国土交通省は、令和8年6月2日、「無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン」を改訂したと発表しました。

今回のポイントは、ドローンを1人の操縦者が複数機同時に運航する「多数機同時運航」について、同時運航する機体数の上限が廃止されたことです。

  • 発表日:令和8年6月2日
  • 対象:無人航空機の多数機同時運航
  • 改訂内容:機体数の上限廃止、実証を踏まえた要件の精緻化
  • 従来の考え方:第一版では、操縦者1人に対して5機までが対象
  • 改訂後の考え方:段階的な機体数増加と、リスク対策の有効性検証を前提に上限を廃止
  • 想定分野:物流、インフラ点検など
  • 建設業への関係:測量、インフラ点検、現場確認、維持管理業務の効率化に関わる可能性

今回の改訂は、「誰でもすぐに何十機も飛ばせる」という話ではありません。

むしろ大事なのは、ドローン活用が“実験”から“事業として採算を合わせる段階”に進みつつあるという点です。

中小建設業にとっても、これは少し先の話ではありません。測量、点検、維持管理、災害時確認。人が足りない中で、現場をどう見に行くか。危険な場所をどう確認するか。そこに関わるニュースです。

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何が変わったのか

今回の改訂では、主に2つのポイントが示されています。

1つ目は、同時運航する機体数の上限廃止です。

報道発表資料では、第一版は「1対5」、つまり操縦者1人に対して5機までが対象だったとされています。第二版では、同時運航する機体数の段階的な増加と、それに伴うリスクへの対策の有効性などの検証を前提に、機体数の上限を廃止しています。

2つ目は、令和7年度に行われた多数機同時運航の実証で得られた知見を反映したことです。

具体例として、資料では次のような要件の精緻化が挙げられています。

  • 操縦者や補助者等との組織的な連携に関する訓練
  • 不安全事象発生時の対応手順を含む運航手順の整備

また、リスク例として、機体を取り違えて操作すること通信の途絶・干渉なども示されています。

ここは建設業でも重要です。

ドローンは便利です。けれど、現場の上空やインフラ周辺で使う以上、「飛ばせるか」だけでは足りません。止まったとき、間違えたとき、通信が切れたときにどうするか。そこまで含めて、仕事として使えるかが問われます。

建設業では、測量・インフラ点検への影響が大きい

国土交通省の発表でも、無人航空機の活用分野として、測量やインフラ点検が明記されています。

中小建設業に近いところで考えると、影響が出やすいのは次の領域です。

  • 道路、橋梁、法面、河川施設などの点検補助
  • 施工前後の現場確認
  • 災害後の状況把握
  • 測量や出来形確認に関わる作業
  • 人が入りにくい場所、高所、危険箇所の確認

これまでもドローン活用は進んできました。

ただし、1人が1機を運航する形では、人件費や移動時間、準備時間を含めると、案件によっては採算が合いにくい場面もありました。

今回の改訂で示されている方向性は、遠隔操縦拠点の操縦者が、異なるエリアでより多くのドローンを同時運航することで、運航効率を高めるというものです。

つまり、将来的には点検や確認業務のコスト構造が変わる可能性があります。

「ドローン点検は高い」から、「条件が合えば人が動くより安い」へ。

その転換が少しずつ進むかもしれません。

ただし、上限廃止は“安全管理が軽くなる”という意味ではない

ここは誤解しない方がよさそうです。

今回の改訂は、安全管理を緩める話ではありません

資料では、機体数の上限廃止について、段階的な増加や、リスク対策の有効性等に関する検証が前提とされています。

多数機を同時に動かすほど、管理は難しくなります。

たとえば、次のようなリスクが出ます。

  • どの機体を操作しているのか取り違える
  • 複数機の状態監視が追いつかない
  • 通信が途絶する
  • 電波干渉が起きる
  • 異常時の判断が遅れる
  • 操縦者、補助者、現地側の連携が乱れる

