前提|高校や訓練校とのつながりで若手を採ってきた専門工事会社が応募減少に直面している状況

ここでは、高校新卒採用に長く取り組んできた専門工事会社の悩みを扱います。

ある会社では、昔から付き合いのある採用ルートを通じて、高校を卒業する若手を職人として迎えてきました。入社後は、週末に通う訓練の場もあり、座学と実技を学びながら現場で育っていく流れがありました。

会社としても、若手を育てることを大切にしてきました。過去には毎年数名ずつ若手が入り、時間をかけて一人前になり、今では会社の主力になっています。

しかし、近年はその流れが細くなっています。そもそも採用ルートに来る人数が減り、来たとしても他社に流れることが増えました。大手や名前の知られた会社、リフォーム系の会社に若手が集まりやすくなっているのです。

担当者はこう話していました。

「親御さんが、私たちのような無名な会社に入れる勇気をなかなか持てないんです」

中小の専門工事会社にとって、これはかなり切実な悩みです。

課題|既存ルートに頼るだけでは若手との接点も選ばれる理由も足りなくなっている

課題は、これまで機能していた採用ルートだけでは、若手との接点が足りなくなっていることです。

学校訪問を続けてきた会社でも、以前と同じように応募が来るとは限りません。生徒は地元志向だったり、先輩がいる会社を選んだり、知名度のある会社を選んだりします。親御さんも、知らない会社より名前を聞いたことのある会社に安心しやすいものです。

さらに、学校とのつながりは一度切れると戻すのに時間がかかります。

実際に、ある学校との関係が一度途切れたことで、10年以上応募が来なくなったケースもありました。何度も通い直して、ようやく数年前から関係が戻り始めたそうです。

「先輩が行っている会社だから、自分も行こう」

この流れがある会社は強いです。逆に、OBとの接点や学校との信頼が薄くなると、会社の魅力を伝える前に候補から外れてしまいます。

採用難の原因は、求人票の出し方だけではありません。若手が会社を知り、安心し、選ぶまでの道筋が弱くなっていることが大きいのです。

背景|若手本人も親御さんもスマホで会社を調べ、先輩の顔が見える会社に安心する時代

背景には、会社の見られ方の変化があります。

今の若手は、学校で会社名を聞いたら、まずスマホで調べます。求人票だけで決めるのではなく、ホームページを見て、写真を見て、働いている人の雰囲気を見ます。

そこで情報が古かったり、社員の顔が見えなかったり、仕事内容が分かりづらかったりすると、会社の実力があっても伝わりません。

特に専門工事会社の場合、実際には長年の取引先があり、確かな技術があり、若手を育てる文化もあります。しかし、それが外から見えなければ、若手や親御さんには届きません。

また、若手に刺さる言葉も変わっています。

昔は「手に職」「稼げる」「根性があれば大丈夫」で伝わったかもしれません。今は、それに加えて、どんな先輩がいるのか、未経験から何年で何ができるようになるのか、きつい時期をどう支えてくれるのかまで見られています。

会社側が伝えたいことと、若手が知りたいことがズレていると、学校を回っても応募にはつながりにくくなります。

解決|来てほしい人物像を決め、学校訪問・OB・採用ページのメッセージをそろえる

解決の第一歩は、「誰に来てほしいのか」を具体的に決めることです。

ただ若い人がほしい、未経験者がほしい、ではメッセージがぼやけます。たとえば、次のように整理します。

  • 高校新卒を中心に狙うのか
  • 20代の第二新卒も対象にするのか
  • 体を動かす仕事が好きな人を求めるのか
  • コツコツ技術を覚えたい人を求めるのか
  • 将来は職人として独り立ちしたい人なのか、管理側にも進みたい人なのか

ある会社では、「2番目、3番目の就職でもいい。20代の第二新卒にも会いたい」という話が出ていました。これは大事な視点です。

高校新卒だけに絞ると母数が限られます。少し社会に出てみたけれど合わなかった人、手に職をつけたいと考え直した人、体を動かす仕事に戻りたい人。そうした層にも、専門工事会社の魅力は届く可能性があります。

次に、その人たちが振り向く言葉を考えます。

「未経験でも、1年目はこの順番で覚えます」 「先輩が現場だけでなく生活面も見ます」 「職人としても、管理側としても道があります」

こうした言葉は、若手本人にも親御さんにも伝わりやすいです。

そして、学校訪問、OBの協力、採用ページ、求人原稿の内容をそろえます。学校の先生に話す内容と、ホームページに書いてある内容が一致していると、信頼感が出ます。OBが母校を訪問し、自分の言葉で仕事を話せると、さらに強くなります。

採用活動は、単発の求人ではなく、会社を知ってもらう活動の積み重ねです。

まとめ

学校を回っているのに応募が減る。昔からの採用ルートに人が来なくなる。無名の会社には親御さんの不安が残る。

これは、多くの専門工事会社に起きている変化です。

ただ、知名度がないから採れない、と決めつける必要はありません。中小企業には、若手を近い距離で育てられる強さがあります。現場で技術を身につけ、先輩の背中を見ながら、独り立ちしていける環境があります。

大切なのは、その魅力を今の若手に届く形に整えることです。

来てほしい人物像を決める。高校新卒だけでなく第二新卒まで間口を広げる。学校訪問を続けながら、OBの力を借りる。採用ページや求人原稿で、育成の流れと社員の顔を見せる。

これらを一つずつそろえていくことで、無名の会社でも選ばれる理由はつくれます。採用は待つだけではなく、会社の見え方を磨き続ける仕事になっています。