国土交通省は、令和8年5月分の建築着工統計調査報告を公表しました。大きなポイントは、新設住宅着工が前年同月比33.9%増と大きく増えた一方、民間非居住建築物は前年同月比31.2%減となったことです。住宅と非住宅で、かなり違う景色になっています。
公表内容 | 建築着工統計調査報告(令和8年5月分) |
公表日 | 令和8年6月30日 |
新設住宅着工戸数 | 57,877戸 |
新設住宅着工の前年同月比 | 33.9%増、2か月連続の増加 |
季節調整済年率換算値 | 757千戸、前月比4.6%増 |
住宅投資予定額 | 12,662億円、前年同月比39.8%増 |
民間非居住建築物の床面積 | 230万㎡、前年同月比31.2%減 |
民間非居住で減少した主な使途 | 事務所、店舗、工場、倉庫 |
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- 6月29日総合建築東京都
- 6月28日配管工事会社富山県
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- 6月27日内装工事会社大阪府
- 6月26日塗装工事会社秋田県
- 6月26日配管工事会社三重県
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- 6月19日配管工事会社東京都
- 6月18日総合土木東京都
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- 6月11日総合土木静岡県
住宅は「持家・貸家・分譲」がそろって増加
5月の新設住宅着工戸数は57,877戸でした。
前年同月比では33.9%増です。2か月連続の増加です。
内訳を見ると、次の通りです。
利用関係 | 戸数 | 前年同月比 |
|---|---|---|
持家 | 15,708戸 | 31.8%増 |
貸家 | 25,175戸 | 33.3%増 |
分譲住宅 | 16,600戸 | 39.2%増 |
うちマンション | 6,575戸 | 37.6%増 |
うち一戸建住宅 | 9,824戸 | 38.7%増 |
ここで注目したいのは、どれか一つだけが伸びたのではなく、持家・貸家・分譲住宅がそろって増えていることです。
住宅会社、基礎、外構、電気、給排水、内装、足場、木工事など、住宅関連の仕事を持つ会社にとっては、地域差はあるものの、受注環境を見るうえで前向きな材料です。
ただし、単月の数字です。
前年同月比が大きく出ている背景には、前年の水準も関係します。自社の判断では、前年同月比だけでなく、直近数か月の受注・見積件数・失注理由と合わせて見ることが大切です。
住宅投資予定額も39.8%増。単価感も見ておきたい
参考資料では、新築に関する住宅投資予定額も公表されています。
令和8年5月の住宅投資予定額は、総計で12,662億円。前年同月比39.8%増です。
内訳は次の通りです。
区分 | 住宅投資予定額 | 前年同月比 |
|---|---|---|
総計 | 12,662億円 | 39.8%増 |
持家 | 5,019億円 | 32.3%増 |
貸家 | 3,742億円 | 36.9%増 |
給与住宅 | 94億円 | 13.9%増 |
分譲住宅 | 3,808億円 | 55.6%増 |
うち分譲マンション | 2,009億円 | 67.6%増 |
うち分譲戸建て | 1,783億円 | 43.6%増 |
住宅投資予定額は、住宅着工戸数と1戸当たり工事費予定額を掛け合わせた推計です。
つまり、戸数だけでなく、工事費予定額の動きも含んだ見方です。
中小建設会社にとっては、ここが大事です。
「戸数が増えているから忙しくなる」だけでは足りません。
「利益が残る単価で受けられるか」まで見たいところです。
現場では、材料費、外注費、労務費、運搬費がじわじわ効いてきます。見積の古い単価表をそのまま使っていると、忙しいのに利益が薄い、ということが起きます。
住宅系の引き合いが増えている会社ほど、見積単価と実行予算の更新が必要です。
地域別では首都圏・中部圏・近畿圏・その他地域がいずれも増加
地域別の新設住宅着工も、総戸数ではすべて増加しています。
地域 | 総戸数の前年同月比 | 主な特徴 |
|---|---|---|
首都圏 | 35.4%増 | 分譲住宅が54.9%増、マンションが90.5%増 |
中部圏 | 22.3%増 | 分譲住宅が71.0%増、貸家は5.4%減 |
近畿圏 | 27.1%増 | 貸家が70.5%増、マンションは20.5%減 |
