国土交通省と内閣官房水循環政策本部事務局が設置した「地下水の適正な保全と利用に関する検討会」は、令和8年8月4日、「地下水の適正な保全と利用のあり方について」の提言を取りまとめました。

今回の提言は、地下水採取について、全国統一的な考え方で実態を把握し、必要に応じて行政庁が是正を求められる仕組みを、法制度を含めて検討すべきとするものです。

公表日

令和8年8月4日

公表主体

国土交通省、内閣官房水循環政策本部事務局

とりまとめ主体

地下水の適正な保全と利用に関する検討会

提言名

地下水の適正な保全と利用のあり方について

主な方向性

地下水採取行為の実態把握、支障のおそれがある場合の是正、法制度を含む仕組みの検討

想定される把握内容

実施主体、位置、用途、採取量等

建設業が見ておきたい点

井戸、揚水、地下掘削、仮設排水、地下水利用設備などに関わる実務への将来的影響

現時点で、すぐに新しい届出義務や許可制度が始まったという発表ではありません。ですが、提言の中身はかなり具体的です。地下水を「安価で便利な水源」としてだけでなく、地域で管理すべき公共性の高い資源として扱う流れが強まっていると見ておく必要があります。

1週間で 16件の相談 がありました

  • 8月4日プラント工事会社埼玉県利益率向上の相談
  • 8月4日防水工事会社京都府原価管理の相談
  • 8月4日造園会社群馬県原価管理の相談
  • 8月3日総合土木愛知県案件獲得の相談
  • 8月2日解体工事会社神奈川県利益率向上の相談
  • 8月2日内装工事会社大阪府案件獲得の相談
  • 8月2日空調設備工事会社秋田県協力会社探しの相談
  • 8月2日総合建築群馬県案件獲得の相談
  • 8月1日空調設備工事会社福岡県人材確保の相談
  • 8月1日工務店京都府業務効率化システムの相談
  • 8月1日塗装工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
  • 8月1日総合土木静岡県人材確保の相談
  • 7月31日内装工事会社兵庫県業務効率化システムの相談
  • 7月31日電気設備工事会社静岡県原価管理の相談
  • 7月31日防水工事会社福島県協力会社探しの相談
  • 7月30日造園会社島根県案件獲得の相談
  • 7月29日解体工事会社山口県人材育成の相談
  • 7月29日電気設備工事会社大阪府案件獲得の相談
  • 7月29日空調設備工事会社北海道人材育成の相談
  • 7月28日総合建築北海道高卒採用の相談
  • 7月28日工務店神奈川県業務効率化システムの相談
  • 7月27日総合土木千葉県利益率向上の相談
  • 7月26日塗装工事会社神奈川県案件獲得の相談
  • 7月26日工務店兵庫県案件獲得の相談
  • 7月25日解体工事会社東京都業務効率化システムの相談
  • 7月25日総合建築茨城県高卒採用の相談
  • 7月25日内装工事会社東京都利益率向上の相談
  • 7月24日造園会社岐阜県案件獲得の相談
  • 7月24日空調設備工事会社愛知県案件獲得の相談
  • 7月24日防水工事会社兵庫県高卒採用の相談
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今回の提言で示された大きな方向性

今回の提言の中心は、地下水採取の実態を行政が把握し、必要な場合には是正を求められる仕組みをつくるべきだ、という点です。

提言では、地下水について次のような課題が整理されています。

  • 生活用水、工業用水、農業用水などに使われる重要な水資源であること
  • 半導体事業、データセンター、ミネラルウォーターなどにより、地域によって地下水需要が高まる可能性があること
  • 気候変動により、地下水の涵養量が減少する地域が増える可能性があること
  • 条例等による規制がない「空白地域」が存在すること
  • 地下水位の低下、地盤沈下、塩水化などの地下水障害は、発生後の回復に多大な時間と労力がかかること

