国土交通省と厚生労働省は、建設業の人材確保・育成に向けた令和9年度予算概算要求の概要を公表しました。柱は、人材確保、人材育成、魅力ある職場づくりです。
建設業の技能者は、60歳以上が約4分の1を占める一方、29歳以下は約12%にとどまっています。国は、若者や女性の入職・定着、処遇改善、働き方改革、生産性向上を一体で進める方針を示しています。
発表主体 | 国土交通省・厚生労働省 |
発表日 | 令和8年9月4日 |
内容 | 建設業の人材確保・育成に向けた令和9年度予算概算要求の概要 |
重点分野 | 人材確保、人材育成、魅力ある職場づくり |
主な要求内容 | 建設事業主等に対する助成金73億円、中小建設事業主等への支援4.9億円、雇用管理責任者等研修1.1億円など |
中小建設業が見るべき点 | 助成金、CCUS活用、若手育成、定着支援、働き方改革、安全衛生支援 |
1週間で 19件の相談 がありました
- 9月4日塗装工事会社神奈川県人材確保の相談
- 9月4日電気設備工事会社山梨県原価管理の相談
- 9月4日設備保全会社栃木県利益率向上の相談
- 9月4日電気設備工事会社岐阜県利益率向上の相談
- 9月3日外構工事会社群馬県案件獲得の相談
- 9月3日総合土木広島県協力会社探しの相談
- 9月3日外構工事会社新潟県人材確保の相談
- 9月3日電気設備工事会社福島県協力会社探しの相談
- 9月2日内装工事会社愛知県利益率向上の相談
- 9月2日プラント工事会社群馬県人材確保の相談
- 8月31日内装工事会社茨城県利益率向上の相談
- 8月31日総合建築大分県業務効率化システムの相談
- 8月31日空調設備工事会社埼玉県高卒採用の相談
- 8月31日総合土木広島県業務効率化システムの相談
- 8月30日内装工事会社東京都高卒採用の相談
- 8月30日工務店福岡県利益率向上の相談
- 8月30日電気設備工事会社兵庫県高卒採用の相談
- 8月29日内装工事会社神奈川県案件獲得の相談
- 8月29日総合建築宮崎県業務効率化システムの相談
- 8月28日防水工事会社静岡県業務効率化システムの相談
- 8月28日配管工事会社茨城県原価管理の相談
- 8月28日塗装工事会社茨城県案件獲得の相談
- 8月28日内装工事会社長野県協力会社探しの相談
- 8月27日配管工事会社東京都人材確保の相談
- 8月27日配管工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
- 8月27日外構工事会社大阪府人材確保の相談
- 8月27日外構工事会社熊本県業務効率化システムの相談
- 8月26日総合建築神奈川県業務効率化システムの相談
- 8月26日配管工事会社福岡県業務効率化システムの相談
- 8月26日電気設備工事会社兵庫県案件獲得の相談
これは「予算の細目」ではなく、国の重点方向を読む資料です
今回の発表は、令和9年度予算の概算要求です。つまり、現時点では最終的な予算決定ではありません。
ただし、経営者が見るべき価値は十分にあります。なぜなら、国が来年度に向けて、建設業のどこに政策資源を寄せようとしているかが見えるからです。
今回の資料で明確なのは、人材不足を単なる採用問題として見ていないことです。
入職を増やす。教育する。定着させる。処遇を改善する。働き方を整える。安全衛生を支える。CCUSを活用する。
これらを別々ではなく、つながった施策として進める姿勢が出ています。
中小建設業にとっても同じです。求人票だけを直しても、人は定着しません。資格取得だけ支援しても、賃金や評価の道筋が見えなければ若手は残りにくいです。採用・教育・処遇・現場環境を一体で整える会社が、次の担い手を確保しやすくなる流れです。
建設事業主等への助成金は73億円、CCUS活用も引き続き重要です
厚生労働省の要求では、建設事業主等に対する助成金による支援が73億円とされています。令和8年度当初予算額71億円からの拡充です。
資料では、人材確保等支援助成金、人材開発支援助成金、トライアル雇用助成金が挙げられています。対象は、雇用管理改善や人材育成に取り組む中小建設事業主等です。
特に見ておきたいのが、CCUSを活用した雇用管理改善への支援です。
