前提|社員20名前後、職方を含めると50名前後の専門工事会社が若返りに再挑戦している状況

ここでは、職人層と管理側の両方を厚くしたい専門工事会社の悩みを扱います。

ある専門工事会社では、社員は20名前後、専属の職方を含めると50名前後の体制で現場を回しています。仕事は途切れず、長年の取引先もあります。ただ、施工力を広げるには、職人層の増強が欠かせません。

以前は若手が毎年入り、会社の中で育っていく流れがありました。その時代に育った人たちが、今の会社の中心戦力になっています。

ところが、ここ数年は若い人の採用が難しくなり、入社しても夏まで持たずに辞めてしまうケースが続いていました。担当者からは、こんな声が出ていました。

「今年で3年目なので、ここで育て方を変えないといけないと思っています」

採用できるかどうかだけでなく、入ってきた若手をどう受け入れ、どう独り立ちまで持っていくか。そこが会社の将来に直結するテーマになっていました。

課題|ベテラン職人につけるだけでは未経験者が独り立ちする前に離れてしまう

課題は、若手を入れた後の育成が、現場任せになりやすいことです。

これまでは、入社した若手をベテランの職人につけて、現場で仕事を覚えてもらう形が中心でした。建設業では自然な育て方ですし、長く機能してきた方法でもあります。

ただ、今はそのやり方だけでは難しくなっています。

理由の一つは、外仕事の厳しさです。夏の暑さは年々厳しくなり、未経験者にとっては体が追いつかない場面もあります。もう一つは、教える側と教わる側の相性です。ベテランの技術が高くても、若手が安心して質問できる関係になるとは限りません。

さらに、若手自身の感覚も変わっています。

「合わなかったら、すぐ次を考える」という動きは、中小企業だけの問題ではありません。大手企業でも同じように悩んでいます。だからこそ、若手を責めるのではなく、会社側の受け入れ方を見直す必要があります。

採用した後に「現場で覚えてきて」だけでは、本人も会社も苦しくなってしまいます。

背景|昔の2倍、3倍働いて覚えた世代と今の働き方の差が育成のズレを生んでいる

背景には、職人として育つまでの時間の使い方が大きく変わったことがあります。

今のベテラン層は、若い頃に長い時間を現場で過ごし、見て、真似して、怒られながら覚えてきた世代です。担当者も「今の職方は、今採用される若手の2倍から3倍は働いてきたと思う」と話していました。

しかし、今の若手に同じ働き方を求めることはできません。コンプライアンスもありますし、働く時間そのものも変わっています。昔より現場にいる時間が短くなるなら、同じスピードで技術を覚えるのは簡単ではありません。

ここに、育成のズレが生まれます。

教える側は「これくらい見ていれば分かるだろう」と思う。教わる側は「何をどこまでできればよいのか分からない」と感じる。お互い悪気はなくても、結果として若手が早く離れてしまうことがあります。

会社として本当に育てたいのは、ただ人数を増やすことではありません。

「この仕事で独り立ちして、家庭を持って、自分一人でも生きていけるようになってほしい」

そんな思いがあるからこそ、育て方を個人の頑張りだけに任せないことが大切になります。

解決|採用と同時に1年目のカリキュラムと受け入れ担当を会社の仕組みにする

解決の入口は、採用活動と育成活動を分けずに考えることです。

若手を採る前から、「入社後にどう育つのか」を会社として設計しておく必要があります。特に未経験者を採用する場合は、1年目の過ごし方をできるだけ見える形にしておくことが重要です。

たとえば、次のような整理です。

  • 入社後1か月で覚えること
  • 夏場に無理をさせない現場配置や声かけ
  • 3か月後、半年後、1年後の到達目安
  • 誰が技術を教え、誰が生活面や不安を聞くのか
  • ベテラン職人に任せる部分と、会社が見る部分の線引き

ポイントは、ベテランにつけること自体をやめるのではなく、会社がその周りを支えることです。

技術は現場でしか身につかない部分があります。一方で、未経験者がつまずくのは技術だけではありません。暑さ、体力、人間関係、将来の見え方、質問のしづらさ。そうした小さな不安を拾える仕組みがあると、若手は踏ん張りやすくなります。

また、採用時にも育成の流れを伝えられるようになります。

「うちは未経験でも、こういう順番で育てます」

この一言が言える会社は、若手本人にも親御さんにも安心感を与えます。無名の会社であっても、育てる覚悟と道筋が見えれば、選ばれる理由になります。

まとめ

若手職人の採用が難しい会社ほど、採用後の育成設計が大切です。

入社しても夏まで続かない、ベテランとの相性に左右される、昔と同じ時間をかけて覚えさせることができない。こうした悩みは、どれも現場の努力不足ではなく、時代の変化によって起きているものです。

だからこそ、会社として「どう育てるか」を見える形にする必要があります。

未経験者を採るなら、育成カリキュラム、受け入れ担当、面談のタイミング、現場配置の考え方まで含めて整えていく。そこまで準備できると、採用活動そのものも強くなります。

若い人に選ばれる会社は、入口だけでなく、入った後の安心感をつくっています。職人を増やしたい会社ほど、まずは「入社後の半年」をどう支えるかから見直してみる価値があります。