国土交通省大臣官房官庁営繕部は、令和8年7月17日、株式会社富士建設に対して指名停止措置を行ったと発表しました。理由は、同社が令和4年度から令和6年度の経営事項審査の申請に際し、実態と異なる内容を記載した工事経歴書および技術職員名簿を提出していたことが確認され、沖縄県知事から建設業法に基づく営業停止処分を受けていたためです。

指名停止措置業者

株式会社富士建設

住所

沖縄県宜野湾市志真志四丁目2番2号

指名停止期間

令和8年7月17日から令和8年10月16日まで

指名停止の範囲

官庁営繕部の発注する工事

背景となった処分

沖縄県知事による30日間の営業停止処分

指摘された内容

経営事項審査の申請における工事経歴書・技術職員名簿の実態と異なる記載

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今回の事案で見るべきポイント

今回の発表は、単に1社が指名停止を受けたという話にとどまりません。中小建設業にとって重要なのは、経営事項審査、いわゆる経審の申請内容が、公共工事への参加資格そのものに直結しているという点です。

公表資料によると、株式会社富士建設は令和4年度から令和6年度の経営事項審査の申請に際し、実態と異なる内容を記載した工事経歴書および技術職員名簿を提出していました。また、その結果をもって沖縄県に対して入札参加資格の申請を行ったとされています。

この行為が建設業法第28条第1項第2号に該当するとされ、令和8年3月24日に沖縄県知事から30日間の営業停止処分を受けました。その後、官庁営繕部の工事請負契約に係る指名停止措置要領に基づき、今回の指名停止措置につながっています。

つまり、経審の書類不備や不実記載は、行政処分だけでなく、その後の入札参加・指名停止へ波及し得るということです。

工事経歴書と技術職員名簿は「事務書類」ではなく経営リスクです

建設会社の現場では、経審や入札参加資格申請は「毎年の事務作業」として扱われがちです。総務や事務担当者が前年度の資料を見ながら更新し、必要な数字や名簿を整えて提出する。多くの会社で、そのような流れになっていると思います。

しかし今回の事案が示しているのは、工事経歴書と技術職員名簿は、会社の信用を証明する中核資料であるという現実です。

工事経歴書は、どの工事をどのように請け負い、どの業種で実績を積んできたのかを示します。技術職員名簿は、会社にどのような資格者・技術者が在籍し、施工体制を支えられるのかを示します。

この2つは、発注者から見れば「この会社に工事を任せられるか」を判断する材料です。だからこそ、実態と異なる記載があれば、単なる入力ミスでは済まず、建設業法上の問題として扱われる可能性があります。

中小建設業にとっては、経審書類の作成プロセスそのものを、内部統制の一部として見直すべき段階に来ていると考えた方がよいです。

経営者が確認したい3つの実務ポイント

今回のニュースを受けて、まず確認したいのは次の3点です。

1. 工事経歴書の内容と実態が一致しているか

工事名、請負金額、工種、元請・下請の別、完成時期などが、契約書・注文書・請書・請求書・入金記録・施工体制台帳などと整合しているかを確認する必要があります。

特に注意したいのは、経審上の評点を意識するあまり、工種区分や工事実績の整理が曖昧になることです。

「これは土木一式でよいのか」 「専門工事として整理すべきではないか」 「この金額はどこまでを含めるのか」

こうした判断を担当者任せにしていると、会社として説明できない書類が残ってしまいます。

2. 技術職員名簿の在籍・資格・実務経験が確認できるか

技術職員名簿については、在籍実態、資格証、監理技術者資格者証、実務経験、雇用関係などの確認が重要です。

名簿に載っている人が、いつから在籍し、どの資格・経験に基づいて評価されているのかを会社として説明できる状態にしておく必要があります。

人手不足の中で、技術者の採用・退職・配置転換は頻繁に起きます。だからこそ、経審申請の時期だけ慌てて確認するのではなく、日頃から人事情報と資格情報を更新しておくことが大切です。

3. 入札参加資格申請まで含めて一連で確認しているか

今回の公表資料では、実態と異なる内容を記載した経審結果をもって、沖縄県に入札参加資格の申請を行ったことも記載されています。

ここで大事なのは、経審と入札参加資格申請は別々の手続きであっても、実務上は一連の信用確認として見られるということです。

経審で使った資料、入札参加資格申請で使った資料、発注者に提出する会社情報。これらの内容がバラバラだと、後から説明が難しくなります。

中小建設業ほど「担当者任せ」から脱却したい

中小建設業では、経審や入札参加資格申請を少人数で回している会社が多いです。長年同じ担当者が対応している会社もあれば、外部の専門家に依頼している会社もあります。

それ自体は悪いことではありません。むしろ、限られた人員で会社を回すうえでは自然なことです。

ただし、経営者として押さえておきたいのは、提出される書類の最終責任は会社にあるということです。

「担当者が作ったから」 「外部に任せていたから」 「前年度と同じやり方だったから」

こうした事情があっても、発注者や行政から見れば、申請したのは会社です。ここは厳しく受け止める必要があります。

一方で、必要以上に身構える話でもありません。やるべきことは明確です。経審・入札・技術者情報・工事実績を、会社として説明できる形に整えることです。

これからの公共工事参加は「施工力」と「説明力」の両方が問われます

建設業界では、人手不足、技術者不足、賃上げ、週休2日、資材価格の変動など、経営課題が重なっています。そうした中で公共工事に継続的に参加するには、現場で良い施工をするだけでなく、会社の体制や実績を正確に示す力が必要になります。

今回の指名停止措置は、公共工事に参加する会社にとって、書類管理と法令遵守が受注機会を守る経営課題であることを改めて示しています。

特に中小建設業では、経審の点数を上げることに意識が向きがちです。しかし、点数以前に大事なのは、申請内容の正確性です。実態に合った資料を整え、その内容を経営者・管理部門・現場責任者が共有できているか。ここが会社の土台になります。

次の経審や入札参加資格申請の前に、少なくとも次の確認はしておきたいところです。

  • 工事経歴書の根拠資料が残っているか
  • 技術職員名簿の在籍・資格・経験を確認できるか
  • 経審申請と入札参加資格申請の内容に矛盾がないか
  • 担当者だけでなく、経営側も重要項目を把握しているか
  • 退職者・入社者・資格取得者の情報更新ルールがあるか

これらは大がかりな仕組みでなくても構いません。まずはExcelや社内フォルダの整理からでも十分です。大切なのは、「毎年なんとなく出す」状態から、「会社として確認して出す」状態に変えることです。

自社の経審・入札管理を一度整理してみる

今回のようなニュースを読むと、「うちは大丈夫だろうか」と感じる会社もあると思います。特に、経審、入札参加資格、技術者情報、工事台帳、原価管理がそれぞれ別々に管理されている会社では、どこから見直せばよいか迷いやすいところです。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。経審や入札管理についても、単なる書類作成ではなく、会社がものづくりに集中できる状態をつくるための管理体制として考えることが大切です。

「自社の場合は何を確認すべきか」「担当者任せになっている部分をどう整えるか」という段階でも問題ありません。無理な営業はいたしませんので、必要な整理先として使ってください。

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