人材確保等支援助成金の建設キャリアアップシステム等活用促進コースでは、技能者の能力・経験に応じた適切な処遇を目的として、中小建設事業主が実施するCCUSを活用した雇用管理改善の取組を支援するとされています。
また、登録手数料に係る助成は、普及促進事業として令和9年度末まで延長と記載されています。
さらに、人材開発支援助成金の建設労働者技能実習コースでは、CCUSカード登録者の場合は賃金助成額を1.1倍にする措置を令和9年度末まで延長するとされています。一部資格試験の受験費用を経費助成の対象とする内容も示されています。
ここから読み取れるのは、CCUSは単なるカード登録ではなく、教育・処遇・助成金活用をつなぐ基盤として位置づけられているということです。
まだ社内でCCUSの活用が登録止まりになっている会社は、次の一手を考える時期です。
たとえば、次のような整理です。
- 誰がどの資格・技能を持っているか
- 経験年数や現場実績をどう評価に反映するか
- 資格取得費用や講習参加を会社としてどう支援するか
- 若手に「何を身につければ賃金が上がるか」を示せているか
CCUSを“事務作業”で終わらせず、“人が育つ道筋”に変えることが大切です。
若手・女性・高校生への接点づくりも強化されます
人材確保の面では、建設業への入職や定着を促すための取組が並んでいます。
厚生労働省の施策では、「つなぐ化」事業が33百万円です。これは、高等学校や高等専門学校の先生・生徒等と建設業界がつながる機会として、出前授業や現場見学会等を実施するものです。
また、ハローワークにおける人材不足分野のマッチング支援は68億円。建設、医療・福祉、警備、運輸などを対象に、人材確保対策コーナーを設置し、求人充足に向けた助言、職業相談、事業所見学会、就職面接会などを行う内容です。
高校生に対する地元における職業理解の促進支援も、20百万円が要求されています。
国土交通省側でも、建設業への入職促進に向けた戦略的な魅力発信が拡充として示されています。就業有望層やその保護者等への魅力発信、女性をはじめとした多様な人材が活躍・定着できる環境整備を促進する内容です。
中小建設業にとってのポイントは、採用活動を“応募が来るのを待つ活動”から、“地域の若者と接点を持つ活動”へ変えることです。
大きな採用予算がなくても、できることはあります。
- 地元高校との接点を業界団体経由で持つ
- 現場見学で、仕事の厳しさだけでなく成長の道筋を伝える
- 保護者に安心してもらえる労務管理・安全管理を言語化する
- 女性や若手が働きやすい現場ルールを整える
- ハローワークの人材確保対策コーナーを活用する
採用は広報であり、定着は経営そのものです。
若い人は、給与だけで会社を見ているわけではありません。現場の雰囲気、教え方、休日、資格取得、将来の収入、社長や先輩の言葉。そうしたものを総合して、「ここで働き続けられるか」を見ています。
人材育成は「訓練」と「社内評価」をセットで考える時代です
人材育成では、中小建設事業主等への支援が4.9億円とされています。離転職者、新卒者、学卒未就職者等を対象に、訓練カリキュラムの策定、訓練生募集、職業訓練、就職支援をパッケージで業界団体が行う建設労働者育成支援事業です。
建設分野におけるハロートレーニングは1.1億円。建設機械等の運転技能だけでなく、パソコンスキル講習等と組み合わせた職業訓練を実施するとされています。
ものづくりマイスター制度による若年技能者への実技指導は28億円。中小企業等にものづくりマイスターを派遣し、若年技能者への実技指導を行うものです。
ここで重要なのは、外部訓練を受けさせるだけではなく、社内でどう評価し、どう仕事を任せ、どう賃金に反映するかです。
講習に行った。資格を取った。現場でできる作業が増えた。
その次に、本人の待遇や役割が何も変わらなければ、学ぶ意欲は続きません。
中小建設業は、複雑な人事制度を作る必要まではありません。ただ、最低限、次のような見える化は必要です。
- 入社1年目、3年目、5年目で何ができる状態を目指すか
- どの資格を取ると、どの現場・作業を任せられるか
- 職長、現場代理人、施工管理への道筋をどう示すか
- 技能の上達を、手当や昇給にどう反映するか
