国土交通省は令和8年9月18日、「補強土壁の点検支援に関する技術」について、技術比較表を公表しました。
発注者や施工者が、各技術の特徴や性能を比較し、現場ニーズに合った技術を選びやすくするための資料です。民間企業等から公募した10技術について、同一条件下での現場実証等の結果を踏まえ、NETIS上で比較できる形に整理されています。
公表日 | 令和8年9月18日 |
公表主体 | 国土交通省 大臣官房技術調査課等 |
対象 | 補強土壁の点検支援に関する技術 |
比較対象 | 民間企業等から公募した10技術 |
目的 | 発注者・施工者が技術の特徴や性能を比較し、現場ニーズに合う技術を選定・活用しやすくすること |
公表場所 | NETIS(新技術情報提供システム) |
主な確認項目 | 壁面材個々の変位など外形変化の把握、補強材・盛土材など内部状況の把握 |
既設補強土壁に適用可能な技術 | 4技術について現場実証を実施 |
1週間で 13件の相談 がありました
- 9月18日工務店神奈川県原価管理の相談
- 9月17日工務店三重県業務効率化システムの相談
- 9月16日総合建築千葉県業務効率化システムの相談
- 9月16日空調設備工事会社岐阜県案件獲得の相談
- 9月16日総合建築埼玉県利益率向上の相談
- 9月15日防水工事会社愛知県人材確保の相談
- 9月15日総合土木福岡県業務効率化システムの相談
- 9月15日空調設備工事会社宮崎県人材育成の相談
- 9月14日外構工事会社静岡県案件獲得の相談
- 9月13日外構工事会社沖縄県案件獲得の相談
- 9月13日配管工事会社神奈川県人材確保の相談
- 9月13日総合土木大阪府業務効率化システムの相談
- 9月13日塗装工事会社愛知県協力会社探しの相談
- 9月12日工務店北海道人材確保の相談
- 9月12日総合土木神奈川県人材確保の相談
- 9月12日防水工事会社群馬県協力会社探しの相談
- 9月12日塗装工事会社東京都案件獲得の相談
- 9月11日工務店福岡県案件獲得の相談
- 9月11日外構工事会社沖縄県業務効率化システムの相談
- 9月11日解体工事会社兵庫県人材確保の相談
- 9月11日電気設備工事会社三重県案件獲得の相談
- 9月10日内装工事会社兵庫県人材確保の相談
- 9月10日外構工事会社神奈川県協力会社探しの相談
- 9月10日総合建築宮崎県利益率向上の相談
- 9月9日総合土木兵庫県人材育成の相談
- 9月9日内装工事会社秋田県人材確保の相談
- 9月8日内装工事会社茨城県業務効率化システムの相談
- 9月8日工務店秋田県人材確保の相談
- 9月8日工務店広島県人材確保の相談
- 9月8日内装工事会社和歌山県高卒採用の相談
これは「点検を楽にする技術一覧」ではなく、提案の材料です
今回の公表は、単なる技術紹介ではありません。
発注者と施工者が、補強土壁の点検方法を比較しながら選びやすくするためのカタログです。
中小の土木会社にとって大事なのは、ここです。
「うちは点検専門会社ではないから関係ない」と見ると、少しもったいないです。
道路、造成、法面、擁壁、維持修繕に関わる会社であれば、補強土壁は現場のどこかで出てきます。新設でも、補修でも、災害後の確認でも出てきます。
そのときに、発注者から「どう点検するのか」「どの技術が現場に合うのか」と聞かれる場面があります。
そこで、NETISで整理された比較表をもとに話せる会社と、従来どおり「目視で確認します」とだけ答える会社では、提案の厚みが変わります。
公表された10技術は4つに分類されています
比較表では、10技術が大きく4つに整理されています。
1つ目は、壁面を計測する技術です。
- 点群データを活用したインフラ構造物の経年変化差分解析
- POF傾斜計
壁面材のはらみ、傾斜、段差、ズレなどを把握する方向の技術です。
2つ目は、補強土壁の内部状況を把握する技術です。
- インティグリティ試験
- POF水検知センサー
補強材の状態や、盛土内の水分の有無などを確認する方向の技術です。
3つ目は、引抜き抵抗を検知する技術です。
- KDパネル
- MEAパネル
- NDパネル
補強材と盛土材の抵抗力などを確認するための技術です。
4つ目は、補強材の応力または状態を把握する技術です。
- センサーアデム
- テールアルメFS
- 土中構造物の鋼材腐食検知センサー
補強材のひずみ、接続部の状態、鋼材腐食の検知などに関わる技術です。
ここで特に見ておきたいのは、既設補強土壁に適用できる技術と、新設時に仕込む技術が分かれていることです。
比較表では、既設補強土壁への適用が「適用可」とされ、現場実証が行われた技術は、主に次の4技術です。
- 点群データを活用したインフラ構造物の経年変化差分解析
- POF傾斜計
- インティグリティ試験
- POF水検知センサー
一方、KDパネル、MEAパネル、NDパネル、センサーアデム、テールアルメFS、土中構造物の鋼材腐食検知センサーは、比較表上では既設構造物への適用が「適用不可」とされています。
つまり、既設点検で使う技術なのか、新設時から将来点検を見込んで組み込む技術なのかを分けて考える必要があります。
既設補強土壁の点検では、工数・費用・現場条件をセットで見る必要があります
既設補強土壁に適用可能な技術では、比較表に作業時間や概算費用も示されています。
たとえば、点群データを活用した差分解析では、比較表上、1壁あたりの作業時間は現地4時間、内業8時間、合計12時間とされています。概算費用は、1壁・1,000㎡あたり268千円とされています。
