前提

首都圏の内装関連会社で、積算・見積・発注の言葉がつながらず確認が人に寄っていた状態

首都圏で内装工事向けの積算・見積まわりに関わる、数十名規模の会社で出ていた悩みです。

積算ソフトでは数量を拾えます。材料算出も使われています。見積明細を取り込む仕組みも検証されています。

ただ、そこで止まっていたのが「言葉」でした。

同じ材料でも、積算ソフト上の名称、見積明細の工事項目、メーカー品番、現場での通称、発注書に書かれる名前が少しずつ違います。

担当者の言葉を借りると、「材料名がみんなバラバラなんです」「発注書が来ると、これはうちの製品でいうとこれだよね、という付け合わせで苦労する」という状態でした。

積算・見積・発注をつなげるには、システムより先に、材料名・工事項目・メーカー品番・通称をつなぐマスターが必要になります。

これは内装工事に限りません。

建材、電材、設備材、金物、仕上げ材など、専門工事会社ではよく起きます。現場では通じる名前でも、見積、発注、仕入先、メーカーの画面では別の名前になっている。結果として、照合できる人が限られていきます。

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課題

名称の揺れが残ったままでは、AIもシステム連携も最後は人の確認待ちになる

見積明細を取り込んで、マスターに自動で割り当てる検証では、ある程度までは候補が出ました。

画面上では、左に元の明細、右に割り当て候補のマスターが出る。自信のあるものは自動判定。自信のないものは候補を並べて、人が選ぶ。

試してみると、たとえば一部は自動で判定できます。一方で、倍以上の項目は「自信がない」と出ます。

ここで出た率直な反応が印象的でした。

「判定が一つでも間違っていたら、見積もりにならない」

その通りです。

OCRと似ています。8割読めても、残り2割を毎回直すなら「自分でやったほうが早い」となります。見積や発注では、少しの誤変換が金額、数量、納期、手配ミスにつながります。

名称の揺れを放置したままAIや連携ツールを入れると、便利になる前に確認作業が増えることがあります。

特に怖いのは、似た材料の取り違えです。

標準品、同等品、メーカー違い、施工部位違い、現場ごとの呼び名。こうした差は、経験者なら文脈で分かります。ただ、データ上は似た文字列に見えます。

「候補は出せる。でも、これで合っているかを判断できる人が必要」という話になりがちです。

本当の課題は、システムの精度だけではなく、経験者の頭の中にある対応表が会社の資産になっていないことです。

背景

材料名は商品名だけでなく、工事仕様・予算書・発注書の流れの中で変わる

名称がバラバラになる理由は、単純な入力ミスではありません。

建設業の業務では、同じ対象物が工程ごとに違う言葉で表現されます。

積算では工事仕様として扱います。そこから必要数量を出し、材料算出につながります。その材料は予算書に入り、発注書になります。さらに仕入先やメーカーごとの品番に置き換わります。

たとえば、ある工事仕様に対して「この材料が必要」という紐づきがあります。ただし、材料名そのものが通称で登録されていることもあります。メーカーの正式品番ではなく、現場や業界で通じる呼び名になっているケースです。

さらに、同等品が複数メーカーにあります。

ある資材メーカーの製品名がすべてではありません。他メーカーにも似た用途の商品があります。仕入先によって呼び方も変わります。現場担当者が発注書に書く言葉も、人によって違います。

