国土交通省は、令和8年5月分の「建設工事受注動態統計調査報告」を公表しました。5月の建設工事受注高は9兆4,908億円で、前年同月比6.8%増となりました。一方で、元請受注高は3.2%減、下請受注高は26.4%増となっており、表面的な総額の増加だけではなく、受注の重心がどこに移っているかを見る必要があります。

公表内容

建設工事受注動態統計調査報告(令和8年5月分)

公表日

令和8年7月10日

5月の受注高

9兆4,908億円

前年同月比

6.8%増、2か月連続の増加

元請受注高

5兆7,059億円、前年同月比3.2%減

下請受注高

3兆7,848億円、前年同月比26.4%増

公共機関からの元請受注

1兆3,995億円、前年同月比3.3%増

民間等からの元請受注

4兆3,064億円、前年同月比5.1%減

目立つ動き

職別工事業、設備工事業、下請受注が大きく増加

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  • 7月10日電気設備工事会社京都府
  • 7月8日総合土木愛知県
  • 7月8日工務店山形県
  • 7月8日外構工事会社群馬県
  • 7月6日工務店兵庫県
  • 7月6日電気設備工事会社神奈川県
  • 7月6日防水工事会社東京都
  • 7月5日塗装工事会社神奈川県
  • 7月5日プラント工事会社福島県
  • 7月5日リフォーム会社東京都
  • 7月5日総合土木福井県
  • 7月4日外構工事会社千葉県
  • 7月2日防水工事会社茨城県
  • 6月30日ビルメンテナンス北海道
  • 6月30日ビルメンテナンス福岡県
  • 6月29日総合建築千葉県
  • 6月29日総合建築東京都
  • 6月28日配管工事会社富山県
  • 6月27日リフォーム会社山口県
  • 6月27日内装工事会社大阪府
  • 6月26日塗装工事会社秋田県
  • 6月26日配管工事会社三重県
  • 6月26日工務店宮崎県
  • 6月25日内装工事会社長野県
  • 6月23日プラント工事会社神奈川県
  • 6月23日外構工事会社岐阜県
  • 6月19日空調設備工事会社兵庫県
  • 6月19日総合建築鳥取県
  • 6月19日配管工事会社東京都
  • 6月18日総合土木東京都
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まず見るべきは「総額増」よりも、元請減・下請増の差です

今回の統計で最も重要なのは、受注高全体が増えたこと以上に、元請受注高が減る一方で、下請受注高が大きく増えている点です。

5月の元請受注高は5兆7,059億円で前年同月比3.2%減でした。一方、下請受注高は3兆7,848億円で前年同月比26.4%増です。

この数字だけで市場全体の構造変化を断定することはできません。ただ、中小建設業にとっては、次のような見方が必要です。

「元請として直接受ける仕事」と「大手・元請会社から流れてくる専門工事・下請工事」の温度差が出ている可能性があります。

特に専門工事会社、設備工事会社、職別工事会社にとっては、受注機会が増えている局面に見える一方で、注意すべき点もあります。下請受注が増える局面では、仕事量は増えても、契約条件、工期、人工、材料費、追加変更の扱いによって利益が残りにくくなることがあります。

つまり、今見るべきなのは「忙しくなるか」だけではありません。増えた受注を、きちんと利益に変えられる管理体制があるかです。

業種別では、職別工事業と設備工事業の強さが目立ちます

業種別では、総合工事業が4兆8,463億円で前年同月比5.3%減となった一方、職別工事業は1兆4,229億円で25.2%増、設備工事業は3兆2,216億円で22.3%増でした。

さらに設備工事業は、前年同月比で21か月連続の増加とされています。これは単月の偶然というより、設備関連需要の強さが継続していることを示す材料です。

中小建設業がここから読み取りたいのは、建設需要の中身が、躯体や土木だけでなく、設備・専門領域へ厚みを増しているということです。

建築物の高機能化、省エネ対応、電気・空調・給排水・通信関連の重要性は高まり続けています。今回の統計でも、設備工事業の伸びはその流れと整合します。

設備工事会社にとっては前向きな材料です。一方で、総合工事会社や元請側にとっても、設備会社・専門工事会社を安定的に確保できるかが、受注力そのものに直結しやすくなっています。

これからの受注競争は、単に営業力だけでなく、協力会社網と専門人材をどれだけ確保できるかの競争になっていきます。

民間元請は減少。ただし大型建築は増加しています

元請受注のうち、公共機関からの受注は1兆3,995億円で前年同月比3.3%増でした。一方、民間等からの受注は4兆3,064億円で5.1%減となっています。

ただし、民間の中でもすべてが弱いわけではありません。民間等からの建築工事・建築設備工事、これは1件5億円以上の工事が対象ですが、5月の受注工事額は1兆2,670億円で前年同月比14.7%増でした。

