国土交通省は令和8年9月28日、関東地方のマンション大規模修繕工事の発注を巡り、設計コンサルタント業務の受託者と工事受注者が公正取引委員会から独占禁止法違反と認定され、排除措置命令を受けたことを踏まえ、関係団体を通じてマンション管理組合等に相談窓口や発注時の留意点を周知しました。
発表日 | 令和8年9月28日 |
発表者 | 国土交通省 住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)付 |
対象となった分野 | マンション大規模修繕工事の発注等 |
背景 | 関東地方の大規模修繕工事を巡り、設計コンサルタント業務の受託者及び工事受注者が独占禁止法違反と認定され、排除措置命令を受けた事案が発生 |
国交省の対応 | 関係団体を通じ、管理組合等へ相談窓口、専門家活用、発注時の留意点等を周知 |
建設会社への主な示唆 | 大規模修繕工事の見積・入札・契約プロセスについて、透明性と説明可能性が一段と重視される流れ |
今回の発表は、直接にはマンション管理組合や区分所有者に向けた周知です。
ただし、受注側である建設会社にとっても他人事ではありません。
マンション大規模修繕工事では、今後「価格が適正か」だけでなく、「受注までの手続が公正に見えるか」がより厳しく見られる可能性があります。
1週間で 16件の相談 がありました
- 9月28日工務店千葉県業務効率化システムの相談
- 9月28日総合建築愛知県利益率向上の相談
- 9月28日防水工事会社東京都協力会社探しの相談
- 9月28日空調設備工事会社東京都案件獲得の相談
- 9月26日空調設備工事会社東京都案件獲得の相談
- 9月26日配管工事会社静岡県高卒採用の相談
- 9月26日空調設備工事会社徳島県案件獲得の相談
- 9月26日塗装工事会社和歌山県案件獲得の相談
- 9月25日工務店長崎県業務効率化システムの相談
- 9月25日内装工事会社茨城県人材育成の相談
- 9月24日リフォーム会社愛知県利益率向上の相談
- 9月24日リフォーム会社和歌山県高卒採用の相談
- 9月24日総合建築埼玉県業務効率化システムの相談
- 9月23日防水工事会社福岡県高卒採用の相談
- 9月23日ビルメンテナンス神奈川県高卒採用の相談
- 9月23日電気設備工事会社福岡県高卒採用の相談
- 9月22日プラント工事会社愛知県案件獲得の相談
- 9月22日空調設備工事会社大阪府人材育成の相談
- 9月21日電気設備工事会社沖縄県人材育成の相談
- 9月21日リフォーム会社三重県人材確保の相談
- 9月21日電気設備工事会社神奈川県業務効率化システムの相談
- 9月21日ビルメンテナンス東京都人材育成の相談
- 9月20日工務店茨城県業務効率化システムの相談
- 9月20日内装工事会社愛知県人材育成の相談
- 9月19日解体工事会社滋賀県業務効率化システムの相談
- 9月18日工務店神奈川県原価管理の相談
- 9月17日工務店三重県業務効率化システムの相談
- 9月16日総合建築千葉県業務効率化システムの相談
- 9月16日空調設備工事会社岐阜県案件獲得の相談
- 9月16日総合建築埼玉県利益率向上の相談
今回のポイントは「管理組合に相談先を知らせた」ことです
国交省は、今回の事案について、管理組合等の信頼を損ない、その利益を害し、マンションの適切な維持管理に必要な大規模修繕工事の適正な発注を阻害するものだとしています。
その上で、管理組合等に対し、主に次の情報を周知しました。
- 大規模修繕工事の発注等に関する相談窓口
- マンション管理士や建築士等の専門家の活用
- 設計・監理方式を採用する場合の留意点
- 談合違約金特約条項の設定が可能であること
- マンション改修マニュアル等の参考資料
相談窓口としては、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」や、マンション管理センターの相談窓口が示されています。
つまり、管理組合側が「この見積は妥当か」「この発注手続でよいのか」を外部に相談しやすくなる、ということです。
受注する建設会社側から見ると、これは良い緊張感です。
きちんとした会社ほど、説明できる準備をしておけば信頼につながります。
設計・監理方式では「中立性」が焦点になります
国交省の資料では、近年のマンション大規模修繕工事では、管理組合が設計コンサルタントに調査・設計、技術資料作成、工事業者の選定支援等を委託する「設計・監理方式」が広く採用されていると説明されています。
この方式では、設計コンサルタントが管理組合を支援します。
一方で、国交省は、設計コンサルタント及び工事業者が、工事の受注予定者や受注金額等について事前に調整するなどの不適正な行為を行うことがないよう留意し、設計コンサルタントの中立性を確保した上で、適正な手続の下で工事の受注者を選定することが重要だとしています。
ここは、中小建設会社にとって非常に大事です。
「昔からの付き合い」「紹介された案件」「見積の相談」が、外から見たときに不透明に見えないか。ここを点検する必要があります。
現場では、担当者同士の会話が先に進むことがあります。
「この仕様なら、このくらいですね」 「他社も出すと思いますが、うちはこの条件ならできます」 「スケジュール的に、今回はこの体制で見ています」
こうした実務上の会話そのものが、直ちに問題になるとは限りません。
