国土交通省、農林水産省、環境省など6省は、10月の「木材利用促進月間」に合わせ、木材利用への関心と理解を広げる普及啓発に集中的に取り組むと発表しました。10月8日は「木材利用促進の日」とされており、建築物の木造化・木質化を含む「ウッド・チェンジ」を合言葉に、関連イベントや情報発信が行われます。
発表内容 | 10月の「木材利用促進月間」における普及啓発の実施 |
関係省庁 | 総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省 |
木材利用促進の日 | 10月8日 |
木材利用促進月間 | 10月 |
根拠となる法律 | 脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:都市(まち)の木造化推進法) |
主な方向性 | 建築物の木造化・木質化、暮らしへの木材利用、持続可能な社会への転換 |
関連する取組 | ウッド・チェンジ協議会、ウッドデザイン賞、木材利用推進コンクール、シンポジウム等 |
今回の発表は、直接的な義務化や補助金募集の案内ではありません。ただし、中小建設業にとっては、木材利用が「一部の木造住宅の話」から、公共建築物・民間建築物を含む経営テーマに広がっていることを確認する材料になります。
1週間で 20件の相談 がありました
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- 9月18日工務店神奈川県原価管理の相談
見るべきポイントは「啓発イベント」ではなく、建築市場の方向性です
今回の発表では、木材利用促進月間に合わせて複数のイベントが紹介されています。表彰、シンポジウム、体験イベントなどが中心であり、これだけを見ると「自社には直接関係が薄い」と感じる会社もあるかもしれません。
ただ、建設業の経営目線では、見るべき点はイベントそのものではありません。重要なのは、国が建築物一般における木材利用を、脱炭素や地域経済、森林資源の循環利用と結びつけて推進しているという流れです。
都市(まち)の木造化推進法は、従来の公共建築物だけでなく、建築物一般についても木材利用の促進を図るものとされています。つまり、木材利用は住宅分野だけの話ではなく、店舗、事務所、福祉施設、教育施設、公共施設、内装木質化など、より広い建築提案の中に入り込んでいく可能性があります。
中小建設企業にとっては、「木を使える会社」ではなく、「木を使う理由まで説明できる会社」になることが差別化につながると考えたいところです。
木造化・木質化は、受注単価ではなく「提案の質」に効いてきます
木材利用というと、すぐに材料価格や施工手間の話になりがちです。もちろん、原価・納期・調達先・施工体制の確認は欠かせません。
一方で、これからの木材利用は、単に「この材料を木に替える」という話だけではなくなっています。発表でも、木材利用は地球温暖化防止、国土保全、林業・木材産業の振興、地域経済の活性化につながるものとして整理されています。
これは、発注者側から見ると、建物に対して次のような意味を持たせやすくなるということです。
- 脱炭素やSDGsへの対応を説明しやすい
- 地域材の活用により、地域貢献を打ち出しやすい
- 内装木質化により、利用者に伝わる価値をつくりやすい
- 公共性のある施設で、木材利用の意義を示しやすい
中小建設業にとっての実務的な論点は、木材を「使うか使わないか」だけではありません。発注者が木材を使う理由を、見積書や提案書、打合せの言葉に落とし込めるかが重要になります。
たとえば、店舗改修や事務所改修であれば、全面的な木造化でなくても、内装の一部木質化、什器、壁面、天井、エントランスなどから提案できる可能性があります。新築だけでなく、改修工事でも考えられるテーマです。
中小建設業が確認したい3つの実務論点
今回の発表を受けて、すぐに大きな投資をする必要があるわけではありません。まずは、自社の工事領域に照らして、次の3点を整理しておくことが現実的です。
1. 自社の受注領域で「木質化提案」ができる場面はあるか
住宅会社であれば、木造住宅そのものだけでなく、内装材、外構、リフォーム、断熱改修と組み合わせた提案が考えられます。
専門工事会社であれば、元請からの仕様待ちではなく、自社の工種の中で木材利用に関わる提案余地があるかを見ておきたいところです。内装、建具、外装、造作、施設改修など、関係する範囲は会社によって異なります。
2. 地域の木材供給先や協力会社との関係を持てているか
木材利用を提案するには、施工技術だけでなく、調達先の見通しも必要です。特に地域材を扱う場合、流通、加工、品質、納期の確認が欠かせません。
今すぐ案件がなくても、地域の製材業者、木材商社、設計者、行政の関連情報に触れておくことは、将来の提案力につながります。
3. 環境価値を説明する言葉を持てているか
発注者が木材利用に関心を持つ理由は、見た目や質感だけではありません。企業価値、地域貢献、脱炭素、利用者への印象など、経営側の理由もあります。
そのため、建設会社側も、「なぜ木を使うのか」を発注者の経営目的に合わせて説明する力が必要になります。これは大企業だけでなく、地域の中小企業、店舗、医療・福祉施設、教育関連施設などでも今後重要になっていく視点です。
「木材利用」は公共工事・民間工事の両方で見ておきたいテーマです
今回の発表では、公共建築物に関する問い合わせ先として国土交通省大臣官房官庁営繕部、民間建築物に関する問い合わせ先として住宅局住宅生産課木造住宅振興室が示されています。
この点からも、木材利用の促進は公共建築物だけに閉じた話ではなく、公共工事と民間建築の両方にまたがる政策テーマとして扱われていることが分かります。
中小建設業にとっては、次のような見方ができます。
- 公共施設の改修・新築で、木材利用や木質化が評価される場面が増える可能性がある
- 民間建築でも、脱炭素や企業価値向上の文脈で木材利用が提案テーマになり得る
- 地域材活用や森林資源の循環利用が、地域密着型企業の強みと結びつきやすい
- 表彰事例や先進事例は、自社提案の参考資料として使える可能性がある
大切なのは、木材利用を「流行」ではなく、建築物に社会的価値を持たせるための選択肢として捉えることです。
まずは情報収集と社内整理から始めたいところです
今回の発表には、ウッド・チェンジ協議会、ウッドデザイン賞、木材利用推進コンクールなど、木材利用に関する事例や情報に触れられる機会が示されています。
中小建設業にとって、こうした情報は受賞作品を眺めるためだけのものではありません。他社がどのように木材利用を建築提案に組み込んでいるかを学ぶ材料になります。
社内で整理するなら、次のような問いからで十分です。
- 自社の施工実績の中に、木材利用を打ち出せる案件はあるか
- 今後の提案で、木質化を加えられる工事領域はあるか
- 地域材や木材調達について相談できる先はあるか
- 発注者に対して、木材利用の意義を説明できる資料や言葉はあるか
- 原価・施工性・メンテナンス面で確認すべき課題は何か
大きな方向性として、建設業は「つくる」だけでなく、建物を通じて環境価値や地域価値をどう実装するかを問われる場面が増えています。木材利用促進月間は、その流れを自社の営業・設計・施工・協力会社体制に引き寄せて考える良い機会です。
自社の提案にどう落とし込むかを整理する
木材利用や木質化は、会社によって関係の深さが異なります。住宅中心の会社、改修中心の会社、専門工事会社、公共工事を扱う会社では、見るべきポイントも変わります。
「自社の場合、どの工事で木材利用を提案できるのか」「原価や協力会社体制まで含めて考えると、何から始めるべきか」と感じた場合は、一度整理してみることをおすすめします。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。木材利用のような新しい提案テーマも、単独で考えるより、販路拡大、原価管理、協力会社体制、営業資料づくりと合わせて考えることで、現実的な一歩にしやすくなります。
「うちの場合はどう考えるべきか」「何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、必要に応じて情報整理の場としてご活用ください。