前提|10億円台の売上をさらに伸ばしたい会社で、社員20名台後半とパート数名が複数部門を支えている状態

まず、前提となる会社の現在地をそろえます。

ある建設会社では、年間売上が10億円台前半から半ばに差しかかる規模まで伸びていました。次の目標も見えており、受注を増やせばまだ伸びる余地があります。

一方で、人員は正社員が20名台後半、パートが数名という体制です。修繕部門は別で動いているものの、小口案件から比較的大きな案件までが同時に流れ、担当者ごとの負荷はかなりばらついていました。

現場側の感覚としては、「通常月なら何とかなるが、ピーク月は明らかに苦しい」という状態です。ここで重要なのは、年間売上や月平均の案件数だけを見ても、本当に必要な人数は判断しづらいという点です。

課題|月平均では問題なく見えても、600件超のピーク月では必要人数が一気に跳ね上がる

ここでは、人員不足がどこで見えにくくなるのかを整理します。

この会社では、小口案件が非常に多く、少額帯の案件だけで年間千件を超えるようなボリュームがありました。中規模の案件も数百件あり、さらに手間のかかる案件も混ざっています。

月平均でなら「今の人数でも何とか回っている」と見えるかもしれません。しかし、あるピーク月には月600件を超える案件が重なり、単純な件数だけでなく、案件ごとの重さを加味すると、現場を回すには30名台半ばほどの体制が必要になる見立てでした。

さらに、マネージャーが顧客対応やメンバー管理に時間を使うと、現場実務に入れる人数は見かけより少なくなります。名簿上は1名いるように見えても、実際には施工管理・顧客対応・教育・トラブル対応で分散し、現場の実働としては0.5人分しか出せないこともあります。

「人数は増えたはずなのに、現場が楽にならない」

こうした感覚が出るときは、人数そのものではなく、役割とピーク負荷の見方がずれている可能性があります。

背景|小口案件の多さと勤務時間への不満が、採用だけでは解けない負荷を生んでいる

次に、なぜ単純な増員だけでは解決しにくいのかを見ていきます。

現場へのヒアリングでは、勤務時間に関する不満が多く出ていました。これは、単に忙しいという話ではありません。小口案件が多い会社では、1件あたりの売上は大きくなくても、連絡、写真整理、報告書、請求処理、顧客対応などの周辺業務が積み重なります。

小口案件が多いほど、件数に比例して事務作業や確認作業も増えます。しかも、それらは「誰かが少しずつ頑張る」形で吸収されやすいため、経営側からは見えにくくなります。

採用で解決しようとすると、確かに一時的には楽になります。ただし、必要人数をすべて正社員採用で埋めようとすると、固定費が大きくなり、利益が残りにくくなるおそれがあります。

特に建設業では、繁忙期と閑散期の差があります。ピーク月に合わせて人を抱えすぎると、平常月の稼働が薄くなります。逆に平常月に合わせると、ピーク月に残業や不満が増えます。

このギャップを埋めるには、採用だけでなく、DX、外注、協力会社活用を組み合わせて考える必要があります。

解決|案件ランク別の工数を積み上げ、採用・DX・外注の順番を決める

ここでは、感覚ではなく数字で人員計画を組むための進め方をまとめます。

まず取り組みたいのは、案件を金額帯や難易度でランク分けし、それぞれに必要な工数を置くことです。たとえば、小口案件、中規模案件、手間のかかる案件、修繕案件などに分けて、1件あたり何人日かかるのかを仮置きします。

そのうえで、月別の案件数に掛け合わせます。すると、月平均ではなく、ピーク月に何人必要なのかが見えてきます。

見るべきポイントは、次のような項目です。

  • 小口案件が月にどれだけ発生しているか
  • 案件ランクごとの標準工数はどのくらいか
  • 修繕や短期対応など、別枠で見るべき案件があるか
  • マネージャーが実務に入れる割合はどの程度か
  • ピーク月と平常月の必要人数にどれくらい差があるか

ここまで見えると、「とにかく10名採用する」ではなく、「まずは数名採用し、報告書作成は外注化し、写真整理は標準化し、繁忙期は協力会社に振る」といった現実的な打ち手に分解できます。

名前入りの組織図をつくり、誰が何を担当しているかを可視化することも有効です。役職名だけではなく、実際に顧客対応をしている人、現場を見ている人、事務処理を抱えている人を並べてみると、見えなかった偏りが出てきます。

人員計画は、採用人数を決める作業ではありません。どの業務を人で持ち、どの業務を仕組みに寄せ、どの業務を外に出すかを決める作業です。

まとめ

売上を伸ばす局面では、「人が足りない」という声が必ず出てきます。ただ、その声をそのまま採用人数に置き換えると、固定費が増えすぎたり、現場の本当の詰まりが残ったりします。

まずは、案件ランクごとの工数を置き、月別、とくにピーク月の必要人数を見える化することが大切です。そのうえで、採用、DX、外注、協力会社活用を組み合わせれば、現場の負荷を下げながら売上目標に近づきやすくなります。

「何人採るか」から考えるのではなく、「どの業務に何人分の負荷がかかっているか」から考える。そこから、人員計画はかなり現実的になります。