ただし、受注予定者や受注金額の事前調整と疑われるようなやり取りは避けるべきです。
社長や役員だけでなく、営業担当、積算担当、現場代理人まで含めて、入札・見積時の接触ルールを社内で確認しておくことが大切です。
談合違約金特約条項が契約に入る可能性があります
今回の資料では、令和7年6月26日付の国交省事務連絡も参考として添付されています。
そこでは、マンション修繕工事においても、談合があった場合に受注者が違約金を支払う義務を請負契約上明確にするため、違約金特約条項を設定することが可能であると周知されています。
国交省が示した例では、独占禁止法違反に関する納付命令や排除措置命令、刑の確定などがあった場合に、発注者の請求に基づき、請負代金額の一定割合を違約金として支払う内容が例示されています。
また、国交省直轄工事の契約書規定では、談合等不正行為があった場合の違約金として、請負代金額の10分の1に相当する額などの規定が紹介されています。
民間マンション工事で、そのまま同じ内容になるとは限りません。
しかし、管理組合側が今後、契約書に談合違約金特約を入れる動きは出てくるかもしれません。
中小建設会社は、マンション大規模修繕工事の契約書に「談合違約金」「独占禁止法違反」「排除措置命令」などの条項が入っていないか、これまで以上に確認する必要があります。
契約書は、現場が始まる前の一枚の紙に見えます。
でも、事故が起きたときには会社の資金繰りや信用に直結します。
「よくある条項だから」と流さず、内容が重い場合は専門家に確認することも選択肢です。
中小建設会社が見直したい3つの実務
今回の発表を受けて、まず見直したいのは大きく3つです。
1. 見積作成の根拠を残す
大規模修繕工事は、数量、仕様、仮設、工程、材料、管理費など、金額の根拠が複雑になりやすい工事です。
だからこそ、見積金額の根拠を社内に残すことが重要です。
「なぜこの単価なのか」 「なぜこの工期なのか」 「なぜこの仕様を前提にしたのか」
後から聞かれたときに、説明できる状態にしておく。
これは守りだけではありません。
誠実な会社ほど、適正価格を説明する武器になります。
2. 競合他社との接触ルールを明確にする
工事業界は狭い世界です。
同じ地域で、同じ会社同士が、別の現場では元請・下請の関係になることもあります。
だからこそ、入札や見積に関する競合他社との情報交換は、社内ルールとして線引きしておく必要があります。
特に注意したいのは、金額、受注意向、辞退予定、役割分担のような情報です。
担当者任せにしないことです。
「これは話してよい」 「これは話さない」 「迷ったら上長に確認する」
このくらいシンプルなルールでも、現場の迷いは減ります。
3. 設計コンサルタントとの関係を説明できる形にする
設計・監理方式では、設計コンサルタントが発注者側を支援します。
そのため、建設会社と設計コンサルタントの関係が、管理組合から見てどう映るかが大切になります。
日常的な情報交換がある場合でも、工事の受注予定者や受注金額の調整と疑われない形にしておくことが必要です。
大切なのは、距離を置くだけではありません。
手続をきちんと踏むことです。
やり取りの内容を残す。
見積条件を明確にする。
不自然な指定や依頼があれば、社内で確認する。
こうした積み重ねが、会社を守ります。
これは「厳しくなる話」だけではありません
今回のニュースを、単に「また規制が厳しくなる」と受け止めると、少しもったいないです。
マンションの大規模修繕は、管理組合にとって大きな支出です。
区分所有者の方々にとっては、自分たちの住まいと資産に関わる大事な工事です。
そこで不信感が生まれると、真面目に施工する会社まで疑いの目で見られてしまいます。
逆に言えば、透明な見積、丁寧な説明、適正な手続を積み重ねる会社は、これからさらに選ばれやすくなる可能性があります。
価格だけで勝つのではなく、信頼で選ばれる。
「この会社なら、管理組合に説明しやすい」 「この会社なら、見積の根拠が明確だ」 「この会社なら、契約手続も安心だ」
そう思ってもらえる会社は強いです。
マンション大規模修繕工事に関わる会社は、今回の発表をきっかけに、営業・見積・契約・社内教育を一度点検しておきたいところです。
これからの受注力は、施工力だけでなく、説明できる経営管理力にも支えられていきます。
自社の受注プロセスを一度整理してみる
今回のようなニュースを読んで、「うちのやり方は大丈夫だろうか」「契約書や見積の管理まで手が回っていない」と感じる会社もあると思います。
その感覚は、とても自然です。
中小建設会社では、社長や幹部が営業、現場、資金繰り、人材対応まで抱えていることも少なくありません。
だからこそ、まずは自社の受注プロセスを一枚の紙に書き出すだけでも効果があります。
どこで見積条件を確認しているか。
誰が金額を決めているか。
競合や設計者とのやり取りをどう記録しているか。
契約書の確認を誰がしているか。
こうした整理から始めると、無理なく改善点が見えてきます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような制度・契約・受注管理の話も、「うちの場合はどこから見ればよいか」という段階から一緒に整理できます。
無理な営業はいたしません。まずは壁打ち相手として、状況を整理する場として使っていただければと思います。