国土交通省は、眠気警報装置・脇見警報装置、いわゆるドライバーモニタリングシステムについて、道路運送車両の保安基準等に要件を盛り込みました。運転者の眠気や脇見を検知し、警報する装置の義務化です。建設会社にとっては、すぐに全車両へ後付け対応が必要という話ではありませんが、今後の車両更新、安全管理、事故防止の考え方に関わる改正として押さえておきたい内容です。
改正内容 | 眠気警報装置・脇見警報装置の義務付け |
装置の内容 | 運転者の状態を監視し、眠気・脇見を検知した場合に警報する装置 |
対象車種 | 自動車(二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車並びに被牽引自動車を除く。) |
適用時期 | 新型車:令和13年9月/継続生産車:令和15年9月 |
公布・施行 | 公布:令和8年9月30日/施行:令和8年9月30日(義務付け部分は令和8年10月20日) |
背景 | 国連自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)の国際基準を国内基準に取り入れるもの |
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今回の改正は「車両そのものの安全基準」が一段上がる話です
今回の改正では、眠気警報装置と脇見警報装置を備えなければならないことが、保安基準に規定されました。
国土交通省の発表では、ドライバーモニタリングシステムは、カメラ等を使用して眠気や脇見を検知し、運転者の状況に応じて警報音等で注意する装置とされています。
背景にあるのは、国連自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)での国際基準の成立です。日本国内でも、その国際基準の発効に合わせて、道路運送車両の保安基準等に取り入れられます。
建設会社の実務目線で見ると、これは単なる自動車メーカー向けの技術基準にとどまりません。将来的に、会社が購入・リースする車両に標準的に求められる安全装備が変わっていくということです。
既存車両への即時後付け義務として読む必要はありません
今回の発表で特に確認しておきたいのは、適用時期です。
新型車は令和13年9月、継続生産車は令和15年9月からとされています。
つまり、今回の情報だけを見る限り、すでに保有している車両に対して、ただちにドライバーモニタリングシステムを後付けしなければならない、という内容ではありません。
中小建設会社としては、まず次のように捉えるのが現実的です。
- 直近で全車両に追加投資が必要になる話ではない
- 中長期の車両更新時に、安全装備の確認項目が増える
- 購入・リース・入替計画の中で、装備差や価格差を見る必要が出てくる
- 事故防止策を、教育だけでなく車両装備も含めて考える流れが強まる
制度対応として慌てるより、車両台帳、更新予定、リース満了時期、安全装備の現状を整理しておくことが第一歩です。
建設業では「移動中の安全」も経営課題になっています
建設業の安全管理というと、現場内の墜落・転落、重機災害、挟まれ・巻き込まれなどが中心になりがちです。一方で、会社の実務では、現場への移動、資材運搬、応援移動、営業・管理部門の車移動も日常的に発生します。
今回の改正が示しているのは、運転者の注意力や体調変化を、本人の気合いや経験だけに頼らない方向へ進んでいるということです。
特に中小建設会社では、朝が早い、移動距離が長い、複数現場を回る、繁忙期に疲労が溜まりやすい、といった事情があります。今回の装置義務化は、そうした働き方のすべてを直接変えるものではありません。ただし、社会全体としては、居眠り運転や脇見運転を「個人の不注意」だけでなく、仕組みで防ぐ対象として見始めていると考えられます。
この流れは、今後の安全衛生、労務管理、車両管理にもつながっていく可能性があります。
車両更新時に確認したいポイント
今回の義務化はまだ先の適用ですが、車両は数年単位で使うものです。特にリース契約や定期入替をしている会社では、今から確認項目に入れておくと判断がしやすくなります。
見るべきポイントは、次の通りです。
- 今後購入・リースする車両が、どの安全装備を備えているか
- 眠気警報・脇見警報が標準装備か、オプションか
- 装置が作動する速度域や警報内容を、運転者が理解できるか
- 安全装備付き車両を導入した場合、社内教育をどう変えるか
- 事故削減、保険、労務管理の観点で、車両投資をどう評価するか
PDFの別紙では、眠気警報に関する要件として、速度が70km/hから130km/hまでの車速範囲で作動することなどが示されています。また、脇見警報に関する要件として、速度20km/h以上で作動すること、一定時間手元を注視している場合に警報することなどが示されています。
ここで重要なのは、装置を付ければ安全管理が完了するわけではない、という点です。新しい安全装備は、社内ルールや教育とセットで効果を発揮します。
中小建設会社は「安全装備を使いこなす会社」になる準備を
今後、車両の安全装備はさらに高度化していきます。ドライバーモニタリングシステムも、その一つです。
中小建設会社にとって大切なのは、高額な最新車両を一斉に導入することではありません。むしろ、自社の車両利用の実態を把握し、優先順位をつけて、安全性とコストのバランスを取ることです。
例えば、次のような整理が有効です。
- 長距離移動が多い車両
- 若手や経験の浅い社員が運転する車両
- 複数人で共用している車両
- 事故・ヒヤリハットが発生しやすい運用
- リース満了や買替時期が近い車両
こうした車両から、安全装備の確認を進めると、無理のない形で更新判断に反映できます。
安全管理は、現場内だけでなく、現場へ向かう道中まで含めて会社の品質になっていきます。今回の改正は、その流れを先取りして考えるきっかけになります。
自社の車両管理と安全体制を整理する機会に
今回の義務化は、すぐに大きな対応を迫るものではありません。一方で、車両更新や安全管理は、気づいた時に一気に整えるのが難しい領域です。
まずは、保有車両の一覧、更新時期、用途、事故・ヒヤリハットの状況、安全装備の有無を整理してみるだけでも、次に見るべき点が明確になります。
ネクスゲートでは、建設企業の持続的成長を支援する立場から、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して、経営課題の整理と実行支援を行っています。車両管理や安全体制も、労務・原価・組織運営と切り離せないテーマです。
「うちの場合は、どこから整理すべきか」「車両更新と安全教育をどうつなげるべきか」という段階でも問題ありません。無理な営業はいたしませんので、必要な論点を一緒に整理する場としてご活用ください。