令和8年9月11日、国土交通省は、改正建築物省エネ法の一部施行に伴う関係政令が閣議決定されたと発表しました。ポイントは、令和9年4月1日から、住宅を大量に供給する事業者を対象とした「上位住宅トップランナー制度」と、先導的な省エネ技術を評価する大臣認定制度が始まることです。
閣議決定日 | 令和8年9月11日 |
公布予定日 | 令和8年9月16日 |
施行日 | 令和9年4月1日 |
対象となる主な制度 | 上位住宅トップランナー制度、先導的な省エネ技術を評価する大臣認定制度等 |
建売戸建て住宅の指定基準 | 年間2,000戸 |
分譲マンションの指定基準 | 年間2,000戸 |
注文戸建て住宅の指定基準 | 年間2,000戸 |
賃貸アパートの指定基準 | 年間15,000戸 |
今回の政令は、令和8年7月に公布された「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律」を動かすためのものです。法律全体としては、建築物の使用段階の省エネ性能だけでなく、建設から解体までのライフサイクル全体の脱炭素化も視野に入れています。
中小建設業にとって、今回の指定基準そのものに該当する会社は多くないかもしれません。年間2,000戸、15,000戸という数字は、明らかに大規模な住宅供給事業者を想定した水準です。
ただし、ここで見ておきたいのは、制度の直接対象かどうかだけではありません。大手住宅供給会社の標準仕様が変わると、協力会社、専門工事会社、地域工務店、建材流通、設計者にも実務要求が広がっていくという点です。
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今回決まったことは「施行日」と「指定基準」です
今回の政令で明確になったのは、主に2つです。
1つ目は、上位住宅トップランナー制度や大臣認定制度等が、令和9年4月1日から施行されることです。
2つ目は、上位住宅トップランナーとして指定される基準となる年間供給戸数です。
具体的には、次のように定められました。
区分 | 指定基準となる年間供給戸数 |
|---|---|
特別特定一戸建て住宅建築主(建売戸建て住宅) | 2,000戸 |
特別特定共同住宅等建築主(分譲マンション) | 2,000戸 |
特別特定一戸建て住宅建設工事業者(注文戸建て住宅) | 2,000戸 |
特別特定共同住宅等建設工事業者(賃貸アパート) | 15,000戸 |
指定を受けた事業者は、より高い省エネ性能を有する住宅の供給を進めるため、中長期的な計画の提出や、取組状況の毎年度報告が求められる制度になります。
また、取組状況等が判断基準に照らして著しく不十分と認められる場合には、国土交通大臣による勧告や命令等につながる仕組みも法律上用意されています。
中小建設業が見るべきポイントは「自社が指定対象か」より「取引先の標準が変わるか」です
今回の数字だけを見ると、「うちは年間2,000戸もやっていないから関係ない」と感じる会社も多いはずです。
その見方は、半分正しいです。制度上の直接対象という意味では、該当しない会社が多いでしょう。
ただ、経営上はそこで止めない方がよいです。
住宅業界では、大手の仕様変更が、協力会社の施工内容、材料選定、検査書類、写真管理、設計説明、見積項目にじわっと広がります。今回の制度は、大量供給事業者に対して、より高い省エネ性能の住宅供給を促すものです。
つまり、大手住宅会社・デベロッパー・賃貸住宅会社の標準仕様が、省エネ性能を軸にさらに引き上がる可能性があるということです。
専門工事会社であれば、断熱、開口部、空調、換気、給湯、太陽光、外皮性能に関わる施工品質が、今まで以上に問われやすくなります。
地域工務店であれば、顧客への説明で「省エネ基準を満たしています」だけではなく、より高い性能をどう提案するかが差別化になります。
元請会社であれば、協力会社が新しい仕様に対応できるか、施工ばらつきを抑えられるかが重要になります。
制度の対象が大手でも、現場で品質をつくるのは協力会社を含めた施工体制全体です。ここが中小建設業にとっての実務影響です。
