複数の工種を兼任する職人を抱え、3カ月先の工事配分を考える建設会社の現在地
関東圏を中心に、複数の工事会社へ住宅工事を発注している、ある建設会社があります。
工事を管理する担当者は、各社の工程表を見比べながら案件を割り振っています。工事量が多い時期には、工事課全体で応援を出せないか検討することもあります。
一方で、工事会社の施工能力は完全には見えていません。
「一人を基礎工事で1と置けないんです。基礎もできるし、大工仕事もできる人がいます」
一人で複数の作業を担当できる、いわゆる多能工がいます。反対に、名簿には残っているものの、現在はほとんど稼働していない人もいます。
職人登録、安全書類、現場への入退場、配置予定などのデータは存在します。過去の記録から「この人の稼働率は85%」「こちらは60%」と振り返ることもできます。
ただし、経営や受注の判断で本当に知りたいのは過去だけではありません。
必要なのは、在籍人数や過去の稼働率ではなく、工種ごとに数カ月先の施工余力を把握できる状態です。
1週間で 17件の相談 がありました
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- 9月22日空調設備工事会社大阪府人材育成の相談
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職人数と過去の稼働率だけでは将来の施工能力を判断できない状態
職人が10人いるからといって、10人分の施工能力があるとは限りません。
まず、担当できる作業が異なります。基礎、建方、大工、設備、仕上げなど、住宅工事には複数の工程があります。一つの工種に専従する人もいれば、複数の工程を横断できる人もいます。
作業速度にも差があります。
「同じ工事を20日で終える人と、30日かかる人がいたら、施工能力は同じではないですよね」
同じ仕様、同じ施工範囲という前提で見れば、20日で終える人は30日かかる人の1.5倍の速度です。二人を同じ「1人」と数えると、実際の受注余力とのずれが生まれます。
過去の稼働率にも限界があります。年間の入退場実績を集計すれば、誰がどれだけ現場に入ったかは分かります。しかし、それは年度が終わってから確定する結果です。
過去の稼働率は実績管理には役立ちますが、3カ月先に仕事を受けられるかを直接示す数字ではありません。
そのまま案件を割り振ると、着工時期になってから「予定が重なっていて、基礎工事に入れない」と判明することがあります。結果として、着工が2週間後ろにずれるような調整が必要になります。
現場担当者の経験で吸収できる範囲もあります。ただ、対象となる会社や現場が増えるほど、頭の中だけで全体を把握するのは難しくなります。
多能工の配置と会社ごとに異なる工程表が施工余力を見えにくくする構造
施工能力が読みにくい背景には、「人」「工程」「予定」が別々に管理されている構造があります。
人の情報には、年齢、資格、社会保険、安全書類、入退場実績などがあります。工程の情報は、各工事会社が使いやすい形式で作成しています。今後の予定は、発注済み案件や担当者が把握するスケジュールの中にあります。
それぞれの情報はあるものの、施工能力を予測する形には組み合わされていません。
さらに、工程表の粒度も会社ごとに異なります。
ある住宅では、2階建て・40坪前後の本体工事に約75日を見込みます。その中には基礎、建方、屋根、設備配管、電気、大工、内装、設備機器の取り付け、クリーニングなどが並びます。建物の階数や構造、仕様が変われば、必要日数も変わります。
工事会社ごとに独自の工程表を作ってもらえば、精度は上げられるかもしれません。ただし、入力や更新の負担が大きくなります。運用が定着しなければ、肝心の予測に使えません。
「まずは標準工程を当てはめて、現実に合わせて微調整するほうが動かしやすそうです」
この考え方が重要です。
最初から全現場を正確に再現するより、共通の標準工程で全体を見渡せる状態を先につくるほうが、先行予測には向いています。
標準工程と職人別の施工実績を確定案件へ重ねる予測の進め方
施工能力は、工種別の標準工程、担当できる作業、過去の施工日数、確定済み案件の四つを重ねると見えやすくなります。
1.主要な工種から標準工程を数パターンに分ける
最初に、建物の種類や規模ごとの標準工程を置きます。
例えば、2階建てと3階建て、構造や仕様の違いなど、施工日数への影響が大きい条件で分けます。そのうえで、基礎、建方、大工、設備、仕上げといった工種ごとに標準日数を設定します。
