国土交通省は、令和8年度「2050先導型住宅推進事業」について、53件の応募の中から27件のプロジェクトを採択したと発表しました。自然災害時などでも、居住継続・生活継続が可能な住宅ストックを形成するため、民間事業者等による先導的なモデル事業を支援するものです。
発表日 | 令和8年7月30日 |
事業名 | 2050先導型住宅推進事業 |
募集期間 | 令和8年5月28日から6月25日まで |
応募件数 | 53件 |
採択件数 | 27件 |
事業主体 | 民間事業者等 |
補助額 | 50万円/戸(定額) |
対象住宅 | 新築住宅・既存住宅。注文住宅、分譲住宅、賃貸住宅も対象 |
今後の募集 | 2回目以降の募集は検討中 |
今回の発表は、単なる採択結果にとどまりません。住宅会社、地域工務店、専門工事会社にとっては、これから住宅に求められる「防災性能」の中身が、かなり具体的に見えてきた発表です。
1週間で 16件の相談 がありました
- 7月30日造園会社島根県案件獲得の相談
- 7月29日解体工事会社山口県人材育成の相談
- 7月29日電気設備工事会社大阪府案件獲得の相談
- 7月29日空調設備工事会社北海道人材育成の相談
- 7月28日総合建築北海道高卒採用の相談
- 7月28日工務店神奈川県業務効率化システムの相談
- 7月27日総合土木千葉県利益率向上の相談
- 7月26日塗装工事会社神奈川県案件獲得の相談
- 7月26日工務店兵庫県案件獲得の相談
- 7月25日解体工事会社東京都業務効率化システムの相談
- 7月25日総合建築茨城県高卒採用の相談
- 7月25日内装工事会社東京都利益率向上の相談
- 7月24日造園会社岐阜県案件獲得の相談
- 7月24日空調設備工事会社愛知県案件獲得の相談
- 7月24日防水工事会社兵庫県高卒採用の相談
- 7月24日塗装工事会社愛知県案件獲得の相談
- 7月23日電気設備工事会社愛知県高卒採用の相談
- 7月23日工務店埼玉県人材育成の相談
- 7月23日防水工事会社和歌山県人材育成の相談
- 7月23日配管工事会社愛知県業務効率化システムの相談
- 7月20日外構工事会社山口県協力会社探しの相談
- 7月20日電気設備工事会社群馬県高卒採用の相談
- 7月20日総合建築千葉県利益率向上の相談
- 7月19日解体工事会社栃木県案件獲得の相談
- 7月18日空調設備工事会社福井県高卒採用の相談
- 7月18日リフォーム会社大阪府業務効率化システムの相談
- 7月18日内装工事会社東京都案件獲得の相談
- 7月18日リフォーム会社千葉県人材育成の相談
- 7月17日塗装工事会社栃木県協力会社探しの相談
- 7月17日リフォーム会社岩手県人材確保の相談
住宅の競争軸は「省エネ」から「住み続けられるか」へ広がっています
今回の事業は、2050年を見据えた良質な住宅ストック形成を目的に、自然災害時等における住宅のレジリエンス性を高める先導的な取組を支援するモデル事業です。
補助を受けるための住宅要件として、国土交通省資料では次の6項目が示されています。
- 耐震性
- 劣化対策
- 断熱性
- 省エネルギー性
- 蓄電池又は燃料電池の設置
- レジリエンス性の向上に資する措置
ここで重要なのは、耐震・断熱・省エネといった従来の住宅性能に加えて、「災害後も生活を続けられるか」が評価軸に入っていることです。
これまで住宅提案では、「地震に強い」「光熱費が下がる」「断熱性能が高い」といった説明が中心になりがちでした。もちろん、それらは今後も重要です。ただ、今回採択されたプロジェクトを見ると、国が見ている方向はもう一段先にあります。
たとえば、停電時の電力確保、断水時の水の確保、在宅避難、感染症流行時の在宅療養、発災後の安否確認、地域工務店による点検・補修相談などです。
つまり、「建てた瞬間の性能」だけでなく、「災害が起きた後に暮らしをどう守るか」まで含めて住宅価値を設計する時代に入っています。
採択プロジェクトに共通するキーワードは「在宅避難」です
