国土交通省は、令和8年6月の「建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)」の結果を公表しました。大手50社の受注総額は1兆7,212億円で、前年同月比2.3%増となり、4ヶ月ぶりに増加しました。一方で、民間工事は9,724億円、前年同月比22.5%減と4ヶ月連続で減少しています。公共工事は6,339億円、前年同月比118.5%増と大きく伸びました。
公表内容 | 令和8年6月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果 |
受注総額 | 1兆7,212億円 |
受注総額の前年同月比 | 2.3%増、4ヶ月ぶりに増加 |
民間工事 | 9,724億円、前年同月比22.5%減、4ヶ月連続で減少 |
公共工事 | 6,339億円、前年同月比118.5%増、2ヶ月連続で増加 |
海外工事 | 577億円、前年同月比30.3%減、4ヶ月連続で減少 |
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今回の数字は「総計増」だけで見ると読み違える
今回の発表でまず押さえたいのは、受注総額は増えているものの、中身を見ると民間工事と公共工事で動きが大きく分かれているという点です。
総計では前年同月比2.3%増です。数字だけ見ると、建設需要が少し持ち直したようにも見えます。ただし、その背景では、民間工事が前年同月比22.5%減と大きく落ち込み、公共工事が前年同月比118.5%増と大きく伸びています。
つまり、今回の統計は「建設市場全体が一様に良くなっている」というより、公共工事の増加が全体を押し上げた月だったと見るのが自然です。
中小建設業にとって大切なのは、ここを分けて見ることです。元請として公共工事を取る会社、民間建築を中心にする会社、大手ゼネコンの下請・協力会社として動く会社では、受け止め方が変わります。
民間工事は4ヶ月連続減少。営業先の業種を見る必要がある
民間工事は9,724億円で、前年同月比22.5%減でした。4ヶ月連続の減少です。
発注者別では、サービス業、卸売業・小売業、電気・ガス・熱供給・水道業などは増加しました。一方で、運輸業、製造業、不動産業などが減少しています。
工事種類別では、土木が増加し、建築が減少しました。鉄道、店舗、倉庫流通施設などは増加し、事務所庁舎、住宅、工場発電所などは減少しています。
ここから読み取れるのは、民間工事の中でも、業種や用途によって濃淡が出ているということです。
たとえば、民間建築を中心にしている会社であれば、単に「民間が悪い」と見るのではなく、次のように分解して考える必要があります。
- 自社の売上は、どの業種の投資に依存しているか
- 住宅、工場、事務所、倉庫、店舗など、どの用途に強いか
- 元請からの見積依頼が減っているのは、どの種類の案件か
- 受注残は十分か、数ヶ月先の稼働に空きが出そうか
大手50社の統計なので、中小企業の受注状況そのものを示すものではありません。ただ、大手の受注動向は、数ヶ月後の下請発注や協力会社への声掛けに影響する可能性があります。特に大型の民間建築に関わる会社は、足元の引き合いだけでなく、先の山谷を慎重に見ておきたいところです。
公共工事は大幅増。受注機会だけでなく施工体制も見る
公共工事は6,339億円で、前年同月比118.5%増、2ヶ月連続の増加となりました。
国の機関は前年同月比232.4%増、地方の機関は同9.9%増です。国の機関はすべての機関が増加し、地方の機関では市区町村、地方公営企業、地方その他が増加した一方、都道府県は減少しました。
工事種類別では、建築、土木ともに増加しています。事務所庁舎、土木その他、道路などが増加し、教育・研究・文化施設、住宅、娯楽施設などは減少しました。
公共工事に関わる中小建設業にとっては、発注量の増加はチャンスである一方、施工体制の確保がより重要になる局面です。
公共工事が増えると、地域によっては次のようなことが起きやすくなります。
- 技術者・技能者の取り合いが強まる
- 協力会社の予定が早く埋まる
