国土交通省は、静岡県の狩野川水系来光川流域について、特定都市河川浸水被害対策法に基づく「特定都市河川」の指定に向けた手続きに着手しました。今後、関係機関への意見聴取を行い、資料上では令和8年12月の指定が予定されています。指定後は、流域水害対策協議会の設置、流域水害対策計画の策定へ進む見込みです。
発表内容 | 狩野川水系来光川等の「特定都市河川」指定に向けた手続き開始 |
対象流域 | 静岡県の狩野川水系来光川流域 |
流域面積 | 79km2 |
主な関係自治体 | 静岡県、伊豆の国市、三島市、函南町 |
主な対象河川 | 来光川、柿沢川、堂川、函南冷川等。洞川も静岡県知事指定として同時に手続き着手 |
今後の予定 | 令和8年9月に法定意見聴取開始、令和8年12月に特定都市河川・流域の指定予定 |
指定後の流れ | 流域水害対策協議会の設置、流域水害対策計画の策定 |
建設業が見るべき点 | 開発行為の許可・届出、雨水貯留浸透施設、河川改修、排水機場、下水道整備など |
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「河川の指定」ではなく、流域全体のルールが変わる話です
今回の発表は、単に特定の河川名が追加されるという話ではありません。重要なのは、特定都市河川に指定されると、河川だけでなく流域全体で水害リスクを下げるための法的枠組みが動き出すという点です。
資料では、特定都市河川浸水被害対策法のもとで、次のような取組が示されています。
- 雨水浸透阻害行為の許可
- 雨水貯留浸透施設の整備促進
- 保全調整池の指定
- 貯留機能保全区域の指定
- 浸水被害防止区域の指定
- 河川改修、排水機場、下水道整備などのハード整備
- 流域水害対策協議会の設置と計画策定
中小建設業にとっては、ここが実務上の分かれ目です。今後の工事需要が生まれる可能性がある一方で、開発・造成・外構・排水計画に関する確認事項も増えると見ておく必要があります。
開発・造成に関わる会社は「雨水浸透阻害行為」を確認したい
参考資料では、田畑等の土地が開発され、雨水が地下に浸透せず河川へ直接流出することで水害リスクが高まることを防ぐため、一定規模以上の開発について貯留・浸透対策を義務付ける仕組みが示されています。
対象として示されているのは、公共・民間による1,000㎡以上の雨水浸透阻害行為です。ただし、資料上では条例で基準強化が可能とされています。
これは、地域の建設会社にとって次のような案件で関係してきます。
- 宅地造成
- 工場・倉庫・事業所用地の整備
- 駐車場整備
- 資材置場や作業ヤードの整備
- 舗装面積が大きい外構工事
- 民間開発に伴う排水・調整池・浸透施設工事
現時点では指定に向けた手続き段階ですが、来光川流域で開発・造成・舗装・排水に関わる会社は、指定後の許可・届出・設計条件を早めに確認する体制をつくっておくべきです。
特に元請として民間開発を受ける会社は、「今まで通りの排水計画でよいか」を発注者任せにしないことが大切です。制度に合わない計画で進むと、設計変更、着工遅れ、追加費用の説明が後から発生しやすくなります。
公共工事だけでなく、民間工事にも影響が出る可能性があります
特定都市河川の枠組みでは、河川改修や排水機場などの公共工事が注目されます。資料でも、流域水害対策計画に位置付けられたメニューとして、河道掘削、堤防整備、遊水地、輪中堤、排水機場の機能増強等が示されています。
これは地域の土木会社にとって、今後の発注動向を見るうえで重要です。
一方で、今回の制度は公共工事だけの話ではありません。参考資料では、民間事業者等による雨水貯留浸透施設整備計画の認定も示されています。規模要件としては、原則として30m3以上、条例で0.1〜30m3の間で基準緩和が可能とされています。
つまり、今後は民間側でも、敷地内の雨水貯留・浸透機能をどう確保するかが論点になりやすくなります。
建設会社としては、単に「施工できます」ではなく、開発計画の初期段階から、雨水処理・貯留・浸透・維持管理まで含めて提案できる会社が選ばれやすくなると考えられます。
来光川流域では、内水被害への対応が大きな背景です
