国土交通省は、令和8年8月20日、各省各庁の長と財務大臣に対して「令和9年度各省各庁営繕計画書に関する意見書」を送付しました。これは、各省庁が予定する官庁施設の新営・修繕などの計画について、国土交通大臣が技術的な見地から意見を述べるものです。

今回、各省各庁から送付された営繕計画書の所要経費を積み上げた総額は、約7,865億円。対前年度比では1.42倍です。中小建設業にとっては、「すぐ目の前の入札案件」というより、令和9年度以降の公共建築・改修工事の温度感を読む資料として見ておきたい発表です。

発表内容

令和9年度各省各庁営繕計画書に関する意見書の送付

送付日

令和8年8月20日

送付者

国土交通大臣

送付先

各省各庁の長及び財務大臣

対象

国家機関の建築物の新営・修繕等に関する営繕計画

令和9年度計画額

約7,865億円

対前年度比

1.42倍

官庁施設の現況

約12,500施設、延べ面積約4,900万㎡

築後30年以上の割合

58.6%(延べ面積割合)

1週間で 15件の相談 がありました

  • 8月24日総合建築京都府高卒採用の相談
  • 8月24日電気設備工事会社岐阜県人材育成の相談
  • 8月24日塗装工事会社福岡県人材確保の相談
  • 8月24日空調設備工事会社兵庫県利益率向上の相談
  • 8月23日外構工事会社栃木県人材育成の相談
  • 8月22日解体工事会社山形県原価管理の相談
  • 8月22日防水工事会社沖縄県人材育成の相談
  • 8月22日総合土木神奈川県利益率向上の相談
  • 8月21日リフォーム会社熊本県利益率向上の相談
  • 8月21日プラント工事会社群馬県人材育成の相談
  • 8月21日空調設備工事会社神奈川県案件獲得の相談
  • 8月21日工務店山口県高卒採用の相談
  • 8月19日塗装工事会社兵庫県人材確保の相談
  • 8月19日プラント工事会社千葉県協力会社探しの相談
  • 8月19日解体工事会社福岡県業務効率化システムの相談
  • 8月18日総合土木愛知県業務効率化システムの相談
  • 8月18日電気設備工事会社京都府原価管理の相談
  • 8月18日工務店東京都業務効率化システムの相談
  • 8月17日塗装工事会社岐阜県利益率向上の相談
  • 8月17日電気設備工事会社神奈川県人材育成の相談
  • 8月17日外構工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
  • 8月17日総合建築大阪府案件獲得の相談
  • 8月16日内装工事会社京都府案件獲得の相談
  • 8月15日リフォーム会社熊本県高卒採用の相談
  • 8月15日工務店宮城県案件獲得の相談
  • 8月15日リフォーム会社群馬県協力会社探しの相談
  • 8月14日電気設備工事会社愛媛県業務効率化システムの相談
  • 8月13日防水工事会社三重県協力会社探しの相談
  • 8月12日総合土木広島県人材育成の相談
  • 8月12日プラント工事会社大阪府協力会社探しの相談
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これは「発注情報」ではなく、公共建築の先行指標です