大臣認定制度は「新しい省エネ技術」を市場に出しやすくする可能性があります
今回の施行対象には、先導的な省エネ技術を評価する大臣認定制度も含まれています。
報道発表では、所管行政庁による建築物エネルギー消費性能向上計画の認定対象に、国土交通大臣の認定を受けたものを追加する制度拡充と説明されています。
これは、従来の基準の枠内だけでは評価しにくい技術や仕様について、一定の評価ルートを整える意味を持ちます。
中小建設業としては、ここも重要です。
省エネ技術は、現場にとっては「新しい商品」や「新しい工法」として入ってきます。カタログ上は良く見えても、施工手順、納まり、メンテナンス、職人の習熟、保証の切り分けまで見ないと、現場では使いこなせません。
そのため、これから見るべきなのは、単に「認定された技術かどうか」だけではありません。
自社の現場で安定して施工できるか。見積に反映できるか。引渡し後の説明まで含めて対応できるか。
ここまで含めて判断することが大切です。
省エネ対応は「技術」だけでなく「利益管理」のテーマになります
省エネ性能を高める話は、どうしても技術論に見えます。
しかし、中小建設業の経営としては、原価と利益の管理テーマでもあります。
高性能な材料や設備を使えば、仕入原価が上がる場合があります。施工手間が増える場合もあります。職人への説明、写真管理、検査対応、顧客説明の時間も必要になります。
ここを曖昧にしたまま受注すると、「性能は上げたが利益は残らない」ということが起こりかねません。
一方で、きちんと整理できれば強みになります。
たとえば、見積書の中で省エネ仕様に関する項目を明確にする。標準仕様と上位仕様の差額を説明できるようにする。協力会社ごとに施工上の注意点を共有する。営業資料と現場手順をそろえる。
こうした地味な整備が、これからの住宅市場では効いてきます。
省エネ対応は、単なる法令対応ではなく、価格を説明し、利益を守り、顧客に納得してもらうための経営課題になります。
いま確認しておきたい実務項目
今回の政令を受けて、中小建設業がまず確認しておきたいのは次の点です。
- 自社の取引先に、年間供給戸数の多い住宅会社・デベロッパー・賃貸住宅会社があるか
- 今後、標準仕様書や施工要領書が変わる可能性があるか
- 断熱、開口部、設備、換気、給湯など、省エネ性能に関わる工種の施工品質を確認できているか
- 省エネ仕様による材料費・施工手間・管理手間を見積に反映できているか
- 顧客や発注者に、省エネ性能とコストの関係を説明できる資料があるか
- 新しい技術や認定制度に関する情報を、誰が社内で追うか決まっているか
大きな制度変更ほど、最初は大手企業向けに見えます。けれど、実際の変化は、標準仕様、見積条件、品質管理、協力会社への依頼内容として現場に届きます。
令和9年4月1日の施行に向けて、まずは自社の商流と工種にどの程度関係するかを見ておくのがよいです。
自社への影響を一度整理しておく
今回の改正は、すべての中小建設会社に同じ影響が出るものではありません。住宅を扱う会社、専門工事として関わる会社、元請として提案する会社、協力会社として大手の仕様に対応する会社で、見るべきポイントは変わります。
「うちの場合は何を確認すればよいか」「省エネ対応を見積や現場管理にどう落とせばよいか」という段階で、一度立ち止まって整理しておくと、今後の仕様変更にも対応しやすくなります。
ネクスゲートでは、建設企業の持続的成長を支援する立場から、販路拡大、資金調達、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで横断して、現場に合う形で課題を整理しています。制度対応だけでなく、ものづくりに集中できる建設業界へ向けて、実行まで見据えた壁打ちも可能です。
何から整理すべきかわからない段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、今回の制度が自社にどう関係しそうかを確認したい場合は、お問い合わせはこちらからご連絡ください。



























