国土交通省は、中央建設工事紛争審査会の令和8年(2026年)度第1四半期の紛争処理状況を公表しました。新規申請件数は18件で、昨年同期より12件増えています。紛争の中身を見ると、工事瑕疵工事代金の争いがそれぞれ5件で最多でした。

公表日

令和8年7月15日

対象

中央建設工事紛争審査会の令和8年度第1四半期の紛争処理状況

新規申請件数

18件(昨年同期比12件増)

前期からの繰越件数

23件

今期の終了件数

7件

次期への繰越件数

34件

多い紛争類型

工事瑕疵5件、工事代金の争い5件

主な当事者類型

個人発注者から請負人6件、下請負人から元請負人4件、法人発注者から請負人3件

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これは「裁判外での建設工事トラブル」の状況です

建設工事紛争審査会は、建設工事の請負契約に関する紛争を、裁判によらずに解決するための機関です。建設業法に基づき、国土交通省と各都道府県に設置されています。

今回公表されたのは、中央建設工事紛争審査会の令和8年度第1四半期の状況です。

手続別では、今期の申請18件の内訳は、あっせん4件、調停12件、仲裁2件でした。前期からの繰越23件に対して、今期終了は7件。結果として、次期への繰越は34件となっています。

ここで大切なのは、単に「紛争が増えた」と読むことではありません。中央審査会の件数であり、建設業全体のトラブル件数そのものではありません。

ただし、経営目線では十分に意味があります。表に出てくる紛争の多くは、日々の契約、変更、検査、請求の積み重ねから生まれるからです。

中小建設業が見るべきは「瑕疵」と「代金」です

今回、紛争類型で最も多かったのは、工事瑕疵5件工事代金の争い5件です。

さらに、契約解除4件下請代金の争い4件も挙がっています。

紛争類型

申請件数

工事瑕疵

5件

工事遅延

0件

工事代金の争い

5件

契約解除

4件

下請代金の争い

4件

その他

0件

合計

18件

現場では、最初から揉めようと思って始まる工事はほとんどありません。

それでも、工事が進むうちに、追加変更が出ます。仕様の認識がずれます。仕上がりの評価が分かれます。検査後に指摘が出ます。請求の段階で「そこまで頼んでいない」「その金額は聞いていない」となることもあります。

つまり、紛争の入口は、現場の小さな未整理です

特に中小建設企業では、社長、専務、番頭、現場代理人が経験と信頼で回している場面が多いはずです。その強さはあります。一方で、記録が残っていないと、いざという時に会社を守りにくくなります。

下請・元請間の争いも、他人事ではありません

当事者類型では、下請負人から元請負人への争いが4件、元請負人から下請負人への争いが2件ありました。

申請人

被申請人

件数

個人発注者

請負人

6件

法人発注者

請負人

3件

請負人

個人発注者

1件

請負人

法人発注者

2件

下請負人

元請負人

4件

元請負人

下請負人

2件

その他

0件

合計

18件

下請代金の争いも4件あります。

ここは中小・専門工事会社にとって、特に現実味のあるところです。

たとえば、追加工事の指示が口頭だった。人工が増えたが、精算条件が曖昧だった。手直しの責任範囲がはっきりしない。元請から見ると「当然含まれている」と思っていて、下請から見ると「別途工事」だと思っている。

このズレは、現場では珍しくありません。

だからこそ、元請・下請のどちらの立場でも、変更指示と金額合意を残す仕組みが必要です。立場が変われば、守るべきポイントも変わります。元請として外注先を管理する場面もあれば、下請として元請に請求する場面もあるからです。

まず点検したい4つの実務

今回の公表内容から、中小建設業がすぐに見直したい実務は4つです。

1つ目は、契約範囲の明確化です。

見積書、契約書、注文書、請書、仕様書、図面。どこまでが請負範囲なのか。どこからが別途なのか。ここが曖昧だと、工事代金の争いにつながりやすくなります。

2つ目は、変更・追加工事の記録です。

追加や変更が出た時に、誰が、いつ、何を指示したのか。金額はどう扱うのか。メール、チャット、議事録、写真、変更見積などで残すことが重要です。

3つ目は、検査・引渡し・是正対応の記録です。

工事瑕疵の争いでは、施工中と完了時の記録が会社を守ります。写真、検査表、是正履歴、発注者確認の記録。現場で当たり前にやっていることでも、会社として残っていなければ証明しにくくなります。

4つ目は、請求根拠の整理です。

請求書だけでは弱い場面があります。見積、契約、出来高、追加指示、納品・施工実績、検査結果までつながっているか。ここがつながると、請求の説明力が上がります。

特別なシステムがなくても、まずは十分です。「揉めた時に説明できる状態」を日常業務の中につくることが第一歩です。

紛争処理制度は「最後の逃げ道」ではなく、経営の備えです

建設工事紛争審査会は、裁判によらずに、簡易・迅速・妥当に紛争解決を図るための制度です。

もちろん、使わずに済むのが一番です。

ただ、制度を知っておくことには意味があります。万が一、発注者、元請、下請との間で話し合いが進まない時、選択肢を知らないまま感情的な交渉を続けるより、冷静に次の手を考えられるからです。

中小建設業にとって大事なのは、紛争を恐れることではなく、紛争になりにくい経営管理へ近づけることです。

契約前に範囲をそろえる。施工中に変更を残す。完了時に確認を取る。請求時に根拠をつなぐ。

この地味な積み重ねが、利益を守ります。現場を守ります。社員を守ります。

自社の契約・請求管理を一度整理しておく

今回のような紛争処理状況は、どこか遠くの会社のトラブルではありません。建設業の日常にある「言った・言わない」「含む・含まない」「直す・直さない」が、表に出たものです。

もし、自社の契約書、注文書、追加変更、検査記録、請求根拠の残し方について、少しでも気になる点があれば、一度整理してみる価値があります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。契約・請求管理も、単なる書類整備ではなく、ものづくりに集中できる建設業界へ近づくための土台です。

「うちの場合は、まず何から見直すべきか」「今のやり方でどこにリスクがあるのか」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、状況整理の壁打ち先としてご活用ください。

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