国土交通省は、住宅・建築分野の海外展開を官民連携で進めるため、昨年11月に設立した「住宅・建築海外展開連携協議会(J-HAB)」について、会員企業・団体の募集を開始しました。
今回のポイントは次のとおりです。
- 募集対象:海外で住宅、集合住宅を含む住宅関連事業を現在展開している、または今後の展開を検討している本邦企業・団体
- 対象分野:設計、施工、設備、内装、部材の製造等を含む
- 住宅専業の企業に限らない
- 申込期限:令和8年6月30日(火)
- 申込方法:Microsoft Formsから必要事項・アンケートを入力
- 会費:入会にあたって会費は徴収しない
- 主な活動:アクションプラン策定、会員間マッチング、各国情報の提供、勉強会・ネットワーキング会・年次会合、海外視察など
- 第1回年次会合:令和8年8月下旬頃、東京都内で開催予定
中小建設業にとって、この発表は「すぐに海外進出する会社だけの話」と捉えるよりも、住宅・建築分野で海外市場との接点を持つための公的なネットワークが整備され始めていると見るのがよさそうです。
対象は大手だけではなく、設計・施工・設備・内装・部材まで広い
今回の募集でまず確認したいのは、対象範囲の広さです。
国土交通省は、対象企業・団体について、海外で住宅に関連する事業を現在展開している、または今後の展開を検討している本邦企業・団体としています。さらに、対象分野として、設計、施工、設備、内装、部材の製造等が明記されています。
これは、海外の住宅開発を行う大手デベロッパーやゼネコンだけを想定したものではありません。住宅専業にも限らないため、たとえば建築工事、専門工事、設備、内装、建材・部材など、住宅・建築に関わる中小企業も検討対象に入り得ます。
もちろん、入会したからといって直ちに海外案件が生まれるわけではありません。ただ、海外展開を考えるうえで最初に不足しがちな「情報」と「接点」を得る場としては、見ておく価値があります。
今回の本質は、海外展開を「単独営業」から「ネットワーク型」に近づけること
中小建設企業にとって、海外展開はハードルが高いテーマです。
「どの国に需要があるのか」 「現地の建築事情や商習慣はどうなのか」 「誰と組めばよいのか」 「自社の技術や施工管理の強みは海外で通用するのか」
こうした論点を、1社だけで調べ、判断し、動くのは簡単ではありません。特に中小企業の場合、国内の現場や人材確保だけでも経営資源は限られています。
今回のJ-HABの活動には、会員間のマッチング、各国の住宅・建築分野に関する情報提供、勉強会、ネットワーキング会、海外視察が含まれています。つまり、海外展開を孤独な挑戦にせず、官民の情報共有と企業間連携の中で進める仕組みをつくろうとしていると読めます。
中小建設業にとっては、いきなり現地法人を設立する、海外営業担当を置く、といった大きな投資の前に、まずは情報を取りに行く選択肢が増えることになります。
申込前に社内で整理しておきたい3つのこと
申込期限は令和8年6月30日(火)です。検討する場合は、フォーム入力の前に、社内で次の3点を整理しておくとよいでしょう。
1つ目は、自社が海外に持ち出せる強みは何かです。
施工品質、納まり、現場管理、設備施工、内装仕上げ、部材製造、設計力、工程管理など、海外で評価される可能性のある要素は会社によって異なります。大きな技術だけでなく、「日本式の丁寧な現場管理」や「一定品質で納める力」も、住宅・建築分野では重要な価値になり得ます。
2つ目は、海外展開をすぐに事業化したいのか、まずは情報収集段階なのかです。
J-HABの対象には、現在海外展開している企業だけでなく、今後の展開を検討している企業も含まれています。したがって、まだ具体案件がない段階でも、検討の入口として考える余地があります。ただし、社内では「今すぐ受注を狙う」のか、「2〜3年先を見て情報収集する」のか、温度感を合わせておくことが大切です。
3つ目は、誰が情報を受け取り、社内に戻すのかです。
勉強会やネットワーキングに参加しても、情報が担当者の手元で止まると経営判断につながりません。経営者、営業責任者、工事責任者、管理部門など、誰が窓口になり、社内でどう共有するかまで決めておくと、参加の意味が出やすくなります。
会費なしだからこそ、目的を決めて参加する
今回の発表では、入会にあたって会費は徴収しないとされています。これは中小企業にとって参加を検討しやすい条件です。
一方で、費用がかからないからこそ、「とりあえず入る」だけで終わらせないことが重要です。参加目的を曖昧にすると、情報は増えても判断が進まないからです。
たとえば、次のような目的設定が考えられます。
- 海外の住宅・建築市場に関する情報を集める
- 自社の技術や施工分野に近い企業との接点をつくる
- 将来的な協業先を探す
- 海外案件に関心のある社内人材を育てる
- 国内市場だけに依存しない中長期戦略の材料を集める
海外展開は、すべての会社が今すぐ取り組むべきテーマではありません。しかし、人口動態や国内市場の変化を考えると、「海外は関係ない」と決め切る前に、情報を持っておく価値は高まっています。
まずは「海外で売る」より「海外を知る」からでよい
今回のJ-HAB会員募集は、海外展開に本格的に踏み出す会社だけでなく、これから可能性を探る会社にも開かれています。
中小建設業にとって現実的なのは、最初から大きな投資をすることではありません。まずは、各国の住宅・建築分野の情報を得ること。会員企業との接点を持つこと。自社の強みがどの領域で活きるのかを見極めることです。
海外展開は、販路拡大だけでなく、自社の技術・人材・組織を見直すきっかけにもなります。
「うちは海外なんてまだ早い」と感じる会社ほど、まずは制度やネットワークの動きを知っておく。今回の募集は、その入口として使える可能性があります。
自社にとっての海外展開の意味を整理する
海外展開は、会社によって意味が大きく変わります。新しい販路を探す会社もあれば、国内の元請・取引先の海外案件に関わる可能性を見たい会社もあります。あるいは、将来の人材採用や技術承継を考えるうえで、事業の選択肢を広げておきたい会社もあるはずです。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、販路拡大、資金調達、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような海外展開の情報についても、「自社の場合は参加すべきか」「何を整理してから動くべきか」という段階から一緒に考えることができます。
無理な営業はいたしませんので、まずは壁打ちの場として使っていただければと思います。建設企業がものづくりに集中できるよう、経営の選択肢を一緒に整理します。































