 施工後に交通状況が改善したと感じる事例
- 自治体や元請から聞いた地域課題
これらは、データそのものではありません。
しかし、自治体がETC2.0プローブデータなどを使い始めたとき、現場側の仮説として役立ちます。
「このデータの山は、現場ではこういう理由ではないか」
「対策するなら、この施工方法が現実的ではないか」
「夜間施工は難しいが、別の規制方法なら可能ではないか」
こうした会話ができる会社は、地域の道路施策の中で存在感を出しやすくなります。
これからの道路分野では、データを扱えることだけでなく、データを現場の対策に翻訳できることが価値になります。
自社への影響を一緒に整理したいときは
今回のニュースは、すぐに全社対応が必要な制度改正ではありません。
ただ、道路・交通安全・自治体発注に関わる会社にとっては、今後の仕事の決まり方を考えるヒントになります。
「うちの地域では関係がありそうか」
「自治体の道路施策と、今の営業活動をどうつなげるか」
「データ活用型の発注に備えて、社内で何を整理すればよいか」
こうした段階から考えておくと、次の一手が見えやすくなります。
ネクスゲートでは、建設企業の持続的成長を支援する立場から、販路拡大、組織づくり、原価管理、デジタル活用まで横断して、経営課題の整理と実行を支援しています。
今回のような制度・データ活用の動きについても、「自社に関係があるのか」「何から見ればよいのか」という段階から一緒に整理できます。無理な営業はいたしませんので、必要なときに壁打ち相手として使ってください。































