国土交通省は、中堅・中小建設関連企業を対象に、専門家が海外進出の戦略立案から事業計画への落とし込みまで伴走する「海外事業計画策定支援」の参加企業募集を始めました。参加費は無料で、定員は3社程度です。エントリーシートの提出期限は令和8年7月31日(金)です。
支援事業名 | 中堅・中小建設企業向け「海外事業計画策定支援」 |
対象者 | 中堅・中小建設関連企業 |
中堅企業の定義 | 中小企業者を除く従業員2,000人以下の企業 |
中小企業の定義 | 資本金3億円以下または従業員数300人以下の企業 |
対象外 | みなし大企業 |
定員 | 3社程度 |
実施方法 | オンライン |
参加費 | 無料 |
エントリーシート提出期限 | 令和8年7月31日(金) |
支援期間の目安 | 令和8年8月下旬のプレ面談後、10月〜翌年2月に専門家面談を各社3回程度 |
申込先 | 事務局:株式会社オリエンタルコンサルタンツ |
今回の支援で何ができるのか
今回の支援は、単なる海外進出セミナーではありません。国土交通省の発表では、各社の海外進出の戦略立案から、事業計画への落とし込みまでを専門家が伴走支援するとされています。
パンフレットでは、支援の流れとして、エントリーシート提出、プレ面談、ワークシート作成、専門家との面談、ワークシートの完成が示されています。面談は全3回程度で、作成したワークシートを専門家が確認し、海外事業計画をブラッシュアップしていく形です。
アドバイス例としては、次の内容が挙げられています。
- 現地マーケットのリサーチ方法
- リサーチを活かした事業計画の作成
- 現地進出時のキャッシュフロー管理
- 海外展開におけるリスクとその管理
海外進出というと、大企業の話に見えがちです。しかし今回の対象は、明確に中堅・中小建設関連企業です。海外に行くかどうかを決める前段階で、自社にとって現実的な選択肢なのかを整理する機会として捉えるのがよいでしょう。
優先される企業の条件を確認しておきたい
募集定員は3社程度です。応募すれば必ず参加できるものではありません。
国土交通省は選考基準として、海外未進出の企業、小規模企業、今回の支援に初参加の企業を優先するとしています。
つまり、すでに海外展開の実績が大きい企業よりも、これから検討を始める企業や、社内に十分な検討体制を持ちにくい企業に門戸を開く意図が読み取れます。
特に中小建設企業では、海外進出以前に、国内の人材確保、原価高騰、受注単価、協力会社体制などの課題が先にあります。そのため「海外はまだ早い」と考える会社も多いはずです。
ただし、今回の支援で作成する海外事業計画書は、国交省の説明では、海外事業方針の明確化、社内の意思統一、社外への説明等に活用できるとされています。これは、実際にすぐ海外へ出る企業だけでなく、将来の選択肢を冷静に評価したい企業にも意味があります。
中小建設企業は「海外進出」ではなく「事業の棚卸し」として見る
今回のニュースを、単に「海外に出たい会社向けの募集」とだけ見ると、該当企業は限られます。
しかし経営の観点では、もう少し広く見る価値があります。海外事業計画をつくる過程では、自社の強み、施工管理体制、人材、資金繰り、リスク管理、現地パートナーの必要性などを整理することになります。
これは言い換えると、自社の事業構造を外部の目線で点検する作業です。
国内市場で堅実に事業を続ける場合でも、次のような問いは重要になります。
- 自社の技術や管理力は、どの市場で評価されるのか
- 現場を任せられる人材はどこまで育っているのか
- 新しい地域や顧客に展開する場合、どの程度の資金余力が必要か
- 想定外のリスクを、どこまで事前に洗い出せているか
- 経営者の構想を、幹部や社員に説明できる計画に落とせているか
海外進出は、国内での新規エリア開拓や新規顧客開拓よりも不確実性が高いテーマです。だからこそ、計画づくりのプロセスそのものが、経営判断の訓練になるとも言えます。
応募を検討すべき会社
今回の支援は、次のような会社に合いやすいと考えられます。
- 海外進出を一度は検討したいが、何から調べればよいかわからない会社
- 海外に関心のある取引先や金融機関に対して、自社の考えを整理して説明したい会社
- 既に海外事業に関わりがあり、今後の運営方針を見直したい会社
- JICA等のスキームへの応募時に活用できる資料づくりを進めたい会社
- 社長の構想を、社内で共有できる事業計画に落としたい会社
一方で、定員は3社程度と少ないため、応募する場合は早めに社内で検討し、エントリーシートの準備に入る必要があります。
スケジュールは、令和8年7月31日までにエントリーシート提出、8月上旬に参加企業決定、8月下旬に事前説明とプレ面談、9月上旬に各社で海外事業計画のドラフト作成、10月から翌年2月にかけて専門家とのオンライン面談という流れです。
応募前に、自社が海外で何を実現したいのか、どの国・地域に関心があるのか、どの事業を展開候補にするのかを粗く整理しておくと、支援を受けた際の効果が高まりやすいでしょう。
まず見るべき実務ポイント
経営者や管理部門が確認すべきポイントは、次の5つです。
1つ目は、自社が対象要件に当てはまるかです。中小企業は資本金3億円以下または従業員数300人以下、中堅企業は中小企業者を除く従業員2,000人以下とされています。いずれも、みなし大企業は除かれます。
2つ目は、社内で海外展開を検討する目的があるかです。売上拡大なのか、人材・技術の活用なのか、既存顧客への対応なのか。目的が曖昧なままでは、計画書も曖昧になります。
3つ目は、面談期間中にドラフト作成や修正に対応できる担当者を置けるかです。専門家が伴走してくれるとはいえ、計画をつくる主体は自社です。
4つ目は、資金繰りやキャッシュフローの前提を考える準備があるかです。パンフレットでも、現地進出時のキャッシュフロー管理がアドバイス例に含まれています。海外事業は、売上見込みだけでなく、先行費用と回収期間の見極めが重要です。
5つ目は、リスクを正面から検討する姿勢があるかです。海外展開には、制度、契約、為替、人材、現地パートナー、品質、安全、回収など、多面的なリスクがあります。今回の支援は、そのリスクを避けるためではなく、見える化して判断するための機会と捉えるべきです。
事業計画づくりを、自社の次の一手につなげるために
海外展開を検討するかどうかにかかわらず、これからの中小建設企業には、経営者の頭の中にある構想を、社内外に説明できる形にする力がますます重要になります。
今回のような支援制度は、対象企業数が限られます。一方で、制度を使う・使わないに関係なく、自社の強み、伸ばしたい事業、必要な人材、資金、リスクを一枚の計画に整理することは、国内事業の成長にも直結します。
「海外は少し気になるが、うちの場合は現実的なのか」「まず何を整理すべきか分からない」という段階でも、考えを言語化することには価値があります。
ネクスゲートでは、建設企業の持続的成長を支援する立場から、販路拡大、資金調達、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで、経営課題を横断して整理し、実行まで伴走しています。今回のような海外展開や事業計画づくりについても、自社への影響や検討手順を一緒に整理できます。無理な営業はいたしませんので、必要なときの壁打ち先としてご活用ください。
































