国土交通省は、令和8年8月分の「建設労働需給調査結果」を公表しました。全国の8職種計では、過不足率が1.3%の不足となり、前月の1.2%不足から0.1ポイント、前年同月の0.9%不足から0.4ポイント、不足幅が拡大しました。
公表日 | 令和8年9月25日 |
調査対象 | 令和8年8月10日〜20日までの間の1日(日曜・休日を除く) |
全国8職種計の過不足率 | 1.3%の不足 |
前月比較 | 令和8年7月の1.2%不足から0.1ポイント不足幅が拡大 |
前年同月比較 | 令和7年8月の0.9%不足から0.4ポイント不足幅が拡大 |
今後の確保見通し | 10月・11月ともに「普通」 |
残業・休日作業を強化している現場割合 | 全手持現場の4.0% |
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- 9月13日塗装工事会社愛知県協力会社探しの相談
数字は小さく見えても、現場運営には効いてきます
今回の調査では、全国8職種計で1.3%の不足でした。
1.3%という数字だけを見ると、大きな不足に見えないかもしれません。ただ、建設現場では「1人足りない」「一職種だけ段取りが合わない」ことが、工程全体に影響します。
特に中小建設業では、余剰人員を多く抱えることが難しい会社も多いです。不足率の小さな変化でも、現場の段取り、応援手配、外注費、残業時間に波及しやすい点を見ておきたいところです。
今回のポイントは、前月比で0.1ポイント、前年同月比で0.4ポイント、不足幅が拡大していることです。単月の数字だけで悲観する必要はありませんが、「人が余っている局面」ではなく、「不足を前提に段取りする局面」と捉えるのが現実的です。
職種別では、型わく工(建築)以外は不足です
職種別に見ると、8職種のうち型わく工(建築)は0.5%の過剰となりました。一方で、その他の職種は不足となっています。
主な職種別の過不足率は次の通りです。
職種 | 令和8年8月の過不足率 |
|---|---|
型わく工(土木) | 2.3%不足 |
型わく工(建築) | 0.5%過剰 |
左官 | 1.3%不足 |
とび工 | 1.6%不足 |
鉄筋工(土木) | 1.9%不足 |
鉄筋工(建築) | 0.6%不足 |
電工 | 0.8%不足 |
配管工 | 2.2%不足 |
6職種計 | 1.2%不足 |
8職種計 | 1.3%不足 |
目立つのは、型わく工(土木)2.3%不足、配管工2.2%不足、鉄筋工(土木)1.9%不足です。
土木系の型わく・鉄筋、設備系の配管工で不足感が出ています。元請・専門工事会社を問わず、これらの職種が絡む現場では、見積段階から「通常通りに人が入る」前提を置きすぎない方が安全です。
一方で、型わく工(建築)は0.5%過剰です。これは全体傾向と逆の動きです。ただし、全国平均のため、地域や会社の取引先によって体感は変わります。自社の商圏で本当に手配しやすいのか、協力会社ごとに確認することが大切です。
地域別では、8職種計で全地域が不足です
地域別の8職種計では、全ての地域で不足となりました。
地域別の過不足率は次の通りです。
地域 | 8職種計の過不足率 |
|---|---|
北海道 | 2.7%不足 |
東北 | 0.1%不足 |
関東 | 1.9%不足 |
北陸 | 0.9%不足 |
中部 | 1.6%不足 |
近畿 | 0.3%不足 |
中国 | 0.8%不足 |
四国 | 0.3%不足 |
九州 | 1.1%不足 |
沖縄 | 0.6%不足 |
全国計 | 1.3%不足 |
前年同月との比較では、関東が1.9ポイント増で、全国で最も増加幅が大きいとされています。一方、九州は3.0ポイント減で、最も減少幅が大きくなっています。
ここで見たいのは、全国平均ではなく、自社の受注エリアと職種の組み合わせです。
たとえば、関東で複数現場を抱える会社であれば、協力会社の予定確保が少し遅れるだけで、手配競争に巻き込まれやすくなります。北海道も2.7%不足と高めです。中部も1.6%不足です。
反対に、近畿や四国は0.3%不足と相対的には低い数字です。ただし「不足である」ことに変わりはありません。地域差はありますが、どの地域でも人員確保を後回しにしにくい状況です。
10月・11月の見通しは「普通」。ただし油断しすぎない数字です
今後の労働者確保に関する見通しは、全国8職種計で10月、11月ともに「普通」とされています。
一見すると落ち着いた見通しです。ただし、内訳を見ると、10月の見通しでは「困難」と「やや困難」の合計が27.4%です。前年同月の26.9%から0.5ポイント増えています。
11月の見通しでは、「困難」が24.0%で、前年同月の23.7%から0.3ポイント増えています。