まず押さえておきたいのは、今回の意見書は、個別工事の入札公告ではないという点です。

各省各庁は、所管する国家機関の建築物について、営繕計画書を財務大臣と国土交通大臣に送付します。国土交通大臣は、それに対して技術的な意見を述べます。

つまり今回の情報は、令和9年度の概算要求に先立つ、官庁施設整備の計画段階の情報です。

現場感覚で言えば、まだ「この工事を取りに行こう」という段階ではありません。けれども、経営者としては見逃せません。

なぜなら、公共工事はある日突然、入札公告だけを見て準備しても間に合わないことがあるからです。

人員。

協力会社。

積算体制。

資格者。

資材調達。

これらは、すぐには整いません。

だからこそ、営繕計画の段階で、国がどこに予算を向けようとしているのかを見ておくことに意味があります。

計画額は約7,865億円、前年度比1.42倍です

今回示された令和9年度の営繕計画額は、合計で約7,865億円です。令和8年度計画額の約5,543億円に対して、1.42倍となっています。

省庁別では、たとえば次のような計画額が示されています。

区分

令和9年度計画額

対前年度比

防衛省

4,017億円

1.86

法務省

924億円

1.12

財務省

748億円

1.52

国土交通省

710億円

0.79

外務省

227億円

1.17

厚生労働省

201億円

1.19

内閣府

194億円

1.11

環境省

182億円

2.83

復興庁

166億円

8.96

もちろん、これは計画額です。今後の予算編成や事業化を経て、実際の発注につながっていきます。

そのため、この数字だけで受注機会が確定したとは言えません

ただし、公共建築・営繕工事に関わる会社にとっては、国の整備需要がどの領域で強まっているかを読む材料になります。

特に、防衛省、法務省、財務省などの計画額が大きい点は、地域によっては庁舎、宿舎、関連施設、改修、設備更新などの発注動向に影響する可能性があります。

背景にあるのは、官庁施設の老朽化です

今回の発表で特に大事なのは、官庁施設の現況です。

国土交通省によると、官庁施設は12,524施設、延べ面積は約49,384千㎡です。

そのうち、築後30年以上のものが、延べ面積割合で58.6%を占めています。

これはかなり大きな数字です。

建設会社の皆さんなら、築30年を超えた建物で何が起きるか、現場で肌感覚として分かるはずです。

外壁。

屋上防水。

空調。

給排水。

電気設備。

耐震。

バリアフリー。

使い方の変化。

「建てた時のまま」では、もう持たない部分が出てきます。

今回の意見書でも、社会的要請として防災・減災対策、老朽化対策、地域社会との連携、環境負荷低減、木材利用などが挙げられています。

中小建設業としては、単なる新築需要だけでなく、改修・更新・長寿命化・設備更新の需要が続く可能性を見ておきたいところです。

中小建設業が見ておきたい3つの実務ポイント

今回の発表から、中小建設業が見ておきたいポイントは3つあります。

1つ目は、公共建築の改修・維持更新に対応できる体制です。

官庁施設は、使いながら直す工事も少なくありません。執務を止められない施設もあります。安全管理、工程調整、仮設計画、近隣対応、夜間・休日対応など、単純な施工力だけではなく、調整力が問われます。

2つ目は、防災・減災、耐震、浸水対策、設備機能確保への理解です。

意見書では、災害応急対策活動に必要な官庁施設について、防災機能強化や、電力・給排水などの基幹設備機能の確保が重要とされています。

これは建築一式だけの話ではありません。電気、管、空調、防水、内装、外構など、専門工事会社にも関わるテーマです。

3つ目は、環境負荷低減や木材利用への対応です。

官庁施設の整備では、再生可能エネルギーの導入、省エネルギー対策、ライフサイクルカーボンの削減、木造化や内装等の木質化が挙げられています。

今後の公共建築では、価格だけでなく、こうした要請への理解や施工実績が、提案力や信頼につながる場面が増えるかもしれません。

「適正な予定価格・工期」の流れも見逃せません

もう1つ、経営者として見ておきたい記載があります。

意見書では、令和6年6月に改正された「担い手3法」を踏まえ、営繕工事の発注者が、適正な予定価格及び工期の設定などにより責務や役割を果たすことができるよう、必要な措置を講じる必要があるとされています。

また、企画立案段階で、官庁施設に求められる機能や規模を踏まえた予算の確保、適正な事業期間の確保のための国庫債務負担行為の活用などにも触れられています。

これは、中小建設業にとって大事な流れです。

資材価格が上がる。

人件費も上がる。

週休2日や時間外労働への対応も進める。

その中で、無理な価格、無理な工期の仕事を続けると、現場も会社も疲弊します。

今回の意見書は、発注者側にも、企画立案段階から適正な予算と事業期間を確保する必要があると示しています。

もちろん、これだけで全ての現場が急に楽になるわけではありません。

ただ、公共工事では「適正な価格と工期」を前提にした発注へ向かう流れが、制度面でも続いていると受け止めてよい内容です。

受注側も、見積、原価、工程、人員配置をきちんと説明できる会社であることが、より大切になります。

これから確認したいこと

今回の発表を受けて、各社で確認したいのは次の点です。

  • 自社の営業エリアに、国の官庁施設や関連施設がどれくらいあるか
  • 過去に国や独立行政法人等の建築・設備・修繕工事を受けた実績があるか
  • 建築、電気、管、防水、内装、外構など、どの分野で改修需要に対応できるか
  • 公共工事の積算、入札、施工管理、安全書類に対応できる人員がいるか
  • 発注見通しが出た時に、協力会社と早めに組める関係があるか

特に、公共建築の改修工事は、規模が大きいものだけではありません。

地域の中小企業が関われる修繕、設備更新、内装改修、防水、外構、解体を伴う更新工事などもあります。

大切なのは、国の大きな計画を、自社の地域・業種・施工能力に落として見ることです。

「7,865億円」という数字だけを見ると遠く感じます。

でも、その中には、地域の現場につながる小さな工事も含まれていく可能性があります。

まずは発注見通しと自社の得意工事を結びつける

今回の意見書は、今すぐ入札する資料ではありません。

けれども、来年度以降の公共建築・営繕工事を考えるうえで、かなり大事な予兆です。

官庁施設は老朽化しています。

防災機能も求められます。

環境対応も求められます。

そして、適正な価格と工期への流れも続いています。

中小建設業としては、まず自社の得意工事を整理したいところです。

「うちは小回りの利く改修が強い」

「設備更新なら協力会社と組める」

「公共工事の書類対応に慣れている」

「元請ではなく、専門工事として入りやすい」

こうした強みを、地域の発注見通しや省庁施設の動きと結びつけることが、次の一手になります。

公共建築の流れを先に見て、準備できる会社が、無理のない受注に近づきます。

自社への影響を整理したいときは

今回のような営繕計画は、数字が大きい分、「結局うちに関係あるのか」が見えにくい情報でもあります。

そんな時は、まず自社のエリア、工種、公共工事の経験、協力会社体制、積算・原価管理の状況を並べてみるだけでも、次に見るべき発注情報が絞れてきます。

ネクスゲートでは、建設企業の持続的成長を支援する立場から、販路拡大、資金調達、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで、現場と経営を横断して整理するお手伝いをしています。

「うちの場合は、公共建築の流れをどう見ればいいか」「発注見通しを見る前に、何を整えておくべきか」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、必要な整理先として使ってください。

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