国土交通省大臣官房官庁営繕部は、令和8年8月7日、株式会社東京エネシスに対して指名停止措置を行いました。対象は、官庁営繕部の発注する工事です。期間は令和8年8月7日から令和8年10月6日までの2か月です。
指名停止措置業者 | 株式会社東京エネシス |
住所 | 東京都中央区日本橋茅場町一丁目3番1号 |
指名停止期間 | 令和8年8月7日から令和8年10月6日まで |
指名停止の範囲 | 官庁営繕部の発注する工事 |
措置理由に関係する事案 | 群馬県上野村発注の村営住宅への太陽光発電設備設置工事に関する指名競争入札 |
概要 | 社員が、上野村職員から非公表の設計金額を入手し落札したとして、公競売入札妨害の疑いで逮捕されたもの |
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今回のポイントは「官庁営繕部の工事」への指名停止です
今回の措置は、国土交通省大臣官房官庁営繕部によるものです。
指名停止の範囲は、「官庁営繕部の発注する工事」とされています。すべての公共工事から一律に排除されるという発表ではありませんが、官庁営繕部案件に関わる会社にとっては重い措置です。
期間は、令和8年8月7日から令和8年10月6日までです。
根拠として示されているのは、「官庁営繕部所掌の工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」の別表第2第8号イです。内容は、公契約関係競売等妨害又は談合に関するものです。
中小建設企業にとって重要なのは、会社の規模ではありません。公共工事に関わる以上、入札に関する不適切な情報取得は、受注機会そのものを失う経営リスクになるという点です。
「非公表の設計金額」は、絶対に踏み越えてはいけない線です
今回の事実概要では、群馬県上野村が発注した村営住宅への太陽光発電設備設置工事の指名競争入札において、社員が村職員から非公表の設計金額を入手し、落札したとして、令和8年6月16日に群馬県警に逮捕されたとされています。
公共工事の営業では、発注者との接点があります。現場説明、仕様確認、質疑応答、過去工事の相談。日々のやり取りのなかで、発注者との関係性ができていきます。
ただし、そこで越えてはいけない線があります。
非公表情報を聞かない。求めない。受け取らない。社内で使わない。
この4つは、公共工事に関わる会社の基本動作です。
特に設計金額、予定価格、最低制限価格、他社の入札意向、評価に関わる内部情報などは、会社の売上を伸ばすための「情報」ではありません。受け取った瞬間に、会社を危うくする火種になります。
中小企業ほど「個人任せ」にしないほうがよいです
中小建設企業では、営業、積算、現場、経営者の距離が近いです。これは強みです。判断が速い。現場感もある。発注者との信頼関係も作りやすい。
一方で、公共工事の入札コンプライアンスでは、この近さが弱点になることもあります。
たとえば、次のような状態です。
- 発注者対応を特定の担当者だけに任せている
- 入札前の接触ルールが明文化されていない
- 「どこまで聞いてよいか」が担当者の感覚に任されている
- 積算資料や入札関連資料の保管ルールが曖昧
- 不自然な情報を得たときの報告先が決まっていない
この状態では、悪意がなくても危うい場面が生まれます。
大事なのは、担当者を疑うことではありません。担当者を守るために、会社として線引きを言語化することです。
「これは聞いてはいけない」 「聞かれても答えてはいけない」 「相手から言われたら、その場で会話を止めて上司に報告する」
このくらい具体的に決めておくと、現場の判断が楽になります。
公共工事を続ける会社は、入札前後の記録を残したいです
今回のような指名停止措置を見ると、改めて感じるのは、公共工事の信用は、受注実績だけでなく、手続きの透明性で守られるということです。
実務では、次のような管理が有効です。
- 発注者との面談・電話・メールの記録を残す
- 入札前の質疑は、原則として公式な手続きで行う
- 口頭で重要情報を得た場合は、社内で共有し、使用可否を確認する
- 積算根拠を後から説明できるように保存する
- 入札関連の社内承認ルートを明確にする
これは大企業だけの話ではありません。
むしろ中小企業ほど、記録が経営を守ります。担当者が少ないからこそ、記憶に頼りがちです。しかし、公共工事では「どういう経緯でその金額になったのか」を後から説明できる状態が大切です。
利益を守る積算力と、信用を守る記録力。両方が公共工事の競争力になります。
太陽光設備工事という点も見ておきたいです
今回の対象事案は、村営住宅への太陽光発電設備設置工事です。
再エネ、省エネ、公共施設の脱炭素化に関する工事は、今後も各地で一定の発注が見込まれる分野です。電気工事、設備工事、建築工事、改修工事に関わる会社にとって、公共案件の機会は広がる可能性があります。
だからこそ、新しい需要分野に入るほど、入札ルールと社内管理をセットで整える必要があります。
案件が増える局面では、営業も忙しくなります。積算も詰まります。協力会社との調整も増えます。そのなかで、「早く取りたい」「何とか落としたい」という空気が強くなることがあります。
受注意欲は大事です。
ただ、公共工事では、受注意欲が強い会社ほど、ルールの確認も強くしておく必要があります。攻めるために、守りを整える。これは経営の実務です。
自社で確認しておきたい3つのこと
今回の発表を受けて、中小建設企業が確認したいことは大きく3つです。
1つ目は、入札前の発注者接触ルールです。
誰が、いつ、どのような目的で発注者と接触するのか。質疑はどのルートで行うのか。非公表と思われる情報を得た場合にどうするのか。ここを明文化しておきたいです。
2つ目は、積算根拠の保存です。
入札金額がどの資料、どの数量、どの単価、どの判断で決まったのか。後から見ても説明できるようにしておくことが重要です。
3つ目は、社員教育の定期化です。
難しい研修でなくても構いません。公共工事に関わる社員に対して、「非公表情報を扱わない」「疑わしい情報は上司に報告する」「入札に関わる会話は記録する」といった基本を繰り返し確認するだけでも、会社の安全度は変わります。
公共工事の信用は、日々の小さなルールで守られます。
自社の入札管理を一度整理する機会に
指名停止のニュースは、他社の出来事として流してしまいがちです。ただ、公共工事に関わる会社にとっては、自社のルールを見直す良い機会でもあります。
「うちの発注者対応は、どこまで記録できているか」 「積算根拠は、後から説明できる状態か」 「若手や新任担当者に、入札で聞いてはいけない情報を伝えられているか」
こうした確認は、会社を縛るためではありません。安心して受注活動を続けるための土台づくりです。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。公共工事の入札管理や社内ルールについても、「うちの場合は何から整えるべきか」という段階から一緒に整理できます。
無理な営業はいたしません。建設業界の経営者の懐刀として、ものづくりに集中できる建設業界へ向けた整理先として使っていただければと思います。
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