今回の指定手続きの背景には、来光川流域および洞川流域での内水被害があります。
資料では、狩野川流域において、昭和33年9月の狩野川台風、平成10年8月洪水、平成16年10月洪水、令和元年10月洪水、令和6年7月洪水などが挙げられています。特に来光川や洞川を含む狩野川中流域では、内水被害が発生してきたとされています。
主な被害として、資料には次のような数値が示されています。
- 平成10年8月:浸水面積317ha、浸水家屋は床上223戸・床下297戸
- 平成16年10月:浸水面積27ha、浸水家屋は床上5戸・床下15戸
- 令和元年10月:浸水面積240ha、浸水家屋394戸
- 令和6年7月:浸水面積約20ha、浸水家屋は床上1戸・床下10戸
この背景を見ると、今回の動きは一時的な対策ではなく、流域の土地利用、排水、河川、下水道、民間開発をまとめて見直していく流れと捉えるべきです。
地域建設業にとっては、災害対応の延長線上にある仕事です。応急対応だけでなく、事前防災・減災に関わる技術と提案力が、今後さらに重要になります。
中小建設業が今から確認したいこと
今回の発表を受けて、特に来光川流域や周辺で仕事をしている会社は、次の点を確認しておくと実務につながります。
1つ目は、自社の施工エリア、資材置場、作業ヤード、所有地、受注予定地が対象流域に入るかです。流域指定は行政区域だけでなく、水の流れに基づく考え方です。三島市、伊豆の国市、函南町周辺で事業をしている場合は、地図や自治体情報で確認しておきたいところです。
2つ目は、民間開発案件で1,000㎡以上の土地利用変更や舗装を伴う案件がないかです。資料上では、1,000㎡以上の雨水浸透阻害行為が許可対象として示されています。条例で基準が強化される可能性にも注意が必要です。
3つ目は、見積・設計協力の段階で、雨水貯留浸透施設や排水計画を別枠で確認することです。後から対策が必要になると、発注者との費用負担の話が難しくなります。初期段階で論点化しておくことが、トラブル予防になります。
4つ目は、今後策定される流域水害対策計画を継続して見ることです。指定後に協議会が設置され、計画が策定されます。公共工事の内容、優先順位、整備箇所、民間に求められる対策は、この計画に表れてくる可能性があります。
5つ目は、治水・排水・浸透・貯留に関する施工実績や提案資料を整理しておくことです。これからは、価格だけでなく「水害リスクを下げる施工ができるか」が評価される場面が増えていきます。
全国的にも「水害リスクを前提にした建設業」へ進んでいます
参考資料では、気候変動により、本支川合流部や狭窄部などで従来想定していなかった規模の水災害が頻発していると説明されています。そのうえで、特定都市河川の指定を全国の河川へ拡大し、国・都道府県・市町村・企業等が協働して流域治水を進める方針が示されています。
ここから読み取れる大きな流れは明確です。建設業は、これまで以上に「水害リスクを前提にした土地利用・施工・維持管理」に関わる産業になっていくということです。
これは、土木会社だけの話ではありません。建築、外構、舗装、造成、設備、解体、土地活用に関わる会社にも関係します。敷地の使い方、雨水の流し方、貯め方、浸透させ方が、経営上の重要な知識になります。
今回の来光川流域の動きは、対象地域の会社にとっては直接の実務課題です。同時に、他地域の会社にとっても、今後同じような指定が広がる前提で、自社の仕事の進め方を見直す材料になります。
自社への影響を一度整理しておく
今回のような制度は、発表時点では少し遠い話に見えます。しかし、指定後に計画が動き始めると、開発案件、公共工事、民間工事、見積条件に少しずつ影響が出てきます。
まずは、自社の営業エリア、施工案件、土地利用、得意工種がこの流れとどう関係するかを整理することが現実的な第一歩です。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような制度変更についても、「うちの場合は何を見ればよいか」「公共工事や民間案件への影響をどう整理すべきか」という段階から一緒に考えることができます。
ものづくりに集中できる建設業界へ。無理な営業はいたしませんので、必要なタイミングで情報整理の場としてご活用ください。