前提|十数億円規模を目指すなかで、現場はすでに三十名前後で回している状態
ここでは、売上成長を目指す建設会社が、現場の人数不足にどう向き合うかを整理します。
ある建設会社では、現在の売上ペースは目標に一歩届かないものの、受注そのものは一定量あります。社員・パート・派遣を含めると、現場を支える人員は三十名前後。過去と比べても、かなり大きな体制になっていました。
一方で、現場側の感覚としては「人数は増えているのに、まだ足りない」という状態です。特に繁忙月には、通常月とは比べものにならない量の案件が動きます。月によっては数百件規模の案件が重なり、体感だけでなく、実際の工数としても現場に負荷がかかっていました。
さらに、現場スタッフへの面談では、勤務時間への不満が多く出ていました。単に忙しいだけでなく、「この働き方を続けられるのか」という違和感が現場に溜まり始めている状況です。
課題|人を増やすだけでは、売上目標に近づいても利益と現場が苦しくなる
一番わかりやすい解決策は採用です。ただ、建設業の中小企業では、採用だけで人員不足を埋めようとすると、別の問題が出てきます。
たとえば、現場を回すために必要な人数を単純に積み上げると、ピーク時には三十人台半ば以上が必要になる見込みでした。現在の体制から見ると、さらに相当数の増員が必要です。
しかし、人を増やせば固定費も増えます。売上目標に近づいても、利益が残りにくくなる可能性があります。また、採用した人を育てる時間も必要です。現場の責任者が教育や調整に追われると、本来見るべき顧客対応や現場判断に時間を使えなくなります。
よくあるのは、マネージャーがピープルマネジメントや顧客対応に集中した結果、現場の実務者としては実質的に一人分足りなくなるケースです。帳簿上の人数は足りているように見えても、役割で見ると足りていない。ここが人員計画の難しいところです。
「あと何人採ればいいのか」ではなく、「どの役割に、どれだけの工数が足りないのか」まで見ないと、採用しても忙しさが残ってしまいます。
背景|小口案件が千件単位で積み上がり、繁忙月だけ工数が跳ね上がる構造
この会社では、案件データを金額帯や規模感で分けて見ると、小口案件が非常に多い構造でした。小さな案件が千件単位であり、中規模案件も数百件あります。
小口案件は一件あたりの工数が小さく見えます。ただ、件数が多いと、確認・手配・報告・請求といった周辺業務が積み上がります。大きな案件だけを見ていると見落としがちですが、実際には小口案件の処理負荷が現場を圧迫していることがあります。
さらに、月ごとの波もあります。ある繁忙月では、月間で六百件を超える案件が動いていました。案件ランクごとに標準工数を置き、月別に積み上げると、その月だけ必要人数が大きく跳ね上がります。
このとき大事なのは、平均だけで見ないことです。
- 月平均では何人必要か
- 繁忙月では何人必要か
- 小口案件と中規模案件で、どの業務が詰まっているか
- 修繕のように別動きの案件は、通常案件と分けて見られているか
平均人数だけで計画すると、繁忙期に残業や休日対応で吸収する前提になりがちです。すると、勤務時間への不満が強まり、離職リスクも高まります。
現場の「もう回らない」という声は、感情論ではなく、案件数と工数の波から見ても自然な反応だったと言えます。
解決|案件ランク別の必要人数を土台にして、採用・DX・外注の順番を決める
人員不足を解くには、最初に必要人数を定量化することが有効です。感覚ではなく、案件ランクごとの標準工数を置き、月別に積み上げていきます。
具体的には、次のような見方です。
- 案件を規模別に分ける
- 各ランクに、標準的な人日を置く
- 月別の案件数に掛け合わせる
- 通常月とピーク月の必要人数を分けて見る
- 修繕や短期対応など、性質の違う案件は別枠で見る
ここまで見えると、「採用で埋める部分」と「採用以外で減らす部分」を分けて話せます。
たとえば、ピーク時に十人分足りないとしても、その十人をすべて採用で埋める必要があるとは限りません。報告書作成や写真整理のような定型業務をDXや外注で圧縮できれば、採用必要数を現実的な人数に抑えられます。
また、派遣やパートから正社員へ移行できる人がいるなら、戦力化のスピードは上がります。一方で、正社員化するほど固定費も増えるため、どの職種・どの役割を正社員で持つべきかは慎重に見たいところです。
大切なのは、採用・DX・外注を別々に考えないことです。
「今年はまず何人採るのか」 「どの業務を半人分でも減らすのか」 「どの案件を協力会社に渡せるのか」
この三つを同じ表の上で見ると、経営判断がしやすくなります。現場に対しても、「忙しいから頑張ってほしい」ではなく、「この業務を減らすために、ここから手を打つ」と説明できます。
まとめ
売上を伸ばしたい建設会社ほど、人員不足は避けて通れません。ただ、人数だけを増やすと、利益やマネジメント負荷が重くなります。
まずは、案件ランクごとの工数と月別の波を見える化することです。そこから、採用で持つべき業務、DXで軽くする業務、外注や協力会社に任せられる業務を分けていきます。
現場の「人が足りない」という声は、経営にとって重要な一次情報です。その声を、案件数・工数・役割に翻訳できると、単なる不満ではなく、次の打ち手を決める材料になります。
採用計画は、人数の計画であると同時に、仕事の配分を見直す計画でもあります。まずは繁忙月の必要人数を出すところから始めるだけでも、議論の見え方は大きく変わります。