人材育成の本質は、“覚えろ”ではなく“育つ道筋を見せること”です。
働き方改革・安全衛生は、定着率に直結します
魅力ある職場づくりでは、働き方改革や安全衛生に関する支援も多く盛り込まれています。
働き方改革推進支援助成金は101億円。生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む中小企業・小規模事業者などを支援するものです。資料では、令和6年4月から時間外労働の上限規制が適用されている建設業等について、他業種と比べ労働時間が長い実態を踏まえ、専用コースを用意し、引き続き助成するとされています。
働き方改革推進支援センターは41億円。47都道府県に設置され、労務管理等の専門家による相談、企業訪問、オンラインによるコンサルティング、セミナーなどを行う内容です。
雇用管理責任者等に対する研修は1.1億円。基礎講習に加え、若年者等の職場定着や技術習得が円滑に進むよう、指導する立場の人と若年労働者等が円滑にコミュニケーションを取れる環境づくりを学ぶコースが示されています。
安全衛生では、次のような支援が挙げられています。
- 個人事業者等の安全衛生確保支援事業:1.7億円
- 中小専門工事業者の安全衛生活動支援事業:96百万円
- 労災保険特別加入制度の周知広報等事業:29百万円
- 墜落・転落災害等防止対策推進事業:78百万円
特に中小専門工事業者向けには、安全衛生管理能力の向上のための集団指導、技術研修会、パトロール、個別指導等が示されています。
ここは、採用・定着と切り離して考えない方がよいです。
若手や家族にとって、建設業の印象を左右するのは、給与だけではありません。安全に働けるか。無理な長時間労働が常態化していないか。怒鳴られながら覚える職場ではないか。こうした点が、入職と定着に直結します。
現場の安全書類、朝礼、KY活動、足場点検、熱中症対策、職長の声かけ。日々の小さな運用が、会社の採用力にもなっていきます。
中小建設業は、来年度を待たずに準備できることがあります
今回の概算要求は、最終予算ではありません。制度の詳細や募集要件は、今後確認が必要です。
それでも、今から準備できることはあります。
まず、自社の人材課題を分解することです。
「人がいない」で止めると、打ち手が見えません。
- 応募が少ないのか
- 入社しても続かないのか
- 若手を教える人が足りないのか
- 資格取得が進まないのか
- 工期や残業の負担が重いのか
- 処遇改善の原資を見積に反映できていないのか
- CCUSが登録だけで活用されていないのか
分けて考えると、使える支援策も見えやすくなります。
次に、助成金ありきではなく、会社の方針ありきで考えることです。
助成金は有効です。ただし、制度に合わせて場当たり的に動くと、社内に残る仕組みになりにくいです。
「若手を3年で一人前にするには何が必要か」 「職長候補をどう育てるか」 「技能と賃金をどう結びつけるか」 「現場の安全と生産性をどう両立するか」
この順番で考え、そのうえで使える助成金や支援制度を探す方が、会社に残る投資になります。
令和9年度の支援策は、“人を採る会社”よりも、“人が育ち、残る会社”を後押しする方向に見えます。
自社の採用・育成・定着を一度つなげて整理してみる
今回の発表は、建設業の人材不足に対して、国も本腰を入れて採用、教育、処遇、働き方、安全衛生をつなげて見ていることを示しています。
中小建設業にとって大事なのは、自社でも同じように、課題をつなげて整理することです。求人、賃金、資格取得、CCUS、現場教育、安全管理、原価管理。どれか一つだけではなく、会社全体の流れとして見ると、打ち手が見えやすくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。制度の活用可能性だけでなく、「うちの場合は何から整理すべきか」という段階でも大丈夫です。
建設企業がものづくりに集中できる環境をつくるために、採用・定着や人材育成の進め方を壁打ちしたい場合は、お問い合わせはこちらからご連絡ください。無理な営業はいたしませんので、今後の方向性を整理する場として気軽に使っていただければと思います。




























