国土交通省は、中央建設工事紛争審査会と各都道府県審査会を含む、令和7年度の建設工事紛争取扱状況を公表しました。建設工事紛争審査会は、建設工事の請負契約に関する紛争を、裁判によらずに解決するために設けられている裁判外紛争処理機関です。

公表内容

建設工事紛争取扱状況(令和7年度)

全国の申請件数

116件(前年度比7件増)

全国の終了件数

111件

全国の次年度繰越件数

99件

全国で最も多い当事者類型

個人発注者から請負人への請求:41件

全国で最も多い紛争類型

工事瑕疵:41件

中央審査会の申請件数

25件(前年度比7件減)

中央審査会で最も多い当事者類型

下請負人から元請負人への請求:7件

中央審査会で多い紛争類型

工事瑕疵、工事代金の争い、下請代金の争い:各6件

今回の公表は、単なる統計ではありません。中小建設業にとっては、どこで契約トラブルが起きやすいのかを確認する材料になります。特に、工事瑕疵、工事代金、下請代金は、現場品質だけでなく、資金繰り、元請・下請関係、社内の記録管理に直結します。

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  • 7月16日外構工事会社東京都
  • 7月16日塗装工事会社大阪府
  • 7月16日内装工事会社群馬県
  • 7月16日総合建築岐阜県
  • 7月15日工務店東京都
  • 7月15日内装工事会社神奈川県
  • 7月15日塗装工事会社奈良県
  • 7月15日内装工事会社鳥取県
  • 7月14日配管工事会社高知県
  • 7月14日配管工事会社広島県
  • 7月14日防水工事会社神奈川県
  • 7月12日配管工事会社京都府
  • 7月12日ビルメンテナンス佐賀県
  • 7月12日リフォーム会社茨城県
  • 7月11日総合建築福島県
  • 7月11日総合土木大阪府
  • 7月11日造園会社愛知県
  • 7月11日外構工事会社茨城県
  • 7月10日電気設備工事会社京都府
  • 7月8日総合土木愛知県
  • 7月8日工務店山形県
  • 7月8日外構工事会社群馬県
  • 7月6日工務店兵庫県
  • 7月6日電気設備工事会社神奈川県
  • 7月6日防水工事会社東京都
  • 7月5日塗装工事会社神奈川県
  • 7月5日プラント工事会社福島県
  • 7月5日リフォーム会社東京都
  • 7月5日総合土木福井県
  • 7月4日外構工事会社千葉県
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まず見るべきは「瑕疵」と「代金」です

令和7年度の全国の紛争類型では、工事瑕疵が41件で最も多いとされています。中央審査会でも、工事瑕疵、工事代金の争い、下請代金の争いがそれぞれ6件で並んでいます。

ここから読み取れるのは、建設工事の紛争は「工事が終わったかどうか」だけでは終わらない、ということです。

中小建設企業が実務上確認したいのは、次のような点です。

  • 契約時点で、仕様・範囲・責任分界が明確になっているか
  • 追加変更工事について、口頭指示のまま進めていないか
  • 検査・引渡し・是正対応の記録が残っているか
  • 請求書、出来高、支払条件、保留金などの根拠が整理されているか
  • 下請との間で、元請からの変更・遅延・減額の影響をどう扱うか確認できているか

特に注意したいのは、瑕疵と代金は別々の問題に見えて、実務ではつながりやすい点です。発注者側が「不具合がある」として支払いを止める。請負人側は「追加工事分が未払い」と主張する。下請には先に支払いが発生している。こうした構造は、会社の規模が小さいほど資金繰りへの影響が大きくなります。

品質管理と請求管理は、別部門の仕事ではなく、経営管理として一体で見るべき論点です。

下請負人から元請負人への請求が中央で最多

中央審査会の令和7年度申請件数25件を当事者類型別に見ると、下請負人から元請負人への請求が7件で最多でした。

件数だけで業界全体の傾向を断定することはできません。ただし、中小建設業の経営者にとっては見過ごせない数字です。専門工事会社や下請企業にとって、元請との取引条件、追加変更、支払時期、精算方法は、利益率と資金繰りを左右します。

一方で、元請側に立つ中小企業にとっても同じです。下請との契約・発注・精算が曖昧なままだと、現場が終わった後に利益が削られる可能性があります。

確認したいのは、次の3点です。

  1. 発注書・請書・契約書が、実際の工事内容と合っているか
  2. 追加・変更・手戻りの指示が、誰の責任で発生したものか記録されているか
  3. 支払条件や精算時期が、現場担当者だけでなく管理側でも把握されているか

