厚生労働省は、「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」の情報を公表しています。
この制度は、個社が単独で申請する助成金ではありません。事業協同組合等が、構成員である中小企業者のために労働環境向上事業を行う場合に対象となります。
項目 | 内容 |
|---|---|
制度名 | 人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース) |
実施機関 | 厚生労働省 |
対象 | 改善計画の認定を受け、構成中小企業者のために中小企業労働環境向上事業を行う事業協同組合等 |
助成率 | 事業実施に要した費用の3分の2 |
上限額 | 大規模認定組合等:1,000万円、中規模認定組合等:800万円、小規模認定組合等:600万円 |
事業実施期間 | 1年間 |
主な対象事業 | 計画策定・調査事業、安定的雇用確保事業、職場定着事業、モデル事業普及活動事業 |
申請・問い合わせ | 都道府県労働局、ハローワーク。電子申請は雇用関係助成金ポータルから可能 |
建設企業がまず確認したいポイント
この助成金の申請主体は、建設会社そのものではなく、事業協同組合、協同組合連合会、一定の一般社団法人などの事業協同組合等です。
そのため、建設企業の経営者が最初に見るべきことは、自社単独の申請可否ではありません。
確認すべきは次の点です。
- 自社が加入している組合や団体が、制度上の事業協同組合等に当たるか
- その組合や団体の構成員に、中小企業者が含まれているか
- 組合として、採用・定着・職場環境改善に関する共通課題を事業化できるか
- 改善計画を作成し、都道府県知事の認定を受けられる体制があるか
- 労働局に提出する中小企業労働環境向上事業計画を作れるか
建設業の場合、中小労確法上の中小企業者として、資本金または出資総額3億円以下、または常時使用する従業員数300人以下の会社・個人が示されています。
「うちは人手不足で困っている」。 「若手が定着しない」。 「採用広報を単独でやる余力がない」。
そんな声が、同じ地域や同じ業種の組合内で重なっているなら、組合単位で検討する余地があります。
1週間で 17件の相談 がありました
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対象となる取り組み
中小企業労働環境向上事業は、次の4つで構成されます。
- 計画策定・調査事業
- 安定的雇用確保事業
- 職場定着事業
- モデル事業普及活動事業
制度上、計画策定・調査事業とモデル事業普及活動事業は必須です。
さらに、安定的雇用確保事業または職場定着事業のいずれかを、事業実施期間内に実施する必要があります。
具体例として、パンフレットでは次のような事業が示されています。
- 雇用管理改善の好事例集の作成
- 雇用管理改善啓発のセミナー開催
- モデル企業見学会
- 異業種団体交流会
- 雇用管理の相談会
- 団体紹介のための新聞広告やWeb広告の掲載
- 業界PRのための各種催物
- 集団説明会等共同活動
- 従業員表彰、技能コンクール、合同入社式などのモラール向上事業
- 事業成果の分析検討
建設業界の組合であれば、採用活動、職場定着、教育訓練、職場環境の改善など、複数社に共通するテーマを整理することが出発点になります。
ただし、制度上は改善計画の内容に沿った取り組みであることが重要です。思いついた事業を後から助成対象に寄せるのではなく、先に計画との整合を確認する必要があります。
助成額と上限額
助成額は、原則として事業実施に要した費用の3分の2です。
上限額は、構成中小企業者数によって変わります。
認定組合等の区分 | 構成中小企業者数 | 上限額 |
|---|---|---|
大規模認定組合等 | 500以上 | 1,000万円 |
中規模認定組合等 | 100以上500未満 | 800万円 |
小規模認定組合等 | 100未満 | 600万円 |
また、労働環境向上推進員の設置に要した費用については、助成額の算定上、別途の扱いがあります。パンフレットでは、労働環境向上推進員の設置費に関する算定部分について限度額400万円とされています。
対象経費として示されているもの
対象経費として、主に次の費目が示されています。
- 謝金
- 旅費
- 会議費
- 印刷製本費
- 通信運搬費
- 借料
- 賃金
- 賞状等費
- 委託費
- 受講料
- 広報費
- 事業消耗品費
- 給与
- その他、管轄労働局長が必要と認める経費
一方で、対象外となるものもあります。
たとえば、事業実施期間を超える事業に関する支出は助成対象外です。労働環境向上推進員の設置に要した各種備品も対象外とされています。
領収書や実施内容を証明する書類も必要です。組合の事務局だけでなく、構成企業側にも資料提出や調査協力が求められる場面があります。
手続の流れ
パンフレットでは、手続の流れは次のように示されています。
- 改善計画の作成・提出
主たる事務所の所在地を管轄する都道府県へ提出します。
- 都道府県知事による改善計画の認定
この認定は引き続き必要です。
- 中小企業労働環境向上事業計画の作成・提出
事業実施計画期間の開始予定日の1か月前までに、管轄の都道府県労働局へ提出します。
- 中小企業労働環境向上事業の実施
計画に基づいて、1年間の事業を実施します。
- 支給申請書の作成・提出
事業実施期間の末日の翌日から起算して2か月以内に、管轄の都道府県労働局へ提出します。
令和7年度版では、都道府県労働局長による中小企業労働環境向上事業計画の認定が廃止され、事業計画届の提出に変更されています。
ただし、都道府県知事による改善計画の認定は必要です。ここを取り違えないよう注意が必要です。
組合・団体で動く前に整理したいこと
この助成金は、個社の採用費を単純に補助する制度ではありません。
組合や団体が、構成企業に共通する労働環境の課題を調査し、計画を立て、事業として実施し、成果を普及する制度です。
そのため、建設企業側では、まず組合内で次のような材料を持ち寄ると話が進みやすくなります。
- 採用で困っている職種や層
- 離職や定着に関する課題
- 労働時間、休日、教育訓練、福利厚生などの改善テーマ
- 共同で実施したい説明会、研修、相談会、広報活動
- 構成企業が協力できる調査やアンケートの範囲
「うちだけでは難しい」。 そう感じる採用・定着の課題ほど、団体単位で取り組む意味があります。
活用可能性を組合単位で確かめる
この制度は、計画づくりと手続の順番が大切です。まずは、自社が加入している組合や団体が対象になり得るか。次に、組合としてどの課題に取り組むのか。そこを丁寧に確認する必要があります。
自社だけで抱え込まず、組合や団体で使える支援策として整理したい場合は、早めに論点を洗い出しておくと安心です。無理な営業はいたしませんので、制度の活用可能性を確認したい段階でも差し支えありません。