国土交通省は、令和8年熊本地震の被害者が有する国土交通省所管の許可等について、有効期間延長の対象となる許可等、対象者、延長後の満了日を定める告示を公布しました。
建設業に関係するものとしては、建設業許可、監理技術者資格者証、経営事項審査、測量業者登録、建築士事務所登録、指定給水装置工事事業者の指定、浄化槽工事業登録、解体工事業登録、建設コンサルタント登録、地質調査業者登録、補償コンサルタント登録、建設機械に関する登記上の扱いなどが含まれています。
発表内容 | 令和8年熊本地震の被害者が有する国土交通省所管の許可等について、有効期間延長の対象を告示 |
根拠 | 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律等 |
対象となる満了日 | 令和8年7月28日以後に満了する許可等 |
建設業への主な関係対象 | 建設業許可、監理技術者資格者証、経営事項審査、解体工事業登録、測量業者登録、建築士事務所登録など |
延長後の満了日 | 告示で指定された多くの許可等は令和9年1月27日 |
履行期限の特例 | 令和8年7月28日以後に到来する変更届等の義務について、地震により履行できなかったと認められる場合、令和8年11月27日までに履行すれば行政上・刑事上の責任を問われない場合あり |
自動車検査証 | 熊本県に使用の本拠を有し、車検満了日が令和8年7月29日から8月28日までの車両は、令和8年8月31日まで有効期間を伸長 |
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建設業にとって重要なのは「許可切れ扱いを避けるための保全措置」です
今回の告示は、新しい補助金や支援金の話ではありません。主眼は、地震の影響で通常どおりの更新・申請・届出ができない被災者について、行政上の権利利益を失わないようにすることです。
中小建設業にとっては、ここが非常に重要です。
建設業許可や経営事項審査、監理技術者資格者証は、日々の受注活動や公共工事への参加、元請・発注者からの信用確認に直結します。形式上の期限が過ぎているように見えると、実態としては延長措置の対象であっても、取引先や発注者側で確認に時間がかかる可能性があります。
そのため、今回の告示は単に「期限が延びた」という話ではなく、自社が事業を止めずに説明できる状態を整えるための情報として読む必要があります。
建設会社がまず確認したい対象項目
告示には多くの許可・登録等が列挙されていますが、建設会社が特に確認したいものは次の領域です。
区分 | 主な対象 | 対象者の考え方 | 延長後の満了日 |
|---|---|---|---|
建設業許可 | 建設業法第3条第1項に基づく建設業の許可 | 特定被災地域内に主たる営業所を有する者 | 令和9年1月27日 |
技術者資格 | 監理技術者資格者証の交付 | 特定被災地域内に住所を有する者 | 令和9年1月27日 |
公共工事関係 | 経営事項審査 | 特定被災地域内に主たる営業所を有する者 | 令和9年1月27日 |
建設関連業 | 測量業者登録、建設コンサルタント登録、地質調査業者登録、補償コンサルタント登録など | 特定被災地域内に主たる営業所等を有する者 | 令和9年1月27日 |
専門工事・関連登録 | 解体工事業登録、浄化槽工事業登録、指定給水装置工事事業者の指定など | 特定被災地域内に主たる営業所・事業所等を有する者 | 令和9年1月27日 |
建設機械 | 建設機械抵当法に基づく建設機械の登記用紙の閉鎖がされないこと | 災害救助法が適用された区域に住所を有する登記名義人 | 令和9年1月27日 |
ここでいう特定被災地域は、告示上、令和8年熊本地震に際して災害救助法が適用された市町村の区域とされています。
つまり、確認の順番は次のとおりです。
- 自社の主たる営業所・事業所・技術者住所が特定被災地域に該当するか
- 対象となる許可・登録・資格者証・経審の満了日が令和8年7月28日以後か
- 告示に自社が関係する権利利益が掲載されているか
- 延長後の満了日がいつになるか
- 指定対象外でも、申出により延長が認められる余地があるか
特に、許可・経審・資格者証は社内の管理部門だけでなく、営業、入札、現場配置にも影響します。「誰が知っているか」ではなく「会社として説明できるか」が大切です。
