国土交通省は、令和8年(2026年)5月分の建設総合統計を公表しました。建設総合統計は、国内の建設活動を「出来高ベース」で把握するための統計です。今回の5月分では、出来高総計が4兆7,998億円、前年同月比5.1%増となりました。

公表内容

建設総合統計 令和8年(2026年)5月分

公表日

令和8年7月17日

出来高総計

4兆7,998億円

前年同月比

5.1%増

民間総計

3兆6,696億円、前年同月比5.5%増

公共総計

1兆1,302億円、前年同月比4.9%増

注意点

金額は名目値。今後、遡及改定される可能性あり

今回の数字は、建設業全体としては民間・公共ともに前年同月を上回っていることを示しています。中小建設業にとっては、「市場が動いている」という前向きな材料です。

一方で、ここで見たいのは売上機会だけではありません。仕事量が増える局面ほど、利益、人員、外注、資金繰りのズレが出やすくなります。 経営者としては、数字を景気判断で終わらせず、自社の受注姿勢に落とし込むことが大切です。

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建設総合統計は「工事量の温度計」として見る

建設総合統計は、建築着工統計調査や建設工事受注動態統計調査をもとに、工事の進み具合に合わせて月ごとの出来高を推計する統計です。

つまり、単なる契約額ではなく、実際にどれだけ工事が進んだかに近い動きを見るための統計です。

中小建設業が見るときのポイントは、細かな数字を読み込むことよりも、まず次の3点です。

  • 全体の出来高が増えているか
  • 民間と公共のどちらが伸びているか
  • 自社の主戦場と同じ方向に市場が動いているか

今回の5月分では、総計が前年同月比5.1%増、民間が5.5%増、公共が4.9%増です。大きく見ると、民間も公共もそろって増加している月といえます。

民間も公共も増加。受注環境は悪くないが、選別が重要になる

民間総計は3兆6,696億円、前年同月比5.5%増でした。公共総計も1兆1,302億円、前年同月比4.9%増です。

この数字だけを見ると、受注環境は悪くないように見えます。特に、民間・公共の両方が前年同月を上回っている点は、幅広い工事需要が動いているサインとして受け止められます。

ただし、中小建設業にとって大事なのは、「仕事があるか」よりも「利益が残る仕事を取れているか」です。

現場が動いている時期は、声がかかる案件も増えます。急ぎの見積依頼も増えます。協力会社の予定も埋まりやすくなります。

そのときに、目先の売上だけで受けると、あとから苦しくなります。

  • 人が足りない
  • 職長が足りない
  • 外注単価が上がる
  • 材料費の読みが外れる
  • 工期が詰まり、追加コストが出る
  • 請求と支払いのタイミングがずれる

こうしたことは、受注が少ない時期よりも、むしろ受注が増えている時期に表面化しやすいです。

市場が動いている今こそ、「どの仕事を取り、どの仕事を無理に追わないか」を決めることが経営判断になります。

名目値の増加は、実感とズレることがある

今回公表された出来高の金額は、資料上、名目値とされています。

ここは重要です。名目値は、価格変動の影響を含みます。つまり、出来高が増えていても、それがそのまま「施工量が大きく増えた」「現場が楽になった」という意味になるとは限りません。

材料費、労務費、外注費、運搬費などが上がっていれば、金額ベースの出来高は増えやすくなります。

中小建設業の経営では、統計上の増加を見たうえで、社内では次の確認が必要です。

  • 売上高は増えているか
  • 粗利率は落ちていないか
  • 人工あたりの利益は確保できているか
  • 追加・変更工事を請求できているか
  • 外注費の上昇を見積に反映できているか

特に、売上が伸びているのに現金が残らない会社は注意が必要です。市場全体の出来高が増える局面では、立替や先行支払いも増えます。売上増と資金繰り改善は、必ずしも同じではありません。

自社で見るべき数字は「受注残」と「施工能力」

今回の統計を受けて、中小建設業が社内で見たいのは、全国の出来高そのものではありません。自社の足元です。

特に確認したいのは、受注残と施工能力のバランスです。

たとえば、次のような見方です。

  • 今後3か月の受注残は、職人・現場監督の人数に対して適正か
  • 協力会社の予定は確保できているか
  • 盆明け以降の工程に空きや過密がないか
  • 粗利率の低い案件で現場が埋まっていないか
  • 追加工事の見積・承認・請求が滞っていないか

仕事量が増える時期は、現場が忙しくなります。事務も忙しくなります。見積、注文書、請求、入金確認、労務安全書類、施工体制台帳。ひとつずつは日常業務でも、積み上がると経営の足を引っ張ります。

だからこそ、「受注を増やす」だけでなく「さばける体制を整える」ことが同じくらい大切です。

今回の数字を、採用・外注・価格交渉の材料にする

建設総合統計は、直接的に自社の売上を約束するものではありません。ただ、経営判断の背景資料として使えます。

たとえば、採用です。

市場全体の出来高が増えているなら、今後も一定の施工需要が続く可能性を見ながら、採用や育成の計画を立てやすくなります。もちろん、無理な採用は禁物です。ただ、人が足りなくなってから採るのでは遅い場面もあります。

外注先との関係も同じです。

忙しい時期ほど、良い協力会社の予定は早く埋まります。単価だけでなく、支払い条件、工程の出し方、現場情報の共有なども含めて、選ばれる元請・一次会社になる工夫が必要です。

価格交渉にも使えます。

名目値で出来高が増えているということは、建設市場全体で金額が動いているということです。原価上昇を自社だけで抱え込むのではなく、見積条件、単価表、追加変更のルールを整える材料にできます。

市場が動いているときほど、価格と条件を曖昧にしない。 これは中小建設業にとって、かなり大事な守り方です。

統計は改定される。だから「方向感」として使う

国土交通省は、建設総合統計について、毎年6月に過去3か年分を遡及改定していること、また基礎統計等の品質改善に対応して遡及改定する場合があることを示しています。

つまり、今回の数値は今後変わる可能性があります。

そのため、経営判断では、1か月分の数字だけで大きく舵を切るよりも、複数月の流れを見ることが大切です。

見るべきは、細かなブレではありません。

  • 民間が継続して強いのか
  • 公共が底堅く推移しているのか
  • 自社の受注単価に変化が出ているのか
  • 協力会社の手配難が強まっているのか
  • 粗利率が市場の動きについていけているのか

統計は、現場の肌感覚を補正する道具です。肌感覚だけでも危うい。統計だけでも足りない。数字と現場感を重ねて見ることが、次の一手を間違えにくくします。

まずは自社の「仕事量・利益・体制」を並べて見る

今回の建設総合統計は、建設市場が引き続き動いていることを示す材料です。中小建設業にとっては、前向きに受け止めたい数字です。

ただし、経営で大事なのは、全国統計を見て終わることではありません。

自社の受注残、粗利、人員、協力会社、資金繰りを同じ表に並べること。 ここから見えるものがあります。

「売上は増えているのに、なぜか楽にならない」 「人は忙しいのに、利益が残りにくい」 「この先の受注をどこまで取りにいくべきか迷う」

こうした状態は、多くの会社で起きます。市場が動いている時期だからこそ、早めに整理しておく価値があります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。ものづくりに集中できる建設業界へ向けて、建設企業の持続的成長を支援しています。

「うちの場合は、この統計をどう見ればいいか」「受注はあるが利益管理に不安がある」「何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、状況整理の壁打ちとしてご活用ください。

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