国土交通省は、令和7年10月3日に策定した第Ⅱ期「国土交通省統計改革プラン」について、策定から約1年が経過したことを受け、令和8年10月5日にフォローアップを実施したと発表しました。
今回の発表は、建設会社に新しい義務を課すものではありません。ただし、建設受注統計事案の教訓継承、統計作成プロセスのデジタル化、オンライン回答率の向上、建設受注統計・建設施工統計の見直しが含まれており、中小建設業にとっても「今後の調査対応」と「経営判断に使う統計の見方」に関わる内容です。
発表内容 | 第Ⅱ期「国土交通省統計改革プラン」のフォローアップ |
発表日 | 令和8年10月6日 |
対象となる主な分野 | 国土交通省所管統計の品質改善、統計DX、オンライン回答率向上、業務マニュアル改善 |
建設業との関係 | 建設受注統計事案の教訓継承、建設受注統計・建設施工統計の見直しに言及 |
中小建設業が見るべき点 | 統計調査のオンライン化、公的統計の信頼性改善、社内の回答体制づくり |
1週間で 18件の相談 がありました
- 10月6日防水工事会社大阪府業務効率化システムの相談
- 10月6日配管工事会社福井県人材確保の相談
- 10月5日電気設備工事会社大阪府高卒採用の相談
- 10月5日配管工事会社埼玉県人材育成の相談
- 10月5日ビルメンテナンス千葉県案件獲得の相談
- 10月4日総合建築長野県人材育成の相談
- 10月4日電気設備工事会社新潟県人材育成の相談
- 10月4日内装工事会社鳥取県人材確保の相談
- 10月4日塗装工事会社愛知県人材育成の相談
- 10月3日空調設備工事会社鳥取県業務効率化システムの相談
- 10月3日総合建築茨城県原価管理の相談
- 10月2日総合建築岩手県利益率向上の相談
- 10月2日内装工事会社熊本県原価管理の相談
- 10月2日リフォーム会社滋賀県業務効率化システムの相談
- 10月2日造園会社福岡県案件獲得の相談
- 10月1日電気設備工事会社島根県人材確保の相談
- 10月1日配管工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
- 10月1日総合土木岩手県人材確保の相談
- 9月30日外構工事会社鳥取県人材育成の相談
- 9月30日解体工事会社埼玉県協力会社探しの相談
- 9月29日プラント工事会社群馬県人材育成の相談
- 9月29日総合土木宮城県業務効率化システムの相談
- 9月29日解体工事会社栃木県利益率向上の相談
- 9月29日設備保全会社愛知県人材育成の相談
- 9月28日工務店千葉県業務効率化システムの相談
- 9月28日総合建築愛知県利益率向上の相談
- 9月28日防水工事会社東京都協力会社探しの相談
- 9月28日空調設備工事会社東京都案件獲得の相談
- 9月26日空調設備工事会社東京都案件獲得の相談
- 9月26日配管工事会社静岡県高卒採用の相談
今回のポイントは「統計の信頼性をどう取り戻すか」です
今回のフォローアップの背景には、過去の統計の不適切処理事案があります。国土交通省は、その事案を風化させず、所管統計の品質改善を進めるために、第Ⅱ期「国土交通省統計改革プラン」を策定しています。
今回示された主な取組は、次のようなものです。
- 建設受注統計事案の概要と対応策を説明する研修プログラムを作成
- 全職員に対して、事案から得られた教訓を継承
- 統計人材の育成、統計リテラシー向上に向けたレベル別カリキュラムを構築
- 統計作成プロセスのデジタル化や生成AI等の活用を検討
- オンライン回答率の向上を推進
- 業務マニュアルの改善を継続
建設会社から見ると、「国交省内部の話」に見えるかもしれません。たしかに、今回の発表だけで、明日から現場や管理部門の仕事が大きく変わるわけではありません。
ただ、建設業は公的統計と距離が近い業界です。受注、施工、労務、資材、公共投資、出来高などの数字は、業界全体の見通しや政策判断に使われます。したがって、統計の品質改善は、巡り巡って建設会社の経営環境を読むための土台に関わる話です。
建設受注統計・建設施工統計の見直しに注意したい
PDF資料では、建設受注統計について、不適切処理事案への当面の対処は概ね実施したとされています。そのうえで、次の段階として、建設受注統計の根幹である標本設計のあり方等が時代に即しているかを検討するとされています。
あわせて、建設施工統計の見直しも行い、両統計の基本的な方向性を令和8年度までに整理すると記載されています。
ここは、中小建設業として押さえておきたい部分です。
統計の設計が変わると、業界の見え方が変わる可能性があります。たとえば、受注動向や施工実績の把握方法が変われば、地域別・業種別・規模別の実態把握にも影響が出るかもしれません。今回の資料だけでは、具体的に各社の調査票や回答項目がどう変わるかまでは示されていませんが、今後、統計調査の内容や回答方法が段階的に見直される可能性は意識しておくべきです。
経営者としては、次のような見方ができます。
- 公的統計は、今後さらに「使われる統計」へ改善されていく方向にある
- 建設市場の見通しを読むうえで、統計の前提や調査方法にも目を向ける価値が高まる
- 自社が統計調査の対象となった場合、回答の正確性が業界全体の実態把握につながる
日々の経営では、肌感覚がとても大切です。一方で、採用、設備投資、営業エリアの拡大、公共工事への向き合い方を考えるときには、肌感覚だけでは判断しきれない場面もあります。信頼できる統計をどう読むかは、中小建設業の経営判断力そのものに関わってきます。
統計調査のオンライン回答は、今後さらに標準になっていく
今回の資料では、オンライン回答率の向上も重点分野として示されています。
