国土交通省は、上下水道技術の海外展開を進める「上下水道技術海外実証事業(WOW TO JAPANプロジェクト)」について、本年度の実施事業を「上下水道管路のCIPP管更生に係る実証事業」に決定しました。実証地はマレーシアのクアラルンプールほかで、道路を大きく掘り返さずに既設管の内側へ新しい管を形成する非開削の管更生技術を検証します。
事業名 | 上下水道技術海外実証事業(WOW TO JAPANプロジェクト) |
採択された実証事業 | 上下水道管路のCIPP管更生に係る実証事業 |
実証技術 | CIPP(現場硬化管)による管更生技術 |
実施都市 | マレーシア国クアラルンプールほか |
実施者 | マレーシア国における上下水道管路のCIPP管更生に係る実証事業共同事業体 |
構成企業 | 株式会社日水コン、有限会社横島 |
実施内容 | 大規模な開削工事が困難な都市部で、既設の圧力管や大口径管内に新しい管を形成する技術の適用性・有用性を検証 |
対象管の例 | 約1,000mmの管を予定 |
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今回のポイントは「海外実証」だけではありません
今回の発表は、表面的には「日本の上下水道技術をマレーシアで実証する」という海外展開のニュースです。
ただし、中小建設業の経営目線では、もう一段深く見る必要があります。重要なのは、国が海外展開の対象として、非開削の管更生技術を選んでいるという点です。
今回の実証では、上下水道管路の老朽化が進む一方で、大規模な開削工事が難しいマレーシア都市部において、CIPPを使った管更生技術の適用性や有用性を検証するとされています。
これは国内の状況とも重なります。都市部では、交通規制、近隣対応、埋設物、工期、騒音、コストなどの制約が大きくなり、従来型の「大きく掘って入れ替える」工事だけでは対応しにくい場面が増えています。
つまり今回のニュースは、上下水道の更新需要に対して、非開削・省施工・短工期・周辺影響の低減といった価値が一段と重視されていることを示しています。
CIPP管更生とは何か、経営者はどう見ればよいか
CIPPは、Cured-In-Place Pipeの略で、日本語では現場硬化管と説明されています。今回の発表では、既設管の内側にライニング材を挿入・硬化させ、既設管を更生する技術とされています。
国土交通省の資料では、実証技術のイメージとして、次の点が示されています。
- 既設管の内側にライニング材を挿入・硬化させて、既設管を更生する
- 大規模な開削工事を実施することなく、管路の更生が可能になる
- その結果、事業費の削減につながる可能性がある
中小建設業にとっての見方は明確です。これからのインフラメンテナンスでは、「施工できる」だけでなく、「社会的制約の中で施工できる」ことが競争力になります。
道路を掘れない。交通を止めにくい。住民説明が難しい。発注者側の予算も限られる。こうした条件の中で、どのような工法を提案できるかが、受注機会や元請・協力会社としての評価に影響していきます。
特に管路、道路、上下水道、土木メンテナンスに関わる会社にとっては、非開削技術そのものを自社で保有するかどうかだけでなく、どの工法にどのような特徴があり、どの会社と組めば対応できるのかを把握しておくことが重要になります。
令和8年度から「水道技術」も対象に追加されています
別紙資料では、WOW TO JAPANプロジェクトは平成29年度から実施されており、令和7年度までは下水道技術を対象としていたものの、令和8年度から水道技術も対象に追加されたとされています。
これは小さな変更ではありません。
上下水道は、国内でも老朽化、耐震化、維持管理、人材不足、財源制約が重なっている分野です。下水道だけでなく水道も含めた形で技術実証の対象が広がることは、今後のインフラ更新市場を考えるうえで重要です。
中小建設業としては、次のような観点で自社の立ち位置を確認しておきたいところです。
- 上下水道関連工事にどの程度関わっているか
- 管路更生、点検、調査、維持管理に関する技術や協力先があるか
- 自治体や元請に対して、更新・修繕の選択肢を提案できるか
- 若手や技能者に、今後伸びるインフラメンテナンス領域として説明できるか
発注量だけを見るのではなく、発注者が何に困っているのかを見ることが大切です。老朽化対策では、単価の安さだけでなく、交通影響、施工リスク、維持管理性、説明のしやすさが評価されやすくなります。
海外展開のニュースから、国内の仕事の変化を読む
今回の実証はマレーシアで行われます。したがって、すべての中小建設企業がすぐに海外展開を考える必要はありません。
しかし、海外実証に採択される技術には、相手国の都市課題に合うだけの理由があります。今回でいえば、老朽化した上下水道管路、大規模開削が困難な都市部、圧力管や大口径管への対応といった課題です。
これらは、国内の自治体や都市部でも無関係ではありません。
中小建設業が注目すべきなのは、海外で売れる技術かどうかだけではなく、国内外で共通する課題に対して、どのような施工価値が求められているかです。
今後、公共工事や維持修繕工事では、単なる施工能力に加えて、次のような力がより重要になります。
- 工法選定の知識
- 発注者への説明力
- 専門会社との連携力
- 施工記録や品質管理の整備
- 安全・交通・近隣影響を含めた現場設計力
特に専門工事会社や地域土木会社にとって、これは大きな機会です。大規模な新設工事だけでなく、既存インフラを長く使うための更新・補修・更生の仕事が、経営の柱になり得るからです。
自社で確認しておきたい3つのこと
今回のニュースを受けて、すぐに新技術へ投資する必要があるとは限りません。まずは、自社の現在地を整理することが現実的です。
1つ目は、自社が関わる工事の中に、老朽インフラ対応の比率がどれだけあるかです。新設中心なのか、維持修繕が増えているのか。ここを見れば、今後必要な技術や人材の方向性が見えてきます。
2つ目は、非開削や管更生に関する協力先・情報源を持っているかです。すべてを内製化する必要はありません。むしろ中小企業では、専門技術を持つ会社とどう組むかが重要です。
3つ目は、発注者や元請に対して、施工上の制約を踏まえた提案ができるかです。「この条件なら、この工法の検討余地がある」と言える会社は、単なる作業会社ではなく、課題解決のパートナーとして見られやすくなります。
今回の採択は、直接的には特定の共同事業体による海外実証です。しかし経営上の示唆としては、建設業の価値が、つくる力から、直す力・長く使う力・制約下で納める力へ広がっていると捉えるべきです。
自社のインフラメンテナンス戦略を整理するきっかけに
非開削、管更生、上下水道の更新需要といったテーマは、技術の話であると同時に、経営の話でもあります。どの分野を伸ばすのか。どの会社と組むのか。どの人材を育てるのか。どの現場記録や管理体制を整えるのか。こうした判断が、数年後の受注力に効いてきます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。「うちの場合は、上下水道や維持修繕の流れをどう見ればよいか」「非開削や管更生のような技術領域と、今の事業をどうつなげるべきか」といった段階でも構いません。
無理な営業はいたしません。まずは自社の状況を整理する壁打ち先として、必要に応じてご活用ください。
