「この仕様なら基礎は5日」「こちらなら7日」といった粒度です。
全工程を細かく作り込む必要はありません。まずは受注判断への影響が大きく、手配が遅れると着工に響く工種から始めます。
標準工程の役割は、現場を完全に再現することではなく、将来必要になる施工量を同じ物差しで並べることです。
2.職人数ではなく、担当できる作業を登録する
次に、職人または班ごとに対応できる作業を整理します。
一人を一つの工種へ固定せず、基礎、大工、建方など、実際に担当できる範囲を持たせます。複数工種を兼任する場合は、主に担当する作業と、応援として入れる作業を分けておくと扱いやすくなります。
登録上は在籍していても、現在ほとんど動いていない人は、施工能力から外すか、利用可能な割合を下げます。
ここで資格や経験年数だけに寄せすぎないことも大切です。資格は担当可能性を確認する材料になりますが、実際の作業速度までは分かりません。
3.過去の施工日数で標準能力を補正する
現場への入退場記録や過去の工程実績があれば、標準日数との差を確認できます。
同じような物件で、ある班は20日、別の班は30日かかっていたとします。施工範囲や仕様に大きな違いがなければ、その差を次回以降の予測へ反映します。
ただし、一度の実績だけで能力を決めるのは避けます。現場条件による振れもあるため、複数案件の傾向を見ながら補正します。
職人の能力は、資格や在籍年数だけでなく、「どの工事を何日で完了したか」で補正すると実態に近づきます。
4.確定済み案件を標準工程へ当てはめる
3カ月先までの確定案件を、該当する標準工程へ当てはめます。
すると、各週・各月にどの工種がどれだけ必要になるかが見えてきます。そこへ職人や班の施工能力を重ねれば、工種別の不足と余剰を確認できます。
見るべき項目はシンプルです。
- いつ、どの工種が必要になるか
- その工種を担当できる職人・班は誰か
- すでに確定している案件は何か
- 標準日数に対して、過去実績は速いか遅いか
- 月別に施工能力が不足するか、余るか
遠い将来ほど、標準工程による概算で十分です。着工が近づいた案件は、実際の工程表や現場条件を使って調整します。
「遠い予定は標準工程で広く見る」「近い予定は実工程で細かく直す」という二段階にすると、精度と運用負担のバランスを取りやすくなります。
5.予測結果は工事担当者が判断に使える形で出す
施工能力の一覧を作るだけでは、受注や配置の判断にはつながりません。
工事担当者が確認したいのは、「来月は基礎が不足する」「再来月は大工に余力がある」といった先行情報です。会社別、エリア別、工種別に不足・余剰を見られる形が使いやすいでしょう。
最初から全工事会社へ入力を求めるより、発注側ですでに持っている確定案件と標準工程から試算する方法もあります。運用しながら、現場担当者が把握している例外だけを補正します。
予測の精度を上げること以上に、案件を割り振る前に不足へ気づけることが重要です。
まとめ
工事会社の施工能力は、在籍人数だけでは読めません。多能工の存在、作業速度の差、実際には稼働していない登録者、すでに確定している案件を考慮する必要があります。
過去の稼働率も大切です。ただし、それだけでは将来の受注余力を判断できません。
整理の起点となるのは、次の四つです。
- 工種別・物件別の標準工程
- 職人や班が担当できる作業
- 過去案件の施工日数
- 数カ月先までの確定案件
施工能力の見える化は、「何人いるか」から「いつ、どの作業を、どれだけ進められるか」へ物差しを変える取り組みです。
まずは主要工種と数パターンの標準工程から始めれば、現在の管理方法をすべて変えなくても試算できます。大まかな予測でも、着工直前に初めて不足へ気づく状態からは一歩前へ進めます。
自社の施工余力をどう見える化するか整理したい方へ
施工能力の管理は、工程表だけを整えれば終わるものではありません。現場の配置、職人情報、施工実績、確定案件がどこにあるかを確認し、自社で続けられる粒度に絞ることが大切です。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。
「うちの場合は何を施工能力として数えるべきか」「標準工程をどこまで細かく作ればよいか」といった段階からでも整理できます。無理にサービスを勧めることはありません。ものづくりに集中できる建設業界へ向けた、次の整理先としてご活用ください。