国土交通省が「国土交通月例経済(令和8年8月号)」を公表しました。建設分野では、2026年6月の建設工事の元請受注高が7兆7,755億円、前年同月比0.5%減となりました。一方で、公共機関からの受注高は前年同月比11.6%増、下請受注高は同28.3%増と大きく伸びています。新設住宅着工戸数も前年同月比18.6%増となっており、全体としては「総量だけを見ると横ばいに近いが、内訳ではかなり動いている」月といえます。

発表資料

国土交通月例経済(令和8年8月号)

発表日

令和8年8月27日

建設工事の元請受注高

7兆7,755億円(2026年6月、前年同月比0.5%減)

公共機関からの受注高

2兆6,004億円(前年同月比11.6%増)

民間等からの受注高

5兆1,751億円(前年同月比5.7%減)

下請受注高

4兆3,464億円(前年同月比28.3%増)

新設住宅着工戸数

66,344戸(前年同月比18.6%増)

建設工事費デフレーター

建設総合126.4ポイント(2026年5月、前年同月差6.3ポイント増)

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総受注は微減でも、公共工事と下請は伸びています

今回の建設分野でまず見るべきは、元請受注高全体は前年同月比0.5%減と小幅な減少にとどまる一方、公共機関からの受注と下請受注が大きく伸びている点です。

元請受注高の内訳を見ると、公共機関からの受注高は2兆6,004億円で前年同月比11.6%増でした。一方、民間等からの受注高は5兆1,751億円で前年同月比5.7%減です。

この数字から読み取れるのは、建設需要を一括りに見ない方がよい、ということです。「建設市場が良い・悪い」ではなく、「公共は強いが民間は弱い」「元請全体は横ばいでも下請は増えている」と分けて見る必要があります。

中小建設業にとっては、公共工事の入札環境、元請企業からの協力会社需要、地域の民間投資の動きが、それぞれ別のスピードで変化している可能性があります。売上計画を立てる際も、前年同月比の総額だけで判断せず、自社の受注構成がどの市場に寄っているかを確認したいところです。

土木は増加、建築・建築設備は減少しています

工事種類別では、2026年6月の土木工事の元請受注高が2兆704億円、前年同月比12.0%増となりました。一方、建築工事・建築設備工事は4兆8,190億円で前年同月比3.7%減、機械装置等工事は8,861億円で前年同月比8.1%減です。

ここでも、土木と建築で受注環境に差が出ています。

土木系の会社や、土木工事に関わる専門工事会社にとっては、公共機関からの受注増とあわせて、比較的追い風の数字に見えます。一方で、建築・建築設備に関わる会社は、民間等からの受注減と合わせて、案件の選別や採算管理をより丁寧に見る必要があります。

特に中小企業の場合、受注量が増えても、利益が残らなければ経営は楽になりません。「忙しいかどうか」よりも、「どの工種で、どの発注者から、どの利益率で受けているか」を見直すことが重要です。

住宅着工は増加。地域と用途ごとの見方が必要です

新設住宅着工戸数は66,344戸で、前年同月比18.6%増となりました。利用関係別では、持家が18,553戸で15.7%増、貸家が30,253戸で24.6%増、分譲住宅が17,211戸で14.2%増です。給与住宅は327戸で41.8%減となっています。

住宅関連の工務店、内装、外装、設備、電気、給排水、外構などの会社にとっては、住宅着工の増加は受注機会を考えるうえで前向きな材料です。

ただし、地域別では濃淡があります。東京圏は24,952戸で19.9%増、名古屋圏は5,704戸で7.0%増、大阪圏は9,712戸で12.6%増、その他は25,976戸で22.6%増でした。

つまり、全国合計が増えていても、自社の営業エリアで同じように増えているとは限りません。住宅関連企業は、「全国の増加」ではなく「自社商圏でどの住宅タイプが伸びているか」まで落として見ることが大切です。

工事費デフレーターの上昇は、見積と原価管理の前提です

2026年5月の建設工事費デフレーターは、建設総合で126.4ポイント、前年同月差6.3ポイント増でした。建築総合は126.4ポイントで前年同月差5.9ポイント増、土木総合は125.8ポイントで同6.7ポイント増です。

建設工事費デフレーターは、建設工事費の動きを見る重要な指標です。今回の数字は、工事費水準が前年より上がっている環境が続いていることを示しています。

中小建設業にとって、この点は非常に実務的です。受注が増えても、見積単価や協力会社単価、外注費、材料費、労務費の管理が追いつかなければ、利益を圧迫します。

特に注意したいのは、過去の感覚で見積を出し続けることです。「去年と同じ単価で何とかなる」という前提は、数字上も置きにくくなっています。

もちろん、すべての工種・地域で同じように上がっているとは限りません。ただ、少なくとも経営側は、月次で粗利率、工種別利益、現場別の実行予算差異を確認し、見積ルールを更新する必要があります。

中小建設業が今月確認したいこと

今回の月例経済は、制度改正や補助金のように「期限までに申請する」タイプの情報ではありません。しかし、経営判断の材料としては重要です。

中小建設業では、次の点を確認しておきたいところです。

  • 自社の受注は、公共・民間のどちらに寄っているか
  • 元請案件と下請案件の比率はどう変わっているか
  • 土木・建築・設備など、どの工種で利益が出ているか
  • 住宅関連の場合、自社商圏の着工動向と営業先が合っているか
  • 見積単価や実行予算は、工事費上昇を反映できているか
  • 受注量を追うあまり、採算の薄い案件を抱えすぎていないか

今回の数字からは、建設市場全体が一方向に動いているというより、発注者・工種・地域・立場によって、チャンスと注意点が分かれていることが見えてきます。

そのため、今後の経営では「市場が伸びているから取りに行く」だけでは不十分です。伸びている領域に近づきながら、工事費上昇を織り込んだ利益管理を徹底することが、より重要になります。

自社の受注構成と利益構造を一度整理しておく

今回のような統計は、単なる景気ニュースとして読むよりも、自社の数字と照らし合わせることで価値が出ます。公共工事に寄せるのか、民間建築の中でも得意領域を絞るのか、下請として安定受注を狙うのか、住宅関連の伸びを取りに行くのか。会社ごとに答えは違います。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、販路拡大、資金調達、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。建設企業の持続的成長を支援し、ものづくりに集中できる建設業界へ近づけるための伴走を大切にしています。

「うちの場合は公共と民間の比率をどう考えるべきか」「受注はあるのに利益が残りにくい」「見積や原価管理をどこから見直せばよいかわからない」といった段階でも構いません。無理な営業はいたしませんので、まずは状況整理の場としてご活用ください。

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