国土交通省の統計調査では、94%の統計調査でオンライン回答が可能とされています。一方で、オンライン回答が十分に進んでいないことが課題とされ、第二期プランの期間中を目途に、全体で7割以上のオンライン回答率を目指すとされています。
資料では、オンライン回答を増やすための好事例として、次のような内容が挙げられています。
- オンライン回答を標準的な手段として案内する
- スマートフォンやタブレットでも回答できるようにする
- 週末・月末前・期限直前など、回答されやすいタイミングで督促する
- QRコード、自動計算、自動入力、エラーチェック機能などを活用する
これは、建設会社側から見ると、今後の統計調査対応が「紙で届いたものを手書きして返す」から、よりオンライン前提に近づいていく流れだと読めます。
特に中小建設業では、総務・経理・安全書類・入札書類・許認可・社会保険・労務管理など、管理部門に多くの書類対応が集中しがちです。そこに統計調査も加わるため、担当者が属人的に処理している会社も少なくありません。
だからこそ、今のうちに小さく整えておきたいのは、次の3点です。
- 国や自治体から届く統計調査を誰が確認するかを決めておく
- オンライン回答に必要なID・パスワード・回答期限を管理する場所を決めておく
- 売上、受注、工事高、従業員数など、よく聞かれる数字の社内確認ルートを決めておく
大きなシステムを入れる話ではありません。まずは、封筒やメールが届いたときに「これは誰が見るのか」が曖昧にならない状態をつくるだけでも、十分に実務負担は減らせます。
統計DXと生成AI活用は、行政側の業務改善だけで終わらない
今回のフォローアップでは、統計作成プロセスのデジタル化や、生成AI等の活用も取り上げられています。
資料では、生成AI等に期待する役割として、調査票の内容検査・審査業務の効率化、集計結果の分析・傾向判定、AI-OCRによる紙調査票の自動読取、問い合わせ対応の自動化、異常値・欠損値の自動検出などが挙げられています。
これは行政内部の取組ですが、建設会社にとっても示唆があります。
行政側が統計DXを進めるということは、今後、企業側にも次のような変化が起きやすくなります。
- 紙よりもデータでの提出が前提になっていく
- 入力ミスや未回答項目がシステム上でチェックされやすくなる
- 過去回答との整合性が見られやすくなる可能性がある
- 問い合わせや督促も、メール・システム・チャットボット等に寄っていく可能性がある
ここで大切なのは、「デジタルに詳しい担当者がいるか」だけではありません。むしろ、自社の数字がどこにあり、誰が正しい数字を確認できるかです。
たとえば、受注額は営業が持っている。完成工事高は経理が持っている。従業員数は総務が持っている。外注費や人工は工事部が持っている。こうした会社は多いはずです。
統計調査に限らず、補助金、入札、金融機関対応、採用計画、原価管理でも同じことが起きます。数字の置き場と確認ルートを整えることは、会社全体の経営管理を強くする基礎工事です。
中小建設業は「統計を出す側」と「統計を使う側」の両方で考える
今回の発表を、自社経営に引き寄せるなら、見るべき視点は2つです。
1つ目は、統計調査に回答する側としての備えです。
今後、オンライン回答が進み、回答方法もデジタル前提になっていく可能性があります。調査依頼が来たときに慌てないよう、社内の担当、数字の確認方法、回答期限の管理を整えておくことが重要です。
2つ目は、統計を使う側としての見方です。
建設業の経営判断では、地域の公共投資、民間建築の動き、受注環境、労務需給、資材価格などを読む必要があります。公的統計は万能ではありませんが、見方を持てば強い材料になります。
特に、これから人口減少、担い手不足、賃上げ、時間外労働規制、資材価格変動が重なっていくなかで、経営判断はますます難しくなります。だからこそ、自社の肌感覚と公的データを組み合わせて判断する力が大切になります。
「最近、元請からの見積依頼が増えている」 「周辺地域では公共工事が少し落ち着いてきた」 「採用単価が上がっている」 「外注先の確保が難しくなっている」
こうした現場の実感を、公的統計や業界データと照らし合わせると、次の一手が見えやすくなります。営業を強めるのか。利益率を優先するのか。採用を急ぐのか。協力会社網を広げるのか。設備投資を待つのか。統計は、現場感覚を否定するものではなく、経営判断の精度を上げるための補助線です。
自社の数字と業務の流れを、少しずつ整える機会にする
今回の発表は、すぐに対応が必要な制度改正ではありません。ただし、国土交通省が統計の品質改善、オンライン化、デジタル化を継続的に進めていることは確認できます。
中小建設業としては、これをきっかけに、統計調査対応だけでなく、社内の数字管理を見直す良い機会にできます。
たとえば、次のような整理です。
- 受注、売上、完成工事高、粗利をどの資料で確認しているか
- 現場別の原価や外注費をどのタイミングで把握しているか
- 公的機関から届く調査・照会・申請書類を誰が管理しているか
- Excel、会計ソフト、施工管理ツールの数字が二重管理になっていないか
- 経営会議で見る数字と、現場が見ている数字がつながっているか
こうした整理は、派手ではありません。しかし、会社の足腰を強くします。これからの建設業経営では、現場力に加えて、数字を整え、使える形にする管理力が競争力になります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。「統計調査や行政対応をきっかけに、社内の数字管理も見直したい」「うちの場合、何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、まずは状況整理の壁打ちとしてご相談ください。