国土交通省は、令和8年6月2日、地籍調査を効率的・効果的に進めるための「3ヶ年加速化施策パッケージ」を策定しました。

主な内容は、次のとおりです。

  • 策定日:令和8年6月2日
  • 対象施策:地籍調査の「3ヶ年加速化施策パッケージ」
  • 背景:人件費上昇等による事業費増加、自治体のマンパワー・ノウハウ不足
  • 計画期間との関係:「第7次国土調査事業十箇年計画」令和2年度〜令和11年度の期末に向けた加速化
  • 加速化期間:令和9年度〜令和11年度の3ヶ年を念頭に、今後具体的な検討・調整を実施
  • 主な方向性:防災対策街区境界調査(仮称)の創設、MMSの実装開始、リモートセンシング活用、林務・地籍部局の連携、広域化・共同化、意欲的な地域への支援

これは、建設会社に直接「明日から何かを義務化する」という発表ではありません。

ただし、公共工事、防災、災害復旧、森林・農地整備、測量・調査業務に関わる会社にとっては、今後の自治体発注や事業準備の流れを読むうえで重要なニュースです。

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地籍調査は、公共工事と災害復旧の“地ならし”です

地籍調査とは、国土調査法に基づき、主に市区町村が実施主体となって、一筆ごとの土地の境界や面積などを測量・調査する事業です。

建設業の現場感覚で言えば、かなり地味に見える分野です。

しかし、土地の境界がはっきりしていないと、道路、河川、防災施設、造成、森林整備、災害復旧などで、用地や関係者調整に時間がかかります。

地籍調査は、工事そのものではなく、工事を早く進めるための前提整備です。

国土交通省も、今回の発表で、地籍調査が次の分野を迅速化・円滑化するために重要だとしています。

  • 災害後の迅速な復旧・復興
  • 社会資本整備
  • 森林施業
  • 防災対策

中小建設業にとっては、「測量の話だから関係ない」と切り離すより、自治体の防災・インフラ投資の前段階が動き出していると捉えるほうが実務的です。

なぜ今、加速化なのか。予算と人員の限界が見えている

今回の資料では、地籍調査を進める側の課題がかなり具体的に示されています。

  • 1億円あたりの実施面積は、直近10年で半分程度
  • 令和5年度から令和6年度では、1億円あたりの実施面積が13%減
  • 地籍調査担当職員数は、直近10年で25%減
  • 令和6年度の地籍調査担当職員数は1,462人

つまり、以前と同じやり方では、同じ予算でも進む面積が減っています。

自治体の担当者も減っています。

現場でいえば、「仕事は増えている。でも人は増えない。しかも単価も上がっている」という状態です。

これは建設業界にもよくある光景です。

だからこそ国は、単に「もっと頑張る」ではなく、調査手法そのものを変える方向に踏み出しています。

ここが重要です。

今後は、地籍調査でも、従来型の人海戦術だけではなく、MMS、リモートセンシング、UAV、準天頂衛星「みちびき」などの新技術活用がさらに前に出てきます。

都市部では「防災対策街区境界調査(仮称)」が検討されます

都市部では、土地が細かく分かれています。

権利意識も強く、土地所有者による筆界確認に時間がかかるケースがあります。

一方で、南海トラフ地震や首都直下地震などへの備えとして、都市部の事前防災は待ったなしです。

そこで今回のパッケージでは、都市部向けに次の方向性が示されました。

災害リスクエリアなどで、民民筆界点の確認を省略し、官民境界のみを先行して取りまとめる「防災対策街区境界調査(仮称)」を位置付ける方向です。

従来の一筆地調査では、一筆ごとに土地所有者の立会等のもとで筆界を確認します。

令和2年に創設された街区境界調査では、官民境界と、官民境界上の民民筆界点について先行して確認する仕組みが示されていました。

今回の方向性では、さらに迅速化を重視し、官民境界線のみを先行確認する手法が検討されます。

また、道路境界確定図など既存の官民境界成果を活用した場合、再度の立会を要しないこととする方向も示されています。

中小建設業としては、ここを見ておきたいところです。

都市部の防災・道路・復興準備に関わる事業では、境界確認の進め方が変わり、関連する調査・測量・設計・施工準備のスピード感が変わる可能性があります。

MMSやリモートセンシングは、測量会社だけの話ではありません

今回の資料では、MMSの実装開始も示されています。

MMSとは、車載写真レーザ測量による3次元点群データを用いた高精度測量技術です。

国土交通省は、令和2年度からMMSを活用した地籍調査手法の技術検証を進めてきました。

その結果、一定の地域・条件では精度確保を確認したとしています。

今後は、都市部におけるMMSを活用した街区境界調査の実装開始、自治体向けマニュアルの作成等が方向性として示されています。

農山村部では、リモートセンシング活用が進んでおり、令和8年度の地籍調査から一部地域で活用を原則化することも資料に記載されています。

ここで大切なのは、新技術は測量会社だけの商材ではなく、建設会社の現場管理、出来形管理、災害対応、設計協議、維持管理にもつながっていくという点です。

小規模な会社でも、すべてを自社保有する必要はありません。

ただ、次のような問いは持っておきたいところです。

  • 付き合いのある測量会社は、点群データやMMSに対応しているか
  • 自社は3次元データを受け取ったとき、現場で使える状態にできるか
  • 若手や現場代理人が、図面・写真・測量成果をデジタルで扱う機会を増やせているか
  • 災害復旧や防災工事で、発注者との協議資料をデータで整理できているか

