国土交通省は、令和8年7月分の「建設工事受注動態統計調査報告」を公表しました。7月の建設工事受注高は10兆9,346億円、前年同月比2.9%増となり、4か月連続で増加しました。一方で、内訳を見ると、元請受注高は1.4%減、下請受注高は12.3%増です。表面上は市場全体が伸びていますが、中小建設業にとっては「どこで仕事が増えているのか」を分けて読む必要があります。
公表資料 | 建設工事受注動態統計調査報告(令和8年7月分) |
公表日 | 令和8年9月10日 |
7月の受注高 | 10兆9,346億円 |
前年同月比 | 2.9%増、4か月連続の増加 |
元請受注高 | 7兆1,398億円、前年同月比1.4%減 |
下請受注高 | 3兆7,948億円、前年同月比12.3%増 |
公共機関からの元請受注 | 2兆1,428億円、前年同月比0.9%減 |
民間等からの元請受注 | 4兆9,969億円、前年同月比1.6%減 |
目立つ動き | 職別工事業30.9%増、設備工事業7.8%増 |
1週間で 21件の相談 がありました
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全体は増えているが、経営者が見るべきは「元請減・下請増」です
今回の統計で最初に押さえたいのは、総受注高は増えているものの、元請受注は減っているという点です。
7月の受注高全体は10兆9,346億円で、前年同月比2.9%増でした。建設市場全体としては、数字上は底堅く見えます。しかし、元請受注高は7兆1,398億円で前年同月比1.4%減、4か月連続の減少です。一方、下請受注高は3兆7,948億円で前年同月比12.3%増、こちらは4か月連続の増加となっています。
中小建設企業にとって、この構図はかなり重要です。仕事量そのものは出ているが、元請として直接受ける仕事よりも、下請・協力会社として流れてくる仕事が増えている可能性があります。
これは悪い話だけではありません。専門性のある会社、施工力のある会社、職人をしっかり抱えている会社には、声がかかりやすい環境とも読めます。ただし、下請受注が増える局面では、同時に次の点を慎重に見たいところです。
- 粗利率が落ちていないか
- 人工単価・外注単価の上昇を見積に反映できているか
- 短納期・工程変更のしわ寄せを受けていないか
- 受注残は増えているのに、資金繰りが苦しくなっていないか
「受注が増えたから安心」ではなく、受注の中身が利益になる仕事かどうかを見直すタイミングです。
職別工事業と設備工事業の伸びは、中小・専門工事会社にとって大きなサインです
業種別では、かなりはっきりした差が出ています。
業種 | 7月受注高 | 前年同月比 |
|---|---|---|
総合工事業 | 5兆6,149億円 | 6.2%減 |
職別工事業 | 1兆8,342億円 | 30.9%増 |
設備工事業 | 3兆4,855億円 | 7.8%増 |
特に目を引くのは、職別工事業が30.9%増、設備工事業が23か月連続の増加という点です。総合工事業が前年同月比で減少している一方で、専門工事・設備系の受注は伸びています。
これは、中小建設業にとってかなり実務的な意味があります。建築・土木の元請案件が単純に拡大しているというより、専門工事、設備、改修、更新、部分施工の需要が厚くなっている可能性があります。
また、資本金階層別でも注目すべき数字があります。資料では、3億円以下の法人の受注高は7兆2,324億円、前年同月比14.6%増となっています。さらに、3億円以下法人の下請受注高は前年同月比25.0%増です。
つまり今回の統計は、単に大手の大型案件が伸びたというより、中小規模の法人にも受注が回っている局面として読めます。
ただし、ここでも大切なのは「忙しさ」と「利益」は別物だということです。職別・設備で仕事が増えると、人員の取り合い、材料手配、現場管理者の不足が起きやすくなります。伸びている市場ほど、採算管理と施工体制の差が出ます。
公共工事は横ばいに近いが、地方機関と維持補修は見ておきたい領域です
公共機関からの受注については、見方を少し分ける必要があります。
元請受注高のうち、公共機関からの受注は2兆1,428億円、前年同月比0.9%減でした。一方で、公共機関からの受注工事、つまり1件500万円以上の工事額では、2兆390億円、前年同月比1.4%増となっています。
発注機関別では、国の機関が3,962億円で前年同月比3.2%減、地方の機関が1兆6,428億円で前年同月比2.6%増です。
区分 | 7月受注工事額 | 前年同月比 |
|---|---|---|
公共機関合計 | 2兆390億円 | 1.4%増 |
国の機関 | 3,962億円 | 3.2%減 |
地方の機関 | 1兆6,428億円 | 2.6%増 |
工事分類別では、受注工事額が多いものとして、道路工事4,095億円、教育・病院4,010億円、その他2,175億円が挙げられています。また、維持補修は再掲で5,427億円、前年同月比14.3%増です。
中小建設企業が見るべきポイントは、地方自治体発注、道路、教育・病院、維持補修です。これらは地域建設会社にとって比較的接点を持ちやすい領域です。