工事種類別では、「住宅」3,485億円、「工場・発電所」2,365億円、「事務所」1,922億円が大きい項目として示されています。

一方で、民間等からの土木工事及び機械装置等工事は7,861億円で前年同月比26.4%減でした。

ここから見えるのは、民間需要は一枚岩ではなく、建築・建築設備と、土木・機械装置等で動きが分かれているということです。

民間工事を狙う会社は、「民間が強いか弱いか」という大きな見方だけでは足りません。自社が関わる工種が、住宅、工場・発電所、事務所、機械装置、土木のどこに近いのかを分けて見る必要があります。

市場全体ではなく、自社の工種に近い需要の波を見ることが、受注判断の精度を上げます。

公共工事は地方の機関が増加。市区町村案件にも注目です

公共機関からの受注工事額は、1件500万円以上の工事で1兆2,682億円、前年同月比1.4%増でした。

内訳を見ると、国の機関からの受注工事額は3,392億円で前年同月比9.0%減。一方、地方の機関からは9,289億円で5.8%増となっています。

地方の機関の中では、市区町村が5,285億円で1.2%増、地方公営企業が1,102億円で49.3%増、その他が1,097億円で65.9%増とされています。

公共工事を受ける中小建設業にとっては、国発注だけでなく、自治体・地方公営企業の発注動向を丁寧に見る意味が増しているといえます。

工事分類別では、「教育・病院」2,461億円、「道路工事」2,069億円、「その他」1,746億円が大きい項目です。発注機関別・工事分類別では、市区町村の「教育・病院」が1,749億円とされています。

地域密着型の建設会社にとって、学校、病院、道路、上下水道、廃棄物処理、維持補修といった領域は、今後も地域インフラを支える重要な仕事です。

公共工事では、発注者を「国か地方か」に分け、さらに自社が得意な工種と地域案件を照らし合わせることが大切です。

資本金3億円以下の法人では、受注増がより強く出ています

今回の資料では、資本金階層別の受注高も示されています。

資本金3億円以下の法人は、受注高が6兆1,037億円で前年同月比20.8%増でした。そのうち下請受注高は3兆121億円で38.5%増です。

業種別では、資本金3億円以下の法人について、総合工事業が3.3%増、職別工事業が38.6%増、設備工事業が50.3%増とされています。

これは中小建設業にとって見逃せない数字です。

中小・中堅規模の会社、とくに職別工事業と設備工事業に仕事が流れている可能性が高いと読めます。

ただし、受注が増える局面では、現場の許容量を超えた受注が起きやすくなります。人が足りない、番頭が足りない、施工管理が追いつかない、追加変更の請求が後回しになる。こうした状態では、売上は増えても利益と現場品質が残りません。

今の局面で必要なのは、受注を止めることではありません。取るべき仕事と、慎重に見るべき仕事を分ける基準を持つことです。

中小建設業が今月の統計から考えたい実務ポイント

今回の統計は、経営判断にそのまま使える単純な答えではありません。単月の数字であり、地域や工種によっても差があります。資料にも、受注高の少ない集計区分などは誤差が大きいので利用に注意が必要とされています。

その前提で、中小建設業が実務で見るべきポイントは明確です。

第一に、下請受注の増加を「利益が増える」と同義にしないことです。 受注量が増えるほど、見積精度、労務手配、外注管理、追加変更管理が重要になります。

第二に、設備工事・職別工事の需要増を、自社の採用・育成・協力会社戦略に反映することです。 需要が強い領域ほど、人材確保の競争も強くなります。

第三に、公共工事では地方発注の動きを見ることです。 特に市区町村、地方公営企業、地域インフラ関連の案件は、地域企業にとって重要な受注基盤になり得ます。

第四に、民間工事は発注者別・工事種類別に分けて見ることです。 民間全体ではなく、住宅、工場・発電所、事務所、機械装置等のどこに自社が関わるのかを確認する必要があります。

第五に、売上計画だけでなく、粗利計画と施工能力を同時に見ることです。 受注環境が動いている時期ほど、「受注できるか」より「きちんと納めて利益を残せるか」が経営の分かれ目になります。

「増える仕事」を利益ある成長につなげるために

今回の統計は、中小建設業にとって前向きな材料を含んでいます。特に下請、職別工事、設備工事、資本金3億円以下の法人で伸びが見られる点は、現場に近い会社ほど仕事の機会が広がっている可能性を示しています。

一方で、仕事が増える局面ほど、会社の中身が問われます。見積、原価管理、人員配置、協力会社との関係、採用、教育、デジタル活用。どれか一つではなく、複数の課題が同時に動きます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような受注環境の変化を受けて、「うちの場合はどの数字を見ればよいか」「増える仕事にどう備えるべきか」「利益管理をどこから整えるべきか」といった段階から一緒に整理できます。

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