また、現場実証では、壁面積988㎡に対して、近接目視点検との対比で工数80.9%減、点検費用25.1%減という結果が示されています。
これは強い数字です。
ただし、ここは冷静に見たいところです。
どの現場でも同じ削減率になる、という意味ではありません。
比較表にも、雨や雪、風、前面スペース、除草・伐採、交通規制の可能性など、適用条件が細かく書かれています。
たとえば点群計測では、壁面外周が草木で覆われている場合、除草・伐採が前提になります。補強土壁の前面に道路がある場合、交通規制が必要になることもあります。
POF傾斜計も、計測そのものは電源不要という特徴がありますが、設置高さによっては高所作業車や足場が必要になります。
インティグリティ試験は、1箇所あたり現地0.5時間、内業1時間、合計1.5時間、概算費用21千円とされています。非破壊で補強材の健全性を診断する技術です。
POF水検知センサーは、1箇所あたり現地2.5時間、内業2時間、合計4.5時間、概算費用248千円とされています。盛土内の水の有無を確認する技術です。
ここで経営者が見るべきなのは、単純な単価の安さではありません。
「何を知りたい現場なのか」と「その現場条件で本当に使えるのか」です。
はらみを広く見たいのか。
傾斜を継続的に見たいのか。
補強材の長さや異常を確認したいのか。
盛土内の水分を見たいのか。
目的が違えば、選ぶ技術も変わります。
新設工事では「将来の点検しやすさ」が提案価値になります
今回の比較表で、もう一つ大事なのは新設工事側です。
既設には適用できない技術でも、新設時に組み込むことで、将来の点検をしやすくする技術があります。
たとえば、引抜き抵抗を確認するためのパネルや、補強材の応力・腐食状態を把握するためのセンサー類です。
これらは、工事が終わってから「後で付けよう」と思っても難しい場合があります。
だからこそ、新設時の設計・施工段階で、将来の維持管理を考える必要があります。
公共工事では、初期施工だけでなく、ライフサイクルコストや維持管理性が重視される場面が増えています。
中小建設会社にとっても、これは差別化の入口になります。
たとえば、見積・技術提案の前段で、次のような確認ができます。
- この補強土壁は、将来どのような点検が想定されているか
- 災害後に確認しやすい構造になっているか
- 補強材や盛土内の状態を把握する手段があるか
- 発注者は維持管理段階のデータ取得を重視しているか
- NETIS技術の活用余地があるか
こうした問いを持てるだけで、提案の会話が変わります。
「施工して終わり」ではなく、「維持管理まで見据えた施工」を語れる会社になれるからです。
自社でまず確認したいこと
今回の資料を見たあと、中小建設企業がすぐに確認したいことは多くありません。
まずは、次の5つで十分です。
1つ目は、自社の受注エリアに補強土壁がどれくらいあるかです。
道路沿い、造成地、法面周辺、災害復旧箇所などを見直します。維持管理案件の可能性が見えてきます。
2つ目は、自社が点検・調査を単独で担うのか、協力会社と組むのかです。
点群計測、非破壊試験、センサー設置などは、測量会社、調査会社、メーカーとの連携が現実的な場合もあります。
3つ目は、NETIS技術を提案資料にどう使うかです。
NETISに掲載された比較表は、発注者との会話の土台になります。「この技術が万能です」ではなく、「この現場条件なら、この選択肢があります」と説明しやすくなります。
4つ目は、見積に抜けやすい項目です。
除草・伐採、足場、高所作業車、交通規制、内業解析、報告書作成、一般管理費、消費税などです。比較表の費用には含まれない項目があるため、実見積では注意が必要です。
5つ目は、新設工事で将来点検を織り込めるかです。
補強土壁は、完成後に内部が見えにくい構造物です。だからこそ、施工時に将来の確認方法を仕込む価値があります。
「技術を知っている会社」が維持管理の入口に立てます
建設業の人手不足は続いています。
点検も例外ではありません。
近接目視に頼るだけでは、現場の数、構造物の老朽化、災害後の確認ニーズに追いつきにくくなります。
その流れの中で、国交省がこうした技術比較表を整備していることには意味があります。
点検・維持管理の現場でも、技術を比較し、選び、組み合わせる力が求められているということです。
中小建設会社にとって、すべての技術を自社で持つ必要はありません。
でも、知っておくことはできます。
メーカーや調査会社と組むこともできます。
発注者に選択肢を示すこともできます。
今回の比較表は、そのための入口として使えます。
自社の維持管理提案にどうつなげるかを整理する
今回のようなNETIS技術は、資料を読んだだけでは自社の仕事に落とし込みにくいことがあります。
「うちの受注エリアで使えるのか」
「元請として提案に入れるべきか」
「協力会社と組むなら、どこまで自社で持つべきか」
そんな整理が必要になります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような技術情報についても、販路拡大、原価管理、提案力強化の観点から一緒に整理できます。
「うちの場合はどう考えるべきか」「何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、考えを整理する壁打ち先として使ってください。