資材価格の上昇が続くなかで見過ごせない、現場ごとの余剰資材
建築資材の値上がりが続くなか、仕入価格の交渉や見積への転嫁だけでは、利益を守りきれない場面が増えています。その一方で、倉庫や現場には、使い切れなかった材料が少しずつ残っている会社も少なくありません。
資材の売買や融通について話を聞くなかで、ある経営者からこんな言葉がありました。
「建築資材はかなり値上がりしています。でも、余剰が出なければ、値上がり分を吸収できるくらいの話になることもあります」
すべての値上がり分を資材ロスの削減だけで補えるわけではありません。ただ、仕入単価だけを見るのではなく、買った材料をどこまで使い切れているかを見ることが、収支改善の入口になります。
中国地方で内装工事と木工家具の製作を手がける10名弱の会社のように、現場ごとに異なる仕様へ対応している企業では、同じ材料を次の現場でそのまま使えるとは限りません。工事を一括で請ける範囲が広がるほど、扱う資材の種類も増え、余剰が見えにくくなる傾向があります。
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内装・設備・電気・塗装で使い残しが次の現場へ回りにくい構造
余剰資材の問題は、単に「多く発注している」ことだけでは説明できません。工種や請負形態によって、資材の余りやすさと再利用のしやすさが大きく異なります。
たとえば型枠工事では、使う合板や木材がある程度決まっており、保管場所があれば別の現場で使い回しやすいという声があります。一方、内装・設備・電気・塗装では、色、寸法、型番、仕上げ、メーカーなどが現場ごとに変わりやすく、余った材料が次の案件に合わないことがあります。
「型枠は使う材料が決まっているので、余っても比較的回しやすい。でも、内装や設備、電気、塗装は使い回せないものが多く、ロスが出やすいんです」
ここで問題になるのは、余った瞬間ではありません。再利用できるか判断されないまま倉庫へ移され、その後は誰も在庫の存在を正確に把握できなくなることです。
資材価格が上がるほど、少量の使い残しも積み上がれば無視しにくい金額になります。しかし、現場単位では「少し余っただけ」に見えるため、全社の損失として認識されにくいのが難しいところです。
自社購入か材料支給かで変わる、余剰在庫への向き合い方
余剰資材を減らす前に確認したいのが、誰が材料を購入し、誰に所有権があるのかです。
建設会社のなかには、自社で材料を仕入れて施工する会社もあれば、元請けや取引先から材料を支給され、手間受けを中心にする会社もあります。後者であれば、自社の判断で余った材料を売却したり、別現場へ転用したりできるとは限りません。
実際に、資材在庫について確認すると、「うちは材料を買っていません。支給材で手間受けだけです」という会社もあります。つまり、在庫対策は工種や会社規模だけで決めず、材料の購入主体と処分・転用の権限から整理する必要があります。
同じ設備工事会社でも、案件ごとに自社購入と支給材が混在していることがあります。この状態で倉庫だけを棚卸ししても、売却できる資材と動かせない資材が混ざり、活用が進みません。
また、余剰資材の売買や融通は、参加する会社の数だけで成立するものでもありません。工種や地域がばらばらでは、欲しい材料と余っている材料が合いにくいためです。
「近隣の同業者同士で、材料を融通し合える関係ができるかもしれません」
この言葉の通り、資材を動かすうえでは、会社数よりも『同じ工種で使えるか』『運べる距離にいるか』という組み合わせが重要です。
購入主体の確認から始める、在庫の可視化と社内外への転用
余剰資材への対策は、すべての在庫を一度に片づけようとせず、動かせる資材を見分けるところから始めると進めやすくなります。
まず、倉庫や現場に残っている資材について、最低限、次の情報をそろえます。
- 資材名と数量
- 型番、寸法、色などの仕様
- 保管場所
- 自社購入か支給材か
- 自社の別現場で使える可能性
- 近隣や同業者へ売却・融通できる可能性
細かな管理システムを先に整える必要はありません。最初の目的は在庫を数えることではなく、「自社で動かせる資材」と「自社の判断では動かせない資材」を分けることです。
そのうえで、転用可能性を次の順番で判断します。
1.次の自社現場で使いやすい資材
普段から繰り返し使う材料で、仕様の違いが少ないものは、社内転用を優先します。現場へ新たに発注する前に、倉庫在庫を確認する流れを組み込めれば、同じ材料の二重購入を減らせます。
2.自社では使いにくいが、同業者なら使える資材
内装材や設備機器、電材、塗料など、次の自社案件には合わなくても、同じ工種の会社では使える可能性があります。この場合は、売却や融通の対象として分けておきます。
判断するときは、「資材として価値があるか」だけでなく、次の条件も見ます。
- 同じ工種の会社が周辺にいるか
- 仕様を正確に伝えられるか
- 引き取りや受け渡しができる距離か
- 売却できる自社所有の資材か
近隣・同業者との融通は、資材の種類、工種、距離が合って初めて実務に乗ります。 全国へ広く出すことより、まずは運搬しやすい範囲の同業者との接点をつくるほうが、現場では動かしやすい場合があります。
3.購入主体や転用条件の確認が必要な資材
支給材や所有関係が曖昧なものは、すぐに売却対象へ入れません。案件ごとの取り決めを確認し、自社判断で動かせるかを切り分けます。
この整理を続けると、余剰資材の削減だけでなく、どの工種、どの仕様、どの発注方法で使い残しが出やすいかも見えてきます。発注量を見直すべき資材と、社外転用の出口を確保すべき資材を分けて考えられるようになります。
在庫の可視化は、倉庫をきれいにするためではなく、発注・保管・転用の判断を変えるために行うものです。
まとめ
建築資材の値上がりに対応するには、仕入価格や見積だけでなく、購入した材料を使い切れているかも確認する必要があります。とくに内装・設備・電気・塗装のように現場ごとの仕様差が大きい工種では、余った資材を次の現場へ回しにくく、ロスが残りやすくなります。
整理の順番は次の通りです。
- 自社購入か支給材かを確認する
- 資材名、仕様、数量、保管場所を見えるようにする
- 自社で再利用しやすい資材を分ける
- 同業者なら使える資材を売却・融通の候補にする
- 工種と地域が合う相手との接点をつくる
余剰資材対策の要点は、「何が余っているか」だけでなく、「誰の資材で、誰なら次に使えるか」まで整理することです。 小さな使い残しでも、継続して把握できれば、値上がりが続くなかで利益を守る一手になります。
自社の余剰資材をどこから整理するか考えるために
余剰在庫を減らしたくても、工種や請負形態によって取るべき方法は変わります。「うちの場合は何を社内転用できるのか」「支給材と自社購入材が混在していて、どこから整理すべきかわからない」という段階からでも問題ありません。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、原価管理、組織、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。資材在庫の見える化や運用方法を含め、ものづくりに集中できる体制を一緒に考えます。無理にサービスを勧めることはありませんので、自社に合う整理の順番を確認したいときにお声がけください。






