採択プロジェクトの一覧を見ると、大手住宅メーカーだけでなく、地域工務店や複数事業者による提案も含まれています。内容として多く見られるのは、次のような組み合わせです。
- 耐震等級3や制震装置による構造安全性
- 太陽光発電、蓄電池、燃料電池、V2H、HEMS等による電力確保
- エコキュート、貯水、雨水タンク等による水の確保
- 高断熱・高気密による停電時の温熱環境維持
- 防災備蓄、ローリングストック、災害時マニュアル
- LINEやアプリ等を活用した安否確認・情報提供
- 地域工務店による発災後の点検、応急修理、補修相談
ここから読み取れるのは、国が評価しているのは「設備を足した住宅」ではなく、「在宅避難を実現する住宅の仕組み」だということです。
たとえば蓄電池を入れるだけではなく、停電前にどう備えるのか。停電後に何時間・何日生活できるのか。住まい手が非常時に迷わず使えるのか。発災後に誰が点検し、誰が補修相談に乗るのか。
こうした一連の流れまで組み立てている提案が目立ちます。
中小工務店にとっては、ここに大きな示唆があります。大規模な独自技術がなくても、汎用的な建材・設備と、地域密着のアフター体制を組み合わせることで、十分に価値あるレジリエンス提案をつくれる可能性があるということです。
評価結果で特に注目すべきは「ソフト面」と「地域性」です
別紙の評価結果では、採択にあたっての評価観点として、居住継続・生活継続への貢献、課題の明確性、先導性、実現可能性、普及可能性、効果検証などが示されています。
そのうえで総評では、いくつか重要な指摘がありました。
まず、平常時から災害リスクや備蓄状況、非常時の機器の使い方などを居住者に提供し、行動変容や冷静な判断を支えるソフト的な取組が高く評価されたとされています。
これは、かなり実務的なポイントです。
住宅の防災性能は、設備を入れただけでは発揮されません。蓄電池があっても、停電時の切替や使える回路を住まい手が理解していなければ、十分に活用できない可能性があります。備蓄スペースを設けても、更新されなければ意味が薄れます。
だからこそ、引渡し時の説明、定期点検時の確認、防災マニュアル、アプリやLINEによる連絡体制など、「住まい手が使える状態に保つ仕組み」まで含めて商品価値になるということです。
もう一つ重要なのが、地域性です。総評では、地域の工務店による発災後の住宅被害状況の確認や補修相談対応など、地域に根差した提案が高く評価されたとされています。
これは中小建設業にとって追い風です。大手のような全国規模のシステムがなくても、「この地域の災害リスクを理解している」「何かあったら見に行ける」「地元の協力業者と復旧に動ける」という強みがあります。
むしろ、レジリエンス住宅は地域密着企業の信用力を商品化しやすい領域です。
今回は新築注文戸建に集中。次の余地は既存住宅・賃貸・地域モデルです
今回の提案は、注文戸建住宅の新築に集中しており、賃貸住宅の新築に対する提案は1件のみ、既存住宅の改修に関する提案はなかったとされています。
これは見逃せません。
国土交通省の事業概要では、新築住宅だけでなく既存住宅も対象とされ、注文住宅、分譲住宅、賃貸住宅も補助対象に含まれています。今回の採択実績は新築戸建中心でしたが、評価総評では、今後は賃貸住宅や既存住宅改修を対象とする取組が増えることを期待するとされています。
つまり、次に差別化の余地があるのは、既存住宅改修、賃貸住宅、地域リスクに対応したレジリエンス提案です。
中小建設業が考えるべきなのは、「当社でも同じような先導事業を取れるか」だけではありません。
むしろ、次のような問いを持つことが実務に効きます。
- 自社エリアで最も現実的な災害リスクは何か
- 地震、水害、台風、豪雪、停電、断水のうち、顧客に説明すべき優先順位は何か
- 新築標準仕様に入れられるものは何か
- リフォーム・改修で提案できるものは何か
- 引渡し後の点検や安否確認を、どこまで仕組みにできるか
- 協力業者と発災後の初動対応をどう分担するか
ここを整理できる会社は、今後「性能が高い会社」から一歩進んで、災害後の暮らしまで考えてくれる会社として選ばれやすくなります。
