国土交通省は、令和8年7月31日、「国土交通省土木工事の脱炭素アクションプラン」を改定したと公表しました。令和7年4月に公表されたアクションプランについて、最新の取組状況を踏まえ、新たに鋼材のロードマップを追加したものです。
発表内容 | 国土交通省土木工事の脱炭素アクションプランの改定 |
公表日 | 令和8年7月31日 |
対象 | 国土交通省が発注する道路、治水等の直轄土木工事 |
主な改定内容 | 鋼材のロードマップの追加等 |
中小建設業の見どころ | 建設機械、ICT施工、低炭素型コンクリート、グリーン鉄、GHG排出量算定が公共工事の調達・評価に関わってくる流れ |
今回のポイントは、単に「環境に配慮しましょう」という話ではありません。公共工事の発注・評価・資材選定の中に、脱炭素が少しずつ組み込まれていくという話です。
すぐに全ての中小建設会社が大きな設備投資を迫られる、という内容ではありません。けれども、直轄工事で試行され、地方公共団体の工事にも情報発信されていく流れです。公共工事を受けている会社、または元請・下請として関わる会社は、早めに見ておきたい内容です。
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今回の改定で一番見ておきたいのは「鋼材」です
今回の主な改定内容として示されたのは、鋼材のロードマップの追加です。
国土交通省は、鋼材について、製造時に多くのCO2を排出する資材だと整理しています。そのうえで、革新的な電炉や水素還元など、鉄鋼製造プロセスの転換によってCO2排出量を削減した鋼材、いわゆるグリーン鉄の活用を進める方針を示しました。
ロードマップでは、令和8年度、つまり2026年度より、経済産業省と連携して直轄工事で試行工事を実施し、順次対象を拡大するとされています。そして、2030年度以降の公共工事における本格活用を見据える内容です。
現場感覚で見ると、これは「材料指定が増えるかもしれない」という話です。鋼材そのものを扱う会社だけではありません。土木工事、橋梁、河川、道路附属物、基礎、仮設、製作物に関わる会社にも波及する可能性があります。
もちろん、現時点で全ての工事に義務化されるとは書かれていません。ですが、公共工事で使われる材料の“安い・早い・強い”に、“CO2が少ない”という物差しが加わる方向は、かなりはっきりしています。
建設機械は「燃費」「電動化」「次世代燃料」「施工効率」が軸です
建設機械については、直接的なCO2排出に関わるものとして、重点的に整理されています。
主な方向性は、次の4つです。
- 燃費基準達成建設機械の活用
- GX建設機械、つまり電動建機等の普及・導入促進
- バイオ燃料や合成燃料など、軽油代替燃料の活用促進
- ICT施工、ICT施工StageII、チルトローテータ等による施工効率化
特に実務で見ておきたいのは、燃費基準達成建設機械です。アクションプランでは、次期の2030年基準を2027年4月から発効するとされています。また、燃費基準達成建設機械の認定型式のうち、油圧ショベルについて、2030年度頃を目途に直轄工事で使用原則化する方針が示されています。
中小建設会社にとっては、ここが悩ましいところです。
「まだ使える機械を、今すぐ買い替えるべきか」 「リースで対応できるのか」 「元請から指定が来るのか」 「積算や単価に反映されるのか」
こうした問いが出てきます。
現時点では、慌てて一斉更新する話ではありません。ただし、今後の機械更新やリース契約では、燃費基準・GX建設機械認定・直轄工事での使用可能性を確認する視点が必要になります。
ICT施工は脱炭素の文脈でも進みます
今回のアクションプランでは、ICT施工も脱炭素の施策として位置づけられています。理由はシンプルです。施工時間の短縮や手戻り削減により、建設機械の稼働を減らせるからです。
アクションプランでは、令和7年度より、直轄工事において土工及び河川浚渫工からICT施工を原則化し、その他の工種にも順次拡大するとされています。
さらに、建設機械の位置情報、稼働状況、施工履歴などをリアルタイムに集約して活用するICT施工StageIIの普及促進も盛り込まれています。
ここで大事なのは、ICT施工が「大手だけの最新技術」ではなくなってきている点です。公共工事に参加するための基本装備に近づいていると見た方が自然です。