現場の信頼関係は大切です。ただし、信頼関係を守るためにも、記録は必要です。書面化は相手を疑う行為ではなく、後から双方を守るための経営インフラと考えるべきです。

紛争は「金額」と「時間」の両方で経営を圧迫します

中央審査会の資料では、令和7年度の申請事件の請求金額について、1,000万円超〜5,000万円が9件で最多とされています。また、1億円超の高額申請も5件ありました。

中小建設企業にとって、1,000万円単位の未回収や追加負担は、単なる一現場の問題にとどまりません。次の現場の外注費、材料費、賞与、借入返済に影響します。

さらに、紛争処理には時間もかかります。過去5年間の終了事件では、平均所要月数・平均審理回数は次のように示されています。

手続

平均所要月数

平均審理回数

あっせん

約10か月

3.4回

調停

約11か月

4.5回

仲裁

約24か月

9.0回

つまり、紛争になってから解決するまでには、数か月から年単位で経営資源が拘束される可能性があります。社長、役員、現場責任者、経理担当者が資料を集め、経緯を整理し、相手方とやり取りする。その時間もコストです。

この統計から得られる実務的な教訓は明確です。紛争対応力を高める最善策は、紛争になる前の記録と契約管理を整えることです。

中小建設業が今見直したい実務ポイント

今回の公表を受けて、すぐに大がかりな制度変更をする必要があるとは限りません。ただし、次のような基本動作は、一度点検しておく価値があります。

1. 契約前に「工事範囲」を曖昧にしない

見積書、契約書、図面、仕様書の間にズレがあると、後で代金や瑕疵の争いにつながりやすくなります。

何が含まれ、何が別途なのかを、契約前に言葉で残すことが重要です。

2. 変更指示は小さくても記録する

追加変更は、現場では日常的に起きます。だからこそ危険です。小さな変更が積み重なると、最終的に大きな金額差になります。

メール、チャット、議事録、変更指示書など、形式は会社の実情に合わせてよいですが、誰が、いつ、何を指示し、金額や工期にどう影響するのかを残す運用が必要です。

3. 検査・是正・引渡しの記録を残す

工事瑕疵の争いでは、施工内容だけでなく、検査や是正の経緯も重要になります。

写真、検査記録、是正完了報告、引渡し確認などを整理しておくことで、後から説明しやすくなります。

「ちゃんと施工した」だけではなく、「ちゃんと説明できる状態にしておく」ことが大切です。

4. 元請・下請間の精算ルールを社内で共有する

現場担当者だけが経緯を知っていて、経理や経営側が把握していない状態は危険です。担当者の退職や異動があると、交渉の根拠が失われます。

下請契約、出来高、追加変更、支払予定を社内で見える化することが、紛争予防と資金繰り管理の両方に効きます。

建設工事紛争審査会という選択肢も知っておく

建設工事紛争審査会は、建設工事の請負契約に関する紛争を、裁判によらずに解決するための仕組みです。手続には、あっせん、調停、仲裁があります。

中小建設業にとって重要なのは、裁判以外にも紛争解決の選択肢があると知っておくことです。もちろん、実際に利用するかどうかは、契約内容、相手方との関係、請求金額、証拠の状況などによって変わります。

ただ、こうした仕組みがあることを知っているだけでも、交渉や社内判断の幅は広がります。紛争が起きた時に慌てて調べるのではなく、平時から概要を把握しておくとよいでしょう。

このニュースを、自社の契約管理を見直すきっかけにする

今回の統計は、特定の会社に向けた警告ではありません。しかし、建設業で起きやすい紛争の形を、かなり率直に示しています。

中小建設業が見るべきポイントは、件数の増減そのものよりも、瑕疵、工事代金、下請代金という基本的な論点が、今も紛争の中心にあることです。

現場力がある会社ほど、「最後は話せば分かる」「長い付き合いだから大丈夫」と考えがちです。もちろん、それは建設業の強さでもあります。ただ、これから人手不足、原価上昇、工期制約が続く中では、曖昧なまま吸収できる余力は小さくなっていきます。

契約、変更、検査、請求、支払いを整えることは、守りの事務作業ではなく、利益を残すための経営戦略です。

自社ではどこから整えるべきかを考える

契約書や原価管理、下請管理を見直したいと思っても、日々の現場が動いている中で、どこから手を付けるべきか迷うこともあるはずです。まずは、過去に揉めかけた現場、追加変更が多い工種、請求・支払いの確認に時間がかかっている取引から整理すると、実務に落とし込みやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。契約管理や原価管理も、単独の書類整備ではなく、会社がものづくりに集中できる体制づくりの一部として考えることが大切です。

「うちの場合は何から整理すべきか」「契約や変更管理をどこまで仕組みにすべきか」という段階でも構いません。無理な営業はいたしませんので、状況整理の壁打ち先として必要なときにご相談ください。

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