担当者はこう話していました。

「個人レベルで使う言葉がみんなバラバラなんです。だから、業務側は付け合わせに苦労する」

この付け合わせは、新人にはかなり難しい仕事です。

材料を知っている。現場を知っている。メーカーごとの呼び方も知っている。過去の発注の癖も知っている。そこまで分かって、ようやく判断できます。

名称の不統一は、単なる表記ゆれではなく、業務経験そのものが属人化しているサインです。

そして、最初から全社・全品目を100%統一しようとすると、たいてい止まります。

現場の感覚としても、「100は無理」「30〜40広まったら上出来」という見方が出ていました。

この感覚はかなり現実的です。

材料マスターづくりは、完璧な辞書を一度で作る仕事ではなく、よく出る言葉から育てる仕事です。

解決

頻出項目から辞書を作り、例外を残しながらマスターを育てる進め方

進め方は、最初から統一名称を決め切るより、実際に出てくる明細と発注書を材料にして辞書を育てるほうが現実的です。

まず見るべきは、頻出項目です。

過去の見積明細、予算書、発注書、仕入先への注文データを並べます。その中で、出現回数が多い材料や工事項目から着手します。

最初の対象は、全体の2〜3割でも十分です。

頻出する材料・工事項目から整えるだけでも、確認作業の大半を減らせる可能性があります。

マスターには、少なくとも次の情報を持たせたいところです。

  • 標準名称
  • 現場で使われる通称
  • 見積明細で出てくる名称
  • 発注書で出てくる名称
  • メーカー名・品番
  • 同等品・代替品
  • 紐づく工事仕様
  • 判断に注意が必要な条件
  • 過去に間違えた例

ここで大事なのは、例外を消さないことです。

「この名前で来たら必ずこれ」と決められるものもあります。一方で、施工部位や条件によって変わるものもあります。同じ施工でも、部位や条件で材料の取り方が変わることがあります。

その場合は、無理に一つへ統一しません。

「候補A、候補Bを出す」「この条件では人が確認する」「この名称は要注意」と残します。

マスターは、自動化する項目と、人が確認すべき項目を分けるための土台でもあります。

AIやシステムを使う場合も同じです。

自信のあるものは自動で割り当てる。自信のないものは候補を出す。人が選んだ結果を学習データとして蓄積する。この流れを作ると、使うほど辞書が強くなります。

ポイントは、正解データの置き場所です。

その場限りで直して終わると、次も同じ確認が発生します。直した結果を「次からの判断材料」として残す必要があります。

確認作業を減らすには、毎回の修正をマスターに戻す仕組みが欠かせません。

進める順番は、次のように考えると無理がありません。

  1. 過去の見積明細・発注書を集める
  2. 頻出する材料名・工事項目を洗い出す
  3. 標準名称と通称、メーカー品番を並べる
  4. 自動で判断できるものと、人が見るものを分ける
  5. 判断に迷った例を辞書に戻す
  6. 対象範囲を少しずつ広げる

ここまでできると、積算、見積、発注のデータが少しずつつながります。

将来的に、積算ソフトのデータベースをオンライン化する。見積作成と連携する。発注書作成につなげる。AIで候補を出す。そうした取り組みも、マスターがあるほど進めやすくなります。

システム連携の前提は、きれいな画面ではなく、会社として育てたデータベースです。

まとめ

材料名や工事項目の呼び方がバラバラな状態は、どの会社にも起こり得ます。

見積明細ではこの名前。積算ソフトでは別の名前。発注書では通称。仕入先やメーカーでは品番。現場ではさらに違う呼び名。

それでも、経験者は何とか合わせられます。

ただ、その状態が続くと、確認ができる人に仕事が寄ります。新人が育ちにくくなります。AIやシステムを入れても、最後は「これ合ってる?」が戻ってきます。

材料マスターは、業務をきれいに見せるための台帳ではなく、経験者の判断を会社に残すための仕組みです。

最初から100%を狙わなくて大丈夫です。

頻出項目から始める。通称を残す。例外を残す。人が判断する項目を明確にする。修正結果を辞書に戻す。

その積み重ねが、積算・見積・発注をつなぐ土台になります。

まずは、直近3か月から半年分の見積明細と発注書を見て、「同じものを違う名前で呼んでいる項目」を20個拾うところからで十分です。

そこから、会社ごとの材料辞書は育ち始めます。

自社の材料マスターをどこから整えるか考えたいときは

「うちも発注名が人によって違う」「見積と発注の照合をベテランが全部見ている」「AIやシステム連携の前に、何を整理すればいいか分からない」という段階でも、整理できることはあります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。

材料マスターや業務データの整備も、いきなり大きなシステム導入から考える必要はありません。まずは、積算・見積・発注のどこで言葉がズレているかを一緒に見える化するところから始められます。

無理な営業はいたしません。うちの場合は何から整理すべきか、という段階でも大丈夫です。

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