いきなり大きな投資をする話ではありません。

まずは「データを扱える会社」になっておくことが、次の受注環境への準備になります。

農山村部では、森林整備と地籍調査の連携が進みます

農山村部では、森林施業のための筆界確定ニーズが高まっています。

資料では、主伐・再造林期を迎えた森林の集積・集約化のため、森林の筆界確定ニーズが高まっているとされています。

そこで、次の方向性が示されています。

  • 自治体の林務・地籍部局における一体的な実施体制の構築
  • リモートセンシング等の新技術のさらなる活用促進
  • 調査体制の広域化・共同化

これまで、森林境界明確化と地籍調査で、図面作成や所有者確認など類似した作業を二重で実施していた面がありました。

今後は、林務部局と地籍部局が準備・計画段階から連携し、地籍図作成まで一体的に進める方向です。

資料では、森林組合をハブとして広域的に地籍調査を受託する体制の事例も示されています。

山間部・農村部で土木、林道、治山、造成、森林関連工事に関わる会社は、森林組合、測量会社、自治体との連携余地を見ておく価値があります。

特に、単独で大きな業務を取りにいくというより、地域の実施体制の中でどの役割を担えるかが大切になります。

中小建設業が見るべきポイントは「発注の前段階」です

今回の発表は、補助金の公募開始や入札公告ではありません。

そのため、すぐに案件名が出てくるわけではありません。

ただし、国土交通省は、令和11年度末の十箇年計画期末に向けて、令和9年度〜令和11年度の3ヶ年で加速化するため、今後具体的な検討・調整を進めるとしています。

つまり、これから自治体側の予算、体制、委託方法、技術要件、広域連携の形が固まっていく段階です。

中小建設業が見ておきたいのは、次の4点です。

  1. 自社の営業エリアが災害リスクエリアや事前復興計画の対象になっているか
  2. 自治体が地籍調査、道路境界、森林境界、リモートセンシングにどの程度取り組んでいるか
  3. 測量会社、土地家屋調査士、森林組合、建設コンサルタントとの連携先があるか
  4. 点群データ、UAV、MMS、リモートセンシング成果を現場で扱う準備があるか

「うちは施工会社だから関係ない」と見送るには、少しもったいない流れです。

地籍調査が進む地域では、その後に防災、道路、森林、復旧・復興、まちづくり関連の事業が動きやすくなります。

地籍調査は、将来の工事発注の“手前”にあるサインとして見ることができます。

まずは地元自治体の動きを確認したいニュースです

今回の施策パッケージでは、意欲的に取り組む地域へのインセンティブや、効率的・効果的な手法に取り組む地域への支援も示されています。

資料には、津波リスクエリアを踏まえた重点整備地区の設定、事前復興事業と一体的に取り組む地籍調査、都道府県主導による新技術導入支援などの事例が挙げられています。

つまり、全国一律に同じスピードで進むというより、災害リスク、社会資本整備の重要性、地域の実施体制によって、先に動く地域が出てくると考えられます。

中小建設業としては、まず地元自治体の次の資料を確認しておくとよさそうです。

  • 地籍調査の実施状況
  • 防災計画・事前復興計画
  • 道路・河川・インフラ整備計画
  • 森林整備や林道整備の計画
  • 測量・調査業務の発注傾向

すぐに大きく動く必要はありません。

ただ、令和9年度以降の3ヶ年に向けて、「自社がどの地域課題に関われるか」を早めに整理しておくことは、営業面でも人材育成面でも意味があります。

自社への影響を整理するところから始めましょう

地籍調査の加速化は、測量・調査だけで完結する話ではありません。

その先には、防災、復旧・復興、道路、森林、農地、まちづくりがあります。

自社の営業エリアで何が動きそうか。

どの自治体と関係が深いか。

測量会社や森林組合、建設コンサルタントとどう連携できるか。

点群データやリモートセンシング成果を、現場や営業でどう活かせるか。

こうした整理は、日々の現場を回しながらだと後回しになりがちです。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。建設企業の持続的成長を支援し、ものづくりに集中できる建設業界へ近づけるための伴走を大切にしています。

「うちの場合は関係があるのか」「自治体発注や測量DXの流れをどう見ればよいか」「何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、必要なときに壁打ち先としてお使いください。

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