変更届などを出せなかった場合の扱いも確認が必要です
今回の発表では、有効期間の延長だけでなく、変更届などの履行期限に関する特例にも触れられています。
具体的には、令和8年7月28日以後に法令上の履行期限が到来する義務について、令和8年熊本地震によって履行できなかったことが認められる場合、令和8年11月27日までに履行すれば、行政上および刑事上の責任を問われないとされています。
建設会社で想定されるのは、たとえば次のような管理です。
- 役員、営業所、専任技術者などに関する変更届
- 許可・登録に関する更新や変更手続き
- 技術者資格や登録関係の期限管理
- 関連会社・協力会社の登録状況確認
もちろん、どの届出・義務が対象になるかは個別の制度ごとに確認が必要です。ただ、経営上は、「地震で提出できなかったものを後回しにする」のではなく、「いつまでに何を出すか」を一覧化することが現実的です。
車両を使う会社は車検証の伸長も別枠で確認したいところです
建設業では、現場車両、ダンプ、作業車、営業車など、車両が止まると現場対応に影響します。
今回の発表では、自動車検査証については別途、道路運送車両法に基づき有効期間が伸長されていることも示されています。
九州運輸局の資料では、熊本県に使用の本拠を有する車両のうち、自動車検査証の有効期間の満了日が令和8年7月29日から8月28日までのものについて、令和8年8月31日まで有効期間を伸長するとされています。
また、対象車両については、有効期間の伸長による自動車検査証の記載変更手続きは不要とされています。
一方で、自賠責保険・共済については、契約先の代理店等への確認が必要です。現場車両が多い会社ほど、車検満了日、使用の本拠、保険期間を車両台帳で確認することが重要になります。
発注者・元請・金融機関に説明できる形にしておく
今回のような延長措置では、法的には権利が保全されていても、実務では相手先から確認を求められることがあります。
特に中小建設業では、公共工事、民間元請、金融機関、保険会社、リース会社などに対して、許可や経審、車両、技術者資格の有効性を説明する場面が出てくる可能性があります。
そのため、社内では次のような資料をまとめておくとよいです。
- 国土交通省の報道発表ページURL
- 該当する告示のPDF
- 自社の許可番号・登録番号・経審結果通知書・資格者証の満了日一覧
- 自社所在地や営業所所在地が対象地域に該当することを確認できる資料
- 更新・届出をいつ行う予定かの社内管理表
ここで重要なのは、更新や届出を先延ばしするためではありません。事業継続のために、社外に対して落ち着いて説明できる状態をつくることです。
「期限が延びた」後に、管理体制を立て直す
災害時には、現場対応、従業員の安全確認、資材・機材の確保、顧客対応が優先されます。その中で、許可や登録の管理まで平常時どおりに進めるのは簡単ではありません。
だからこそ、今回の延長措置は、被災企業にとって重要な時間的猶予になります。
ただし、猶予は最終的な免除ではありません。延長後の満了日や履行期限までに、更新・届出・確認を済ませる必要があります。
中小建設業の経営としては、次の3点を早めに整理しておくことをおすすめします。
- 許可・登録・資格者証・経審の期限一覧を更新する
- 地震の影響で未提出・未更新になっている手続きを洗い出す
- 発注者や元請に説明が必要な案件を先に確認する
今回の発表は、被災企業を形式的な期限切れから守るための措置です。同時に、会社側には、延長措置を正しく理解し、次の期限までに体制を戻していくことが求められます。
許可・経審・技術者・車両の管理は、平時には総務的な業務に見えますが、災害時には事業継続そのものを支える基盤になります。
自社への影響を整理するために
今回のような制度対応は、「自社が対象になるのか」「発注者にどう説明すればよいのか」「許可・経審・車両・技術者をどの順番で確認すべきか」が見えにくくなりがちです。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような許可・登録管理や災害時の事業継続対応についても、まずは「うちの場合は何から確認すべきか」を整理するところからで十分です。
無理な営業はいたしませんので、必要であれば状況整理の壁打ち先としてご活用ください。

