その他地域 | 40.2%増 | 持家、貸家、分譲住宅がいずれも増加 |
同じ「住宅着工が増加」でも、中身は地域で違います。
首都圏では分譲住宅、特にマンションの伸びが大きく出ています。
中部圏では分譲住宅が大きく増えていますが、貸家は減少です。
近畿圏では貸家が大きく増えていますが、マンションは減少です。
その他地域では、持家、貸家、分譲住宅がそろって増えています。
自社の商圏で、何が増えているのかを見ることが重要です。
同じ住宅関連でも、持家中心なのか、貸家中心なのか、分譲戸建て中心なのか、マンション中心なのかで、営業先も必要な施工体制も変わります。
一方で、民間非居住は31.2%減。工場・倉庫系は慎重に見たい
住宅とは対照的に、民間非居住建築物は弱い数字です。
民間建築主の非居住用床面積は230万㎡で、前年同月比31.2%減。4か月連続の減少です。
主な使途別では、次のようになっています。
使途 | 床面積 | 前年同月比 |
|---|---|---|
事務所 | 31万㎡ | 6.8%減 |
店舗 | 28万㎡ | 29.3%減 |
工場 | 37万㎡ | 39.0%減 |
倉庫 | 67万㎡ | 49.1%減 |
事務所、店舗、工場、倉庫がそろって減少しています。
鉄骨、内装、設備、空調、電気、舗装、外構、倉庫・工場関連の改修や新築に関わる会社は、ここを冷静に見ておきたいところです。
もちろん、非住宅の仕事がすぐに悪くなると断定する話ではありません。
着工統計は、建築工事届をもとにした着工ベースの統計です。受注、設計、見積、着工には時間差があります。
ただ、新築系の非住宅案件に依存している会社は、今後の見積案件数や発注者の投資姿勢を丁寧に確認したい局面です。
中小建設業が見るべきは「全体の景気」より「自社の仕事に近い数字」
今回の統計を一言で見ると、住宅は強く、民間非居住は弱い、という形です。
ただし、経営判断ではもう一段分けたいところです。
見るべき問いは、次のようなものです。
- 自社の売上は、住宅と非住宅のどちらに寄っているか
- 住宅なら、持家・貸家・分譲のどれに近い仕事か
- 非住宅なら、事務所・店舗・工場・倉庫のどれが多いか
- 元請からの仕事か、下請・専門工事か
- 今の見積単価で、労務費と外注費の上昇を吸収できているか
- 繁忙時に人を増やすのか、協力会社網を厚くするのか
「住宅が増えたらしい」だけでは、経営には使いにくいです。
でも、「うちは分譲戸建ての外構が多い」「うちは倉庫の鉄骨・板金が多い」「うちは貸家の設備工事が多い」と分けると、かなり見え方が変わります。
統計は、世の中の平均を見るものではなく、自社の商圏と得意工事を点検する材料として使うのが現実的です。
いま確認しておきたい実務ポイント
今回の数字を受けて、中小建設会社が確認しておきたいことは大きく3つです。
1つ目は、営業先です。
住宅系の伸びが自社の地域でも感じられるなら、既存取引先だけでなく、分譲、貸家、地場工務店、管理会社、設計事務所など、案件の入口を見直す余地があります。
2つ目は、施工体制です。
急に仕事が増えたとき、現場は無理をしがちです。職人、協力会社、現場管理者の稼働を見ながら、受ける工事と受けない工事を決める必要があります。
3つ目は、利益管理です。
住宅投資予定額は増えていますが、それが自社の利益増に直結するとは限りません。受注量が増える局面ほど、見積、実行予算、追加変更、請求の管理が大切です。
忙しいときほど、社長も現場も「とにかく回す」になりがちです。
でも、ここで利益を見落とすと、後から資金繰りに響きます。
受注環境が動く時期こそ、売上ではなく粗利を見る。この基本に戻りたいところです。
自社への影響を整理する時間をつくる
今回の建築着工統計は、住宅関連には追い風の数字が多く出ています。一方で、民間非居住では慎重に見たい数字も出ています。
大切なのは、統計をそのまま喜ぶことでも、不安になることでもありません。
自社の仕事に近い市場が、いま伸びているのか、弱含んでいるのかを確認することです。
「うちの場合は、どの数字を見ればいいのか」
「住宅の引き合いは増えているが、利益が残っているのか不安」
「非住宅の見積が減ってきたが、次の営業先をどう考えるべきか」
そんな整理が必要なときは、ネクスゲートでも壁打ちできます。中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで一緒に考えています。
無理な営業はいたしません。まずは、今回のような市場変化を自社に置き換えるところからで大丈夫です。





