公共工事については、単価、技術者配置、入札参加資格、地域要件、工期など、受注までの準備がものを言います。数字が出てから慌てて追いかけるというより、自社の地域でどの発注者が、どの分類の工事を継続的に出しているかを見ておくことが重要です。
民間は「大型建築は増、土木・機械装置は減」と分かれています
民間等からの受注は、全体で見ると元請受注高が4兆9,969億円、前年同月比1.6%減でした。5か月連続の減少です。
ただし、民間の中でも分野によって動きが大きく分かれています。
建築工事・建築設備工事、これは1件5億円以上の工事ですが、7月の受注工事額は1兆3,972億円、前年同月比22.1%増でした。工事種類別では、受注額が多い順に工場・発電所4,063億円、事務所2,491億円、住宅2,360億円です。
一方、土木工事及び機械装置等工事、こちらは1件500万円以上の工事で、7月の受注工事額は9,535億円、前年同月比20.3%減でした。3か月連続の減少です。
民間等の区分 | 7月受注工事額 | 前年同月比 |
|---|---|---|
建築工事・建築設備工事(1件5億円以上) | 1兆3,972億円 | 22.1%増 |
土木工事及び機械装置等工事(1件500万円以上) | 9,535億円 | 20.3%減 |
ここから読めるのは、民間投資は一枚岩ではないということです。大型の建築・建築設備では伸びが見られる一方、土木・機械装置等では減少しています。
中小建設業の実務に落とすなら、民間営業では「民間が増えているか減っているか」だけでなく、発注者の業種と工事種類を分けて見ることが大切です。今回の資料では、建築工事・建築設備工事で、製造業の「工場・発電所」、電気・ガス・熱供給・水道業の「工場・発電所」などが大きな受注額として示されています。
自社が設備、電気、管、内装、外構、鉄骨、土工、機械据付などに関わる場合、どの発注者の設備投資が動いているかを営業リストや協力先の開拓に反映したいところです。
中小建設企業は「受注量」より「受注の質」を見る局面です
今回の数字を中小建設業の経営に引き寄せると、見るべきポイントは明確です。
まず、元請が減り、下請が増えている局面では、価格交渉力と工程管理力が会社の利益を左右します。 忙しいのに利益が残らない会社は、ここで差がつきます。
次に、職別工事業・設備工事業の伸びは、人材確保と協力会社網の価値が高まっているサインです。施工力を持つ会社には仕事が集まりやすい一方、現場代理人、職長、若手職人、協力会社の確保が追いつかなければ、受けたくても受けられない状況になります。
そして、公共は地方機関、道路、教育・病院、維持補修を継続的に見ることです。特に地域密着の会社にとっては、派手な大型案件よりも、継続的に出る維持補修や施設関連工事のほうが、経営の安定につながる場合があります。
最後に、民間については、大型建築・建築設備の伸びを、自社の専門分野にどうつなげるかです。元請でなくても、一次・二次協力会社として入る余地があるか。既存取引先の先に、どの業種の設備投資があるか。ここを見ておくと、営業の打ち手が具体化します。
いま社内で確認したい4つのこと
この統計を見た後、社内で確認したいことは次の4つです。
1つ目は、直近の受注残を、元請・下請・公共・民間に分けて見ることです。合計金額だけでは判断できません。どの受注が利益を生み、どの受注が資金繰りを圧迫しているかを分ける必要があります。
2つ目は、職種別・工種別の稼働率を確認することです。職別・設備が伸びている局面では、特定の職種だけが過密になります。現場の「なんとか回している」は、長く続くと事故、品質低下、離職につながります。
3つ目は、見積単価の更新です。労務費、外注費、材料費、運搬費、現場管理コストが変わっているのに、昔の感覚で見積を出していないか。これは早めに点検したいところです。
4つ目は、営業先の見直しです。公共なら地方機関や維持補修、民間なら工場・発電所、事務所、設備関連など、今回の統計で動きが見える領域があります。自社の得意工種と重なるところから、営業の優先順位を組み替える価値があります。
受注環境は、単純に「良い」「悪い」では読めません。今回の令和8年7月分は、全体は増えているが、元請・総合工事業は弱く、下請・職別・設備が強いという、かなり特徴のある月です。だからこそ、自社の立ち位置を冷静に見れば、次の一手は見えてきます。
自社の受注構造を一度整理してみる
今回の統計は、全国全体の数字です。大切なのは、この数字をそのまま自社に当てはめることではなく、「うちの会社では、どの動きが関係しそうか」を整理することです。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。受注はあるのに利益が残りにくい、協力会社の確保が難しい、見積や原価管理を見直したい、公共と民間の比率を考え直したい。そうした段階でも、状況を一緒に整理できます。
「うちの場合はどう考えるべきか」「何から見直せばよいかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、受注環境を自社の経営にどう落とし込むかを考える場として、必要であればご相談ください。





