そのうえで、提言では、一定規模以上の地下水採取行為について、行政庁が内容を把握する仕組みが必要とされています。

把握対象として例示されている内容は、実施主体、位置、用途、採取量等です。概要資料では、実施主体について「国籍情報を含む」とも記載されています。

さらに、地下水採取が他の地下水利用等に支障を及ぼすおそれがある場合には、行政庁が採取者に対して是正を求めることができる仕組みが必要だとされています。

ここで大事なのは、これは単なる理念ではなく、今後の制度設計に向けたかなり具体的な入口になっていることです。

建設会社にとって関係が出やすい業務

「地下水」と聞くと、製造業や水道事業の話に見えるかもしれません。ですが、建設業にも関係する場面は少なくありません。

たとえば、次のような業務です。

  • 井戸工事、さく井工事
  • 地下掘削に伴う揚水、排水
  • 基礎工事、山留め工事、地下構造物工事
  • トンネル、造成、開発工事に伴う地下水対応
  • 消雪設備、地下水利用設備の施工
  • 工場、倉庫、事業場等での地下水利用設備の新設・更新
  • 災害用井戸の整備や維持管理

もちろん、今回の提言だけで、これらすべてが新制度の対象になると決まったわけではありません。対象となる規模、工事中の一時的な揚水の扱い、既存井戸の扱い、届出なのか許可なのかといった具体は、今後の検討事項です。

ただし、経営者としては「うちは水を売っている会社ではないから関係ない」と見るより、地下水を動かす工事や設備に関わる会社は、将来的に説明責任や記録管理が増える可能性があると捉えるほうが実務的です。

現場では、地下水は目に見えません。だからこそ、近隣井戸の水位低下、地盤沈下、塩水化、湧水量の変化などが起きたときに、「工事との関係はあるのか」「いつ、どれくらい揚水したのか」「事前に何を確認したのか」が問われやすくなります。

今回の提言は、その問いに対して、社会全体がよりデータで答える方向へ進むサインです。

「条例を見れば足りる」から「全国統一ルールも見る」時代へ

これまで地下水採取の規制は、主に地方公共団体の条例で行われてきました。

提言によると、26都府県で28条例、236市区町村で241条例が制定されており、これらの条例により規制対象となっている市区町村は714市区町村、全国の市区町村の4割とされています。

裏を返すと、全国には条例等の規制がない地域も多く残っているということです。

建設会社の実務では、これまでも地域ごとの条例確認が重要でした。井戸を掘る、地下水をくみ上げる、仮設で排水する、こうした場面では、自治体ごとに届出や許可、採取量報告などの扱いが違います。

今回の提言が示しているのは、その地域差を前提にしながらも、全国統一的な考え方による実態把握の仕組みをつくる必要があるという方向性です。

これは、中小建設業にとっても地味に大きな変化です。

今後、制度化が進めば、現場ごとに「その自治体の条例だけ確認すればよい」という運用から、国の制度、都道府県・市区町村の条例、発注者の仕様や環境条件を重ねて確認する運用へ移っていく可能性があります。

特に、広域で仕事をしている会社、複数自治体にまたがる土木工事を受ける会社、井戸や揚水を専門工事として請ける会社は、地下水に関する社内確認の標準化が必要になっていきます。

見積・契約で注意したいポイント

制度が固まる前の段階であっても、経営面で先に見ておきたいのは、見積と契約です。

地下水に関する確認や記録が増えると、現場のコストに跳ね返ります。

たとえば、次のような費用や手間です。

  • 既存井戸、周辺利用状況の確認
  • 自治体条例や行政手続の確認
  • 揚水試験、地下水位観測、水質観測等への対応
  • 採取量や排水量の記録
  • 近隣説明、発注者説明の資料作成
  • 地下水位低下等が生じた場合の追加調査
  • 工法変更、揚水量調整、工程変更の可能性

提言では、一定規模以上の地下水採取行為について、揚水試験の結果等を活用し、他の地下水利用等への影響を確認するイメージが示されています。

つまり将来的には、地下水を使う、または地下水をくみ上げる行為について、「やってみないと分からない」ではなく、事前に影響を確認し、記録を残すことが求められる方向に進む可能性があります。

