前提|年商十数億円規模まで伸びた会社で、総勢30名前後の体制に負荷が集中している状態

ここでは、売上をもう一段伸ばしたい一方で、現場と事務の両方に負荷がかかっている建設会社の状況を整理します。

ある建設会社では、現在の売上ペースは年商十数億円規模。目標はさらに上に置いています。社員は二十数名、パートや派遣を含めると総勢30名前後。過去と比べれば人は増えていますが、受注量も増え、以前の延長線上では回しきれない局面に入っていました。

特に悩ましいのは、年間を通してずっと人が足りないというより、ピーク月に一気に処理量が跳ね上がることです。

「普段は何とか回せている。でも、繁忙期になると急に無理が出る」

建設業ではよくある話ですが、この“何となく足りない”をそのままにすると、採用すべき人数も、外注すべき仕事も、DXで減らすべき工数も見えにくくなります。

課題|売上目標から逆算した人数では、ピーク月の687件のような山を説明できない

この会社では、案件データを金額帯ごとに見ると、小口案件が非常に多いことが見えてきました。たとえば、10万円以下の案件が千件単位、50万円以下の案件も数百件単位で存在します。

売上だけを見れば、大型案件の比重に目が行きがちです。しかし実際の現場負荷は、売上金額だけでは決まりません。小さな案件でも、現地確認、写真整理、見積、顧客対応、報告書作成などの手間は発生します。

そのため、次のようなズレが起きます。

  • 売上はそこまで大きくないのに、件数が多くて現場が詰まる
  • 1件あたりの金額は小さいが、確認・報告の手間は減らない
  • 月平均では回っているように見えて、ピーク月だけ破綻しかける
  • マネージャーが顧客対応や人の管理に入ると、現場担当が実質1名減る

あるピーク月では、月間600件を超える案件が動いていました。案件ランクごとに仮の工数を置いて積み上げると、30名前後の体制では足りず、35名前後の稼働が必要になる可能性が見えてきました。

ここで大事なのは、「だからすぐ5人、10人採用しましょう」と決めないことです。採用だけで山を埋めようとすると、固定費が増え、利益が残りにくくなるからです。

背景|小口案件・修繕案件・管理業務が混ざり、誰が何を担うべきかが曖昧になっている

人員不足の背景には、単純な人数の問題だけでなく、業務の混ざり方があります。

この会社では、通常案件に加えて修繕系の案件も動いていました。修繕は修繕で安定した受注量があり、現場側では「今の量なら何とか回せる」という感覚もあります。ただし、簡易な修繕と、対応期間が長くなる修繕では、必要な工数がまったく違います。

さらに、マネージャー層の役割も重要です。

マネージャーが本来やるべきことは、現場メンバーの管理、顧客対応、判断が必要な案件の交通整理です。しかし忙しくなると、プレイヤーとして現場実務も担わざるを得ません。すると、表面上は1人いるように見えても、実際には管理と実務のどちらかが薄くなります。

スタッフへの面談では、勤務時間への不満も出ていました。これは単なる労務の話ではなく、業務量と役割設計が合っていないサインでもあります。

「人が足りない」の中には、少なくとも次の3つが混ざっています。

  • 本当に採用しないと埋まらない仕事
  • DXやツールで減らせる仕事
  • 外注や協力会社に出せる仕事

この切り分けをしないまま採用を進めると、本来は外に出せる作業まで正社員で抱え込むことになります。

解決|案件ランク別の工数表を作り、採用・DX・外注を同じ土俵で比べる

必要なのは、感覚ではなく、案件データを使った人員計画です。

まずは、案件を金額帯や対応内容でランク分けします。たとえば、少額案件、中規模案件、高額案件、簡易修繕、長期対応の修繕といった切り口です。そのうえで、1件あたりにかかる標準工数を仮置きします。

最初から完璧でなくて構いません。大切なのは、月別の件数に工数を掛け合わせて、必要人数を見える化することです。

考え方はシンプルです。

  • 案件ランクごとに、1件あたりの人日を置く
  • 月別の件数を掛け合わせる
  • 月平均とピーク月の必要人数を分けて見る
  • マネージャーや顧客対応など、現場実務以外の時間も考慮する
  • 採用、DX、外注で何人分を吸収できるか試算する

たとえば、ピーク月に35人分の稼働が必要で、現状が30人前後だとします。その差をすべて採用で埋めるのではなく、「報告書作成で0.5人分減らす」「外注で2人分を吸収する」「協力会社に一定件数を委託する」と分解していきます。

すると、採用人数も現実的になります。

いきなり10人採るのではなく、まず今年は数名を採用し、残りはDXと外注で吸収する。こうした判断ができるようになります。

また、名前入りの組織図を作ることも有効です。部署名だけの組織図ではなく、「誰が、どの案件領域を、どの役割で担っているか」を見える化します。すると、ある人に顧客対応・現場確認・報告書確認が集中している、といった偏りが見えます。

人員計画は、単なる採用計画ではありません。現場の仕事を分解し、どこを人で担い、どこを仕組みで減らし、どこを外に出すかを決めるための土台です。

まとめ

売上が伸びている会社ほど、「人が足りない」という悩みは出やすくなります。ただし、その不足を売上目標だけで判断すると、採用人数を見誤ることがあります。

特に建設業では、案件金額よりも件数や報告業務が現場負荷を左右します。小口案件が多い会社、修繕案件が増えている会社、ピーク月だけ極端に忙しくなる会社は、案件ランク別に工数を積み上げてみるだけでも、見える景色が変わります。

「何人採るか」を決める前に、「何人分の仕事があり、そのうち何人分を採用以外で減らせるか」を見ることが大切です。

採用、DX、外注をバラバラに考えるのではなく、同じ必要人数の表の上で比べる。そこから、無理のない成長計画が作りやすくなります。