つまり、全体としては「普通」でも、一定数の会社は確保が難しいと見ています。平均では普通、現場単位では困難。このズレが、実務では一番やっかいです。
中小建設業では、次の確認を早めにしておきたいところです。
- 10月・11月に山場を迎える現場があるか
- 特定の職種に作業が集中していないか
- 協力会社の返事が口約束のままになっていないか
- 代替要員や応援先の候補を持っているか
- 工程遅延時の追加費用を見積・契約で見込めているか
人材確保は、採用担当だけの仕事ではありません。工程、営業、原価、協力会社管理がつながるテーマです。
残業・休日作業の増加は、工程管理のサインです
今回の調査では、残業・休日作業を実施している現場数、つまり強化現場数は、全手持現場数の4.0%でした。
前月の2.8%から1.2ポイント増加。前年同月の3.4%からも0.6ポイント増加しています。
強化理由は、次の順です。
強化理由 | 割合 |
|---|---|
その他 | 30.4% |
前工程の工事遅延 | 29.0% |
昼間時間帯時間の制約 | 26.1% |
天候不順 | 10.1% |
無理な受注 | 4.3% |
注目したいのは、前工程の工事遅延が29.0%あることです。
自社の作業だけが順調でも、前工程が遅れれば、後工程にしわ寄せが来ます。すると、短い期間で人を集める必要が出ます。残業や休日作業も増えます。結果として、原価が上がり、現場代理人や職長の負担も増えます。
また、昼間時間帯の制約も26.1%です。稼働できる時間が限られる現場では、単純に人数を増やしても解決しない場合があります。「何人必要か」だけでなく、「いつ作業できるか」「何時間作業できるか」まで見た工程設計が必要になります。
中小建設業が見るべき実務ポイント
今回の発表から、中小建設業がすぐに確認したいのは、次の3点です。
1. 見積時点で人員確保リスクを入れる
労務費や外注費は、見積作成時点の感覚と、実際の施工時点でズレることがあります。
特に不足感がある職種では、「いつもの単価」「いつもの人数」「いつもの協力会社」だけを前提にしないことが大切です。
必要に応じて、協力会社への事前確認、繁忙期の単価確認、工程変更時の追加費用条件を見積段階で整理しておきたいところです。
2. 工程表を「人の手配表」として見る
工程表は日程管理のためだけのものではありません。
これからは、工程表を人の手配表として見ることが重要です。
どの週に、どの職種が、何人必要か。協力会社の確保状況はどうか。前工程が遅れた場合、どの作業に影響するか。
ここを見える化しておくと、現場の手戻りが減ります。社長や工事部長が全現場を頭の中だけで把握する状態から、少しずつ脱却できます。
3. 「無理な受注」を避ける判断基準を持つ
今回の強化理由では、「無理な受注」は4.3%でした。割合としては大きくありません。
ただ、中小企業にとっては一件の無理な受注が、利益、人員、信用に大きく響くことがあります。
受注前に、次のような基準を持っておくと判断しやすくなります。
- 必要職種の手配見込みがあるか
- 現場代理人・職長の負荷が限界を超えないか
- 工程遅延時の追加費用を交渉できる契約か
- 既存顧客の現場に悪影響が出ないか
- 粗利だけでなく、実行後の管理負荷を見ているか
売上を取りに行くことは大事です。一方で、人が足りない時代の受注判断は、売上よりも実行可能性が先です。
採用だけでなく、協力会社・工程・原価を一体で考える
建設労働需給調査は、単なる統計ではありません。
今回の数字は、採用市場だけでなく、現場運営全体を映しています。人が不足すれば、協力会社の確保が難しくなります。工程が詰まります。残業や休日作業が増えます。外注費も上がりやすくなります。
だからこそ、見るべき方向は一つです。
人材確保を、採用活動だけで終わらせないことです。
採用、協力会社ネットワーク、工程管理、原価管理、受注判断。この5つをつなげて考える会社ほど、不足局面でも安定して現場を回しやすくなります。
大きな制度改正ではありません。しかし、こうした月次の需給データには、現場の空気が出ます。「少し不足している」うちに、手配と利益管理の仕組みを整える会社が、次の繁忙期で強くなります。
自社の人員計画と受注判断を整理するきっかけに
今回の調査を見て、「うちの地域ではどう考えるべきか」「採用より先に工程管理を見直すべきか」「協力会社の確保をどう仕組みにするか」と感じた会社もあると思います。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。建設企業がものづくりに集中できる状態をつくるために、受注計画や人員計画の整理から一緒に考えることも可能です。
「まだ何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、必要に応じて情報整理の場としてご活用ください。