中小工務店がすぐに整理したい3つの実務ポイント
今回の発表を受けて、中小建設企業がすぐに取り組みやすいのは、次の3つです。
1. 自社標準仕様を「平常時・発災時・発災直後・復旧期」で整理する
評価結果では、レジリエンス性の確保について、平時、発災時、発災後一定期間、復旧という時間軸が重視されています。
自社の標準仕様も、この時間軸で見直すと提案力が上がります。
たとえば、平常時は断熱・省エネ・光熱費削減。発災時は耐震・制震・防火・耐風。発災直後は蓄電池・貯水・備蓄・通信。復旧期は点検・補修・協力業者ネットワーク。
住宅性能を「カタログ項目」ではなく「災害時の生活シナリオ」として説明できるようにすることが重要です。
2. 地域の災害リスクを営業資料に落とし込む
総評では、想定するリスクに対する被害想定や、発災後に提案地域で起こり得る問題を深く掘り下げた提案が高く評価されています。
これは、営業や設計の現場でもそのまま使えます。
「この地域では水害が起きやすい」「この地域では冬の停電が厳しい」「この地域では南海トラフ地震への備えが重要」といった地域特性を、住宅提案に自然に組み込むことです。
全国共通の防災住宅ではなく、自社エリアに合ったレジリエンス住宅として語れるかが差別化になります。
3. 引渡し後の支援を商品価値にする
今回の採択プロジェクトには、アンケート、HEMSデータ、定期点検、安否確認、発災後のヒアリングなど、効果検証やアフター対応を含むものが多くあります。
中小企業にとって、ここは大きな可能性があります。
「何かあったら電話してください」ではなく、定期点検時に備蓄や設備の使い方を確認する。災害時に連絡する方法を決めておく。協力業者と応急対応の流れを共有しておく。
こうした地道な仕組みは、派手ではありません。しかし、地域の顧客から見れば、災害時に本当に頼れる会社かどうかを分ける大きな要素になります。
次回募集があるなら、今から「自社らしい型」を作っておきたい
今回の発表では、2回目以降の募集は検討中とされています。募集が行われる場合は別途知らせるとのことです。
したがって、現時点で次回募集の有無や時期を断定することはできません。
ただし、今回の採択結果と評価総評から、国が重視する方向性はかなり明確です。
耐震・断熱・省エネを土台に、在宅避難、生活継続、早期復旧、地域対応、住まい手の行動支援まで含めた住宅提案が求められています。
中小建設業にとって大切なのは、大手の真似をすることではありません。自社の地域、自社の施工体制、自社の顧客層に合わせて、無理なく続けられるレジリエンス提案を作ることです。
たとえば、蓄電池や太陽光の標準化が難しい会社でも、防災備蓄スペース、エコキュートの非常用取水、感震ブレーカー、定期点検時の防災確認、災害時の連絡体制など、始められることはあります。
「うちの会社なら、災害後の暮らしをどこまで守れるか」。この問いを持つことが、これからの住宅事業の競争力につながります。
自社の住宅提案にどう落とし込むかを整理する
今回の採択結果は、住宅会社や工務店にとって、今後の商品づくり・営業資料・標準仕様・アフター体制を見直す良い材料になります。
とはいえ、「補助事業の資料は読んだが、自社では何から始めればよいか分からない」「太陽光や蓄電池まで標準化する余力はないが、地域工務店としてできるレジリエンス提案を作りたい」という段階の会社も多いはずです。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような制度や市場変化についても、単なる情報収集で終わらせず、自社の販路拡大、商品設計、原価管理、協力業者体制、顧客フォローにどうつなげるかを一緒に整理できます。
「うちの場合はどう考えるべきか」「何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、今後の住宅提案や地域対応の整理先として、必要に応じてご相談ください。


