- 資材・外注費の見積条件が変わりやすくなる
- 複数案件を追いすぎると、現場管理が薄くなる
- 応札しても、利益が残りにくい案件が混じる
数字が伸びているときほど、前向きに取りに行きたい気持ちになります。ただ、受注量を増やすことと、利益を残すことは別問題です。
特に公共工事では、工期、配置技術者、協力会社の確保、書類対応、資金繰りまで含めて、無理なく回せるかを見ておく必要があります。「取れる案件」ではなく、自社の体制で安全に、品質を守って、利益を残せる案件を選ぶ視点が大切です。
中小建設業は「民間か公共か」ではなく、受注ポートフォリオを点検する
今回の統計から中小建設業が考えたいのは、民間工事が悪い、公共工事が良い、という単純な話ではありません。
大事なのは、自社の受注ポートフォリオが、いまの市場の変化に対してどれくらい耐性を持っているかです。
たとえば、民間の特定業種に売上が偏っている会社は、その業種の投資が鈍ると一気に稼働が落ちる可能性があります。一方、公共工事中心の会社でも、人員や協力会社の余力以上に案件を抱えると、現場の負荷が高まり、品質・安全・利益を圧迫します。
このタイミングで確認したいのは、次の4点です。
- 売上構成:民間・公共、元請・下請、建築・土木、工種別に偏りはないか
- 受注残:3ヶ月先、6ヶ月先の稼働は見えているか
- 利益率:忙しい案件ほど利益が薄くなっていないか
- 施工余力:技術者、職長、協力会社、書類対応の余力はあるか
経営会議で見る資料としては、難しいものでなくて構いません。売上を「民間・公共」「元請・下請」「工種」「主要取引先」ごとに分け、粗利と受注残を横に並べるだけでも、かなり見え方が変わります。
市場の変化を読むとは、ニュースを当てにいくことではなく、自社の弱いところを先に見つけることです。
大手50社調査を、自社の先行指標として使う
今回の調査は大手50社が対象です。そのため、地域の中小建設業の実感と必ず一致するわけではありません。
それでも、この統計には使い道があります。大手ゼネコンの受注が動くと、一定の時間差をおいて、専門工事会社、資材会社、運送、リース、設計・測量、警備など周辺の仕事にも影響が出ることがあります。
特に、次のような会社は定期的に見ておく価値があります。
- 大手・準大手ゼネコンの協力会社として動いている会社
- 工場、物流施設、事務所、商業施設など民間建築に関わる会社
- 道路、庁舎、土木工事など公共工事に関わる会社
- 複数の発注者・元請から仕事を受けている会社
見るべきポイントは、細かな月次変動そのものではありません。民間と公共のどちらに需要が寄っているか、建築と土木のどちらが動いているか、どの用途が伸びているかです。
この見方を続けると、「最近、見積依頼の質が変わってきた」「協力会社の予定が取りづらくなった」「特定業種の案件が減っている」といった現場感覚と、統計が少しずつつながってきます。
まずは自社の受注表を、今回の統計と並べてみる
今回の発表は、中小建設業にとって「景気が良い・悪い」を判断するためだけのニュースではありません。むしろ、自社の受注の偏り、利益の残り方、施工余力を見直すきっかけとして使うのが実務的です。
まずは直近の受注表を、次の区分で並べ替えてみることをおすすめします。
- 民間工事か、公共工事か
- 建築か、土木か、専門工事か
- 主要な発注者・元請はどこか
- 案件ごとの粗利はどれくらいか
- 技術者・職長・協力会社の手配に無理はないか
そのうえで、今回の統計のように「民間は弱く、公共は強い」といった市場の動きと照らし合わせると、自社が次にどこを厚くするべきか、どこを慎重に見るべきかが見えやすくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような市場データを見て、「うちの場合はどう考えるべきか」「受注構成や利益管理をどう整理すればよいか」と感じた場合は、壁打ちの場として使ってください。無理な営業はいたしませんので、まだ論点がまとまっていない段階でも大丈夫です。





