測量、出来形管理、施工履歴、機械稼働の見える化。最初は面倒に感じます。現場のベテランから「紙と経験で十分だ」という声も出ます。それでも、発注者側の評価軸が変われば、現場側も変わらざるを得ません。
コンクリートも「低炭素型」が試行から原則化へ向かいます
コンクリートについては、セメントの一部を高炉スラグ微粉末やフライアッシュに置き換える製品、CO2を固定・吸収する技術などが挙げられています。
アクションプランでは、現行のグリーン購入法に基づく特定調達品目よりも高い置換率、55%以上の製品について、試行工事で市場性等を検証するとされています。その後、用途等を指定して使用を原則化し、対象拡大や置換率の引き上げも検討するとされています。
これは、生コン会社や資材メーカーだけの話ではありません。施工会社側にも、配合、強度発現、施工性、養生、供給体制、単価、納期の確認が必要になります。
特に中小建設会社では、材料の変更が現場の段取りに直結します。低炭素型資材は、環境対応であると同時に、品質管理と工程管理のテーマとして見ておく必要があります。
GHG排出量算定は、将来の評価項目になる可能性があります
もう一つ、見落としたくないのがGHG排出量算定です。
アクションプランでは、GHG排出量算定手法を検討し、GHG排出量算定マニュアルを策定し、工事で算定の試行を行うとされています。そのうえで、表彰制度や工事成績評定等のインセンティブを付与し、受発注者の理解が浸透した後に、総合評価等でのインセンティブ付与を検討するとされています。
つまり、将来的には、脱炭素の取組が「会社の姿勢」だけではなく、工事成績や総合評価に関係する可能性があります。
中小企業にとっては、ここが一番実務的です。
必要になるのは、難しい環境レポートをいきなり作ることではありません。まずは、工事ごとに次のような情報を残せる体制です。
- どの建設機械を使ったか
- 稼働時間や燃料使用量をどこまで把握できるか
- どの資材を使ったか
- 低炭素型資材や認定機械を使った場合、その証明書類を保管できるか
- 元請、協力会社、リース会社、資材会社との間で情報を集められるか
脱炭素対応は、最後は書類とデータの管理に落ちてきます。 ここは、規模の大小に関係なく差が出ます。
中小建設会社は、何から始めるとよいか
今回の改定を受けて、いきなり大きな投資を決める必要はありません。むしろ、最初にやるべきことは整理です。
まず、公共工事への関わり方を確認します。直轄工事を直接受けているのか。地方公共団体工事が中心なのか。元請なのか、下請なのか。建機を自社保有しているのか、リース中心なのか。資材を自社で手配するのか、元請指定なのか。
次に、今後の更新タイミングを見ます。建設機械の買い替え、リース更新、ICT機器の導入、原価管理システムの見直しは、脱炭素対応と一緒に考えた方が無駄が少なくなります。
そして、協力会社や仕入先との会話を始めます。
「この機械は燃費基準達成建設機械ですか」 「GX建設機械の扱いはありますか」 「低炭素型コンクリートは供給できますか」 「グリーン鉄の証明や供給体制はどうなりそうですか」
こうした会話を早めにしておく会社は、発注条件が変わった時に慌てにくくなります。
脱炭素は、環境部門だけの話ではありません。公共工事の営業、見積、原価、機械、購買、現場管理がつながる経営テーマになっていきます。
自社への影響を一度整理しておく
今回のアクションプランは、すぐに全社一律で義務が増えるというより、公共工事のルールが少しずつ変わっていく予告編に近い内容です。だからこそ、早めに自社への影響を整理しておくと、次の一手が打ちやすくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。脱炭素対応も、単独の環境対応ではなく、機械更新、公共工事戦略、原価管理、ICT施工、協力会社管理とつながっています。
「うちの場合は、何から見ればよいか」「直轄工事ではないが、地方公共団体工事にも影響するのか」「機械更新やICT対応と一緒に考えたい」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、情報整理の壁打ちとしてお気軽にご相談ください。





