中小建設会社にとっては、ここを見積に入れ忘れると厳しくなります。

「これは元請が見るのか」 「専門工事会社が資料を出すのか」 「試験や観測の費用は別途なのか」 「行政協議で工程が延びた場合の扱いはどうするのか」

こうした点は、地下水に関わる工事では、今後さらに丁寧に確認したいところです。

今のうちに社内で整理しておきたいこと

今回の提言を受けて、すぐに大がかりな対応を始める必要はありません。ただ、地下水に関わる工事がある会社は、次の整理をしておくと、制度化が進んだときに慌てずに済みます。

まずは、自社が地下水に関わる業務をどれだけ持っているかを棚卸しすることです。

具体的には、次のような確認です。

  1. 過去の工事で井戸、揚水、地下水排水、地下水利用設備に関わった案件があるか
  2. 現在の見積や施工計画で、地下水採取・排水が前提になっている案件があるか
  3. 協力会社に、さく井、揚水、地盤、水処理の専門会社がいるか
  4. 各現場で、採取量・排水量・地下水位などを記録しているか
  5. 自治体条例の確認を、誰が、どのタイミングで行っているか
  6. 地下水に関する行政協議の履歴を、社内で共有できる形にしているか

特に重要なのは、記録です。

地下水に関するトラブルは、発生後に因果関係を確認することが難しい場合があります。そのとき、施工前の確認、施工中の揚水量、地下水位の変化、行政とのやり取りが残っているかどうかで、会社の説明力は大きく変わります。

これは守りの話だけではありません。

地下水への配慮やデータ管理ができる会社は、発注者から見ても安心感があります。公共工事でも民間工事でも、環境、近隣、地域資源への配慮は、今後さらに評価されやすい領域です。

地下水は「コスト削減」から「地域との約束」へ

提言では、地下水を生活・工業・農業用水等に使われる重要な水資源と位置付けています。

地下水は、一般に安価で、温度や水質が安定し、災害時の代替水源にもなり得ます。一方で、過剰採取が起きれば、地下水位の低下、井戸枯れ、地盤沈下、塩水化などにつながるおそれがあります。

建設業の現場感覚で言えば、地下水は便利です。掘れば出る、くみ上げれば施工できる、使えばコストが下がる。そう見える場面もあります。

しかし、これからはそれだけでは足りません。

地下水は、現場の都合だけで扱うものではなく、地域の生活、産業、防災、環境とつながる資源として扱う時代に入っています。

この変化は、建設会社にとって負担だけではありません。

地下水の状況を把握し、発注者や行政、近隣と丁寧に共有できる会社は、地域から信頼されます。見えない地下のリスクを、見える情報に変えられる会社は、これからのインフラ整備や開発工事で強くなります。

中小建設業こそ、地域の地形、井戸、湧水、地盤、雨の降り方を肌感覚で知っています。その現場知を、記録やデータと組み合わせることができれば、大きな競争力になります。

まずは「自社に関係する水の使い方」を整理するところから

今回の提言は、まだ制度そのものではありません。ですが、地下水採取について、全国的な実態把握と法制度を含む仕組みづくりに向かう流れは明確です。

井戸、揚水、地下掘削、仮設排水、地下水利用設備に関わる会社は、今のうちに自社の業務との接点を整理しておく価値があります。

「うちの工事は対象になりそうか」 「条例確認や記録管理を、どこまで標準化すべきか」 「見積条件に何を入れておくべきか」 「協力会社との役割分担をどう決めるか」

こうした整理は、制度が決まってから一気に行うより、平時に落ち着いて進めたほうが現場に合った形にできます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。地下水に限らず、制度変更や発注者要求の変化を「自社の業務にどう落とし込むか」を考える場面では、第三者と一度壁打ちするだけでも論点が見えやすくなります。

「うちの場合はどう考えるべきか」「何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、必要な整理先の一つとして活用してください。

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