国土交通省港湾局は、循環経済の実現に向けて、循環資源に関する物流ネットワークの拠点形成や、高度なリサイクル技術を持つ産業の集積に取り組む港湾を「循環経済拠点港湾(サーキュラーエコノミーポート)」として初めて選定しました。今回選定されたのは、申請のあった全29港です。

発表日

令和8年8月27日

発表機関

国土交通省 港湾局

制度・取組名

循環経済拠点港湾(サーキュラーエコノミーポート)

選定港数

29港

主な目的

港湾を核とした物流システムの構築による広域的な資源循環の促進

関連する支援

循環資源取扱支援施設の整備支援、環境省「再生材供給サプライチェーン構築支援事業」での加点措置予定

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今回のポイントは「港を資源循環の拠点にする」ことです

今回の発表で重要なのは、単に29港が選ばれたという事実だけではありません。

国土交通省は、サーキュラーエコノミーポートを、循環資源の輸送、保管、荷役、再資源化、港湾間連携を進める拠点として位置づけています。

サーキュラーエコノミーとは、資源や製品の価値を維持・回復・付加しながら循環的に利用する経済システムです。建設業に引き寄せて考えると、解体材、建設副産物、再生材、リサイクル資材、産業廃棄物処理、再資源化施設などと無関係ではありません。

今回の選定では、各港について次のような実績や計画が確認されています。

  • サーキュラーエコノミーに係る港湾貨物の取扱
  • 高度な分別収集・再資源化施設の立地
  • 小口・多種多様な循環資源の輸送
  • 貨物取扱環境の整備
  • 港湾間の連携等による輸送効率化

つまり、今後は港湾を中心に、資源を「捨てる」のではなく「循環させる」ためのインフラ整備が進む可能性があります。

選定された29港

今回、サーキュラーエコノミーポートに選定された港湾は以下の29港です。

港湾名

港湾管理者

室蘭港

室蘭市

苫小牧港

苫小牧港管理組合

石狩湾新港

石狩湾新港管理組合

八戸港

青森県

釜石港

岩手県

大船渡港

岩手県

秋田港

秋田県

船川港

秋田県

能代港

秋田県

酒田港

山形県

小名浜港

福島県

相馬港

福島県

千葉港

千葉県

木更津港

千葉県

川崎港

川崎市

姫川港

新潟県

伏木富山港

富山県

三河港

愛知県

舞鶴港

京都府

姫路港

兵庫県

境港

境港管理組合

徳山下松港

山口県

宇部港

山口県

三島川之江港

愛媛県

須崎港

高知県

宿毛湾港

高知県

北九州港

北九州市

三池港

福岡県

中城湾港

沖縄県

自社の営業エリアや取引先の近くに選定港がある場合は、今後の港湾管理者の整備方針や、関連する発注情報を継続して見ておく価値があります。

中小建設業にとっての実務影響は「すぐの義務」ではなく「市場の方向性」です

今回の発表は、建設会社に対して新しい義務を課すものではありません。ここは冷静に見てよいところです。

一方で、経営上は見逃しにくい動きです。なぜなら、公共インフラの整備方針が、資源循環を前提に動き始めているからです。

中小建設業にとって関係しやすい論点は、主に次の3つです。

  1. 港湾周辺の整備工事・施設整備の可能性

循環資源の蔵置、保管、荷役設備、貨物取扱環境の整備などが進めば、土木、舗装、外構、電気、設備、建築、解体などの周辺工事につながる可能性があります。

  1. 解体・産廃・再資源化関連の取引変化

小口・多種多様な循環資源の輸送ニーズが明記されています。建設副産物や解体材に関わる会社は、地域のリサイクル関連企業や物流事業者との関係を見直すきっかけになります。

  1. 再生材活用への流れ

環境省では「再生材供給サプライチェーン構築支援事業」において、港湾での循環資源の荷役設備等の整備を支援する予定とされています。詳細は今後の環境省発表を確認する必要がありますが、再生材の供給体制を強くする方向は読み取れます。

つまり、今すぐ何かを変えなければならないというより、今後の発注・資材・廃材処理・協力会社ネットワークの前提が少しずつ変わると見ておくのがよさそうです。

経営者がまず見るべきこと

今回のニュースを自社経営に引き寄せるなら、最初に見るべきは制度名そのものではありません。

見るべきは、自社の商圏と選定港が重なっているかです。

選定港の近くで事業をしている会社であれば、次の点を確認しておくとよいです。

  • 港湾管理者の今後の整備計画や発注情報
  • 地元自治体の環境・産業・港湾関連施策
  • リサイクル関連企業、物流事業者、産廃処理会社の投資動向
  • 自社が扱う建設副産物や再生材との接点
  • 公共工事で求められる環境対応・資源循環の要件変化

特に、解体、土木、舗装、港湾・臨海部工事、産廃処理、運搬、設備工事に関わる会社は、周辺情報を追っておく意味があります。

資源循環は、環境部門だけの話ではなく、受注機会、原価、協力会社網、提案力に関わる経営テーマになっていきます。

補助・支援策は今後の詳細確認が必要です

今回の発表では、参考情報として2つの支援が示されています。

1つ目は、国土交通省港湾局による、港湾での循環資源の蔵置・保管等を行う循環資源取扱支援施設の整備支援です。

2つ目は、環境省環境再生・資源循環局の「再生材供給サプライチェーン構築支援事業」です。こちらでは、港湾での循環資源の荷役設備等の整備を支援する予定とされており、特にサーキュラーエコノミーポート選定港での整備については、支援対象の審査にあたり加点措置が講じられる予定とされています。

ただし、環境省事業の詳細は今後の報道発表を確認する必要があります。

中小建設業としては、現時点で補助金活用を断定的に判断するのではなく、港湾管理者、リサイクル関連企業、物流事業者がどのような設備投資を行うかを見ていくのが現実的です。

自社が直接補助対象になるとは限りません。それでも、補助を受けた事業者の設備投資や施設整備が、地域の工事・メンテナンス・運搬・協力業務につながる可能性はあります。

「環境対応」を営業・採用・利益管理につなげる視点が大切です

資源循環の政策は、ともすると大企業や港湾管理者だけの話に見えます。しかし、中小建設業にとっても、少し角度を変えると実務に落とし込めます。

たとえば、公共工事や民間工事で、環境配慮、廃棄物削減、再生材活用、適正処理の説明を求められる場面は今後も増える可能性があります。そのときに、「当社は何を分別し、どこへ運び、どのように再資源化につなげているか」を説明できる会社は、提案力を持ちやすくなります。

また、若い人材に対しても、建設業が単に壊して造る産業ではなく、地域の資源循環を支える産業であると伝えやすくなります。

この流れは、きれいごとだけではありません。処分費、運搬費、資材費、協力会社選定にも関わります。資源循環を原価管理の外側に置かず、経営管理の中に入れることが、これからの差になります。

自社への影響を整理するところから始める

今回のサーキュラーエコノミーポート選定は、すぐに全社的な対応を迫るニュースではありません。ただ、港湾、物流、再資源化、再生材、建設副産物がつながっていく方向は明確です。

まずは、自社の地域、工種、取引先、廃材処理、再生材活用との接点を整理するだけでも十分です。そこから、追うべき発注情報、関係を深めるべき事業者、見直すべき原価項目が見えてきます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような制度・政策の動きを見て、「うちの場合はどこに関係するのか」「何から整理すべきか」を考えたい段階でも問題ありません。無理な営業はいたしませんので、必要な整理先として活用してください。

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