建設現場に置き換えると、重機や車両と同じです。

台数が増えれば、作業効率は上がります。けれど、合図、動線、退避、連絡、異常時対応が曖昧なままでは危ない。ドローンも同じです。

多数機同時運航は、技術の話であると同時に、組織運用の話です。

中小建設企業が見るべきポイント

今回のニュースを見て、中小建設企業がすぐに多数機同時運航を内製する必要はありません。

むしろ最初に見るべきは、自社の業務の中で、ドローン化すると効果が出やすい作業がどこかです。

たとえば、次のように整理できます。

  • 人が行くと時間がかかる場所はどこか
  • 高所や法面など、安全面で負担が大きい確認作業はどこか
  • 現場写真や進捗確認で、移動時間が重くなっている業務はどこか
  • 点検や調査の外注費が膨らんでいる領域はどこか
  • 若手や現場代理人の負担を減らせる作業はどこか

そのうえで、内製するのか、外注するのかを考える順番です。

いきなり機体を買うより、まず業務を棚卸しする方が失敗しにくいです。

特に中小企業では、機体、操縦者、保険、運航管理、データ処理、報告書作成までを一気に抱えると、かえって現場の負担が増えることがあります。

一方で、定期点検や広範囲の確認業務が多い会社では、今後、外注先のサービス単価や対応範囲が変わる可能性があります。

ドローン事業者に依頼するときの見極めポイントも変わっていきます。

単に「飛ばせます」ではなく、次のような確認が大切になります。

  • 多数機運航時の運航手順があるか
  • 通信途絶や異常時の対応手順があるか
  • 操縦者と補助者の訓練を行っているか
  • 機体を取り違えないための画面設計や管理方法があるか
  • 段階的に運航機数を増やして検証しているか
  • 点検結果や測量データを、自社の実務に使える形で納品できるか

これからは、ドローン外注も“安全管理と業務設計まで含めて選ぶ”時代になりそうです。

人手不足対策としても、少し先を見ておきたい

建設業では、人手不足が続いています。

現場に行ける人が限られる。経験者が足りない。移動時間が重い。危険箇所の確認に人を出すのが難しい。

こうした課題は、どの会社にもあります。

今回のガイドライン改訂は、そうした課題に対して、ドローンをより事業として使いやすくするための一歩と見ることができます。

もちろん、すべての現場がドローンで置き換わるわけではありません。

現場で見なければ分からないことはあります。人の経験で判断する場面も残ります。

ただ、現場に行く前に状況を把握する。危険な場所を先に確認する。広い範囲を短時間で見る。定期点検の一部を効率化する。

こうした使い方は、今後さらに現実的になっていきます。

人を減らすための技術ではなく、人が本当に見るべきところに集中するための技術として捉えると、中小建設業にも活用の余地があります。

まずは“自社で飛ばすか”ではなく“どの業務を変えるか”から

今回の改訂で、ドローンの多数機同時運航は一段進みました。

ただ、中小建設企業にとって大事なのは、「何機飛ばせるか」ではありません。

自社のどの業務が、ドローン活用で安全に、早く、安く、正確になるのかです。

測量なのか。点検なのか。現場確認なのか。災害対応なのか。写真管理なのか。

そこが見えれば、内製すべきか、外注すべきか、今は様子を見るべきかも判断しやすくなります。

今回のような制度・ガイドラインの変化は、すぐに全社で対応するものではないかもしれません。

けれど、次の設備投資、外注先選定、若手教育、安全管理の見直しに効いてくる情報です。

ドローンは、建設業の現場から少しずつ“特別なもの”ではなくなっています。

自社でどう活かせるかを整理するために

「うちの仕事でドローンを使うなら、どこから考えるべきか」

「内製と外注、どちらが合うのか」

「安全管理や運用ルールまで考えると、何を準備すればよいのか」

そう感じた会社は、まず業務の棚卸しから始めるのがよさそうです。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。ドローン活用も、単なる機材導入ではなく、ものづくりに集中できる建設業界へ近づくための業務整理として考えることが大切です。

「まだ具体的な計画まではない」「何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、自社への影響や活用可能性を整理したい方は、必要に応じてお問い合わせはこちらからご相談ください。