国土交通省は、令和7年度に実施した賃貸住宅管理業者および特定転貸事業者、いわゆるサブリース業者への全国立入検査結果を公表しました。
対象:全国168社の賃貸住宅管理業者・特定転貸事業者
是正指導:118社
是正状況:118社すべてで是正等を確認
主な指摘:契約書面、重要事項説明、帳簿、従業者証明書、定期報告など
今後の方針:立入検査等による指導監督を継続し、悪質な法違反には厳正に対処
今回の発表は、賃貸住宅管理業やサブリース事業を主業とする会社だけの話ではありません。地域の建設会社の中には、アパート建築、オーナー対応、管理受託、サブリース提案まで一体で行っている会社もあります。そうした会社にとっては、「建てる力」だけでなく「管理する体制」まで見られる時代になっているという意味を持ちます。
立入検査の結果から見えること
令和7年度の立入検査では、全国168社に対して検査が行われ、118社に是正指導が行われました。単純計算では、検査対象の相当数で何らかの不備が確認されたことになります。
国土交通省の詳細資料では、令和7年度末時点の賃貸住宅管理業者の登録数は10,197社とされています。登録制度のもとで事業者数が多い一方、現場の実務では、契約書面、説明書面、帳簿、定期報告といった基本部分で不備が起きやすいことがうかがえます。
特に注目したいのは、国土交通省が今後について、立入検査等を通じた指導監督の強化を明記している点です。サブリース事業については、国民生活センターなどへの相談が依然として多いことから、契約内容の適正化や説明義務の履行状況について監督の実効性を高めるとしています。
建設会社が賃貸住宅の建築だけでなく、その後の管理や一括借上げに関わっている場合、これは「不動産部門だけの話」では済みません。営業、契約、管理、経理、オーナー対応がつながっているからです。
指摘が多かったのは「書面」と「説明」の不備
今回の是正指導事項で件数が多かったものは、次のとおりです。
| 主な指導事項 | 件数 | |---|---:| | 管理受託契約の締結時の書面交付義務違反 | 62件 | | 管理受託契約の締結前の書面交付、重要事項説明義務違反 | 43件 | | 賃貸住宅管理業者の帳簿の備付け等義務違反 | 32件 | | 特定転貸事業者の書類の閲覧義務違反 | 23件 | | 従業者証明書の携帯等義務違反 | 22件 | | 委託者への定期報告義務違反 | 17件 |
ここで見えてくるのは、違反の中心が「契約前後の説明・書面・記録」に集中していることです。
たとえば、管理受託契約の締結時書面では、法定記載事項の記載不備が指摘されています。具体的には、委託者への報告に関する事項、入居者に対する管理業務の実施方法の周知に関する事項、登録年月日や登録番号などです。
重要事項説明でも、登録年月日・登録番号、管理業務の内容、実施方法の周知に関する事項などの記載不備、あるいは重要事項説明そのものの未実施が挙げられています。
つまり、問題は「悪意があるかどうか」だけではありません。日々の契約実務が属人的になり、最新版の書式・説明手順・記録方法が社内で統一されていないこと自体がリスクになるということです。
建設会社が特に注意したいポイント
賃貸住宅の建築を手がける会社の中には、オーナーから「完成後の管理もお願いできないか」「一括借上げまで含めて提案してほしい」と相談される会社があります。
この流れは、地域密着の建設会社にとって大きな強みです。建てて終わりではなく、長くオーナーと関係を持てるからです。一方で、管理やサブリースに入ると、求められる管理水準は建設請負とは異なります。
確認したいのは、少なくとも次の点です。
- 管理受託契約の重要事項説明書・契約締結時書面が最新の法令・記載例に沿っているか
- 登録年月日、登録番号、管理業務の内容、入居者への周知方法などの記載漏れがないか
- 契約ごとの帳簿が作成・整理され、契約年月日などが抜けていないか
- オーナーへの定期報告を、苦情や修繕がない場合も含めて運用できているか
- 従業者証明書の作成・携帯が徹底されているか
- サブリース契約の広告・説明・契約書面について、解除や更新など重要事項の記載が不足していないか
特に定期報告については、今回の資料で「報告事項、たとえば苦情・修繕等の無いオーナーに対する報告省略」が指摘例として挙げられています。これは実務上、起こりやすいところです。
「何も問題がなかったので報告しなかった」という感覚は、現場では自然に見えるかもしれません。しかし制度上は、問題がないことも含めて、決められた形で報告する体制が必要になります。
営業資料より先に、社内の運用台帳を整える
サブリースや管理受託は、オーナーにとって大きな意思決定です。賃料、空室、修繕、契約解除、更新、入居者対応など、長期の収支と生活に関わります。
そのため、会社側には「説明したつもり」ではなく、何を、いつ、誰が、どの書面で説明し、どの記録を残したかが求められます。
中小建設会社では、営業担当者がオーナー対応を担い、そのまま管理部門との橋渡しも行うことがあります。この場合、担当者の経験値に頼るほど、会社としての証跡が残りにくくなります。
今回の検査結果を自社に引き寄せるなら、まず大がかりな仕組みを入れる前に、次のような棚卸しが現実的です。
- 現在使っている重要事項説明書、契約書、定期報告書のひな形を集める
- 国土交通省が示す記載例や標準契約書と見比べる
- 契約前、契約時、契約後の業務フローを1枚に書き出す
- 誰が説明し、誰が確認し、どこに保存するかを決める
- 過去契約分で記載漏れや報告漏れがないかを確認する
大切なのは、法務チェックを一度して終わりにしないことです。現場で使う書式、営業担当者の説明、管理部門の報告、経理上の入出金管理までつながっていなければ、実務上の不備は残ります。
「建てる会社」から「任され続ける会社」へ
今回の発表は、行政処分そのものの公表ではなく、立入検査と是正指導の結果です。ただし、国土交通省は悪質な法違反に対して、法に基づき厳正かつ適正に対処するとしています。
ここから読み取れるのは、賃貸住宅管理・サブリース分野では、今後も「説明」「書面」「記録」の水準が問われ続けるということです。
中小建設会社にとって、管理やサブリースは、単なる付帯サービスではありません。うまく運用できれば、オーナーとの関係を長期化し、地域での信頼を積み上げる事業になります。反対に、書面や説明が弱いままだと、せっかくの信頼を損なう原因にもなります。
だからこそ、今回のニュースは前向きに捉えたいところです。自社の管理事業を、営業担当者個人の頑張りから、会社として再現できる仕組みに変えるきっかけになります。
自社の管理・サブリース体制を一度棚卸しする
賃貸住宅管理やサブリースに関わっている会社では、「うちは大丈夫だと思うが、どこから確認すればよいかわからない」という状態も少なくありません。書式、説明フロー、帳簿、定期報告、担当者教育、デジタル管理まで、論点が横に広がるためです。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。賃貸管理やサブリースを含む周辺事業についても、まずは自社の業務フローとリスク箇所を見える化することが出発点になります。
「うちの場合は何を確認すべきか」「管理部門と営業部門の役割分担を整理したい」といった段階でも構いません。無理な営業はいたしませんので、今回の検査結果を踏まえて自社の体制を整理したい方は、次の窓口をご活用ください。



























