前提|売上目標を追う一方で、現場面談では勤務時間への不満が出ている状態
建設会社が成長していく過程では、経営側が見ている数字と、現場が感じている負荷にズレが出ることがあります。
ある建設会社では、売上をさらに伸ばす目標を持ちながら、現場側では人手不足や勤務時間への不満が出ていました。複数名のスタッフ面談を行ったところ、特に多かったのが勤務時間に関する声です。
経営側から見ると、「人も増やしている」「売上も伸びている」「まだ改善できる余地がある」と見えるかもしれません。一方、現場側から見ると、「件数が増えている」「報告業務も多い」「ピーク時に無理が出る」という感覚があります。
このとき、現場から経営層へ何をどう伝えるかは、とても大事です。
「大変です」だけでは、経営判断にはつながりません。かといって、採用人数やコストの話まで現場だけでまとめようとすると、話が大きくなりすぎて動き出しが遅くなります。
課題|利益やコストの議論に入る前に、現場の一次情報が経営層へ届いていない
組織改善の話になると、すぐに採用費、外注費、利益率、事業計画の議論に入りがちです。もちろん、最終的には必要な議論です。
ただ、その前にやるべきことがあります。現場の状態を、経営層が判断できる形で届けることです。
現場の声には、数字だけでは見えない情報があります。
- 勤務時間への不満がどこに集中しているか
- どの業務が毎日負担になっているか
- 誰に判断や確認が集中しているか
- ピーク月にどの部署が詰まりやすいか
- 採用すれば解決する話と、仕組みを変えるべき話が混ざっていないか
これらを整理せずに「人を増やしたい」と伝えると、経営側は当然、「何人必要なのか」「本当に採用で解決するのか」「利益は残るのか」と考えます。
一方で、現場側がそこまで全部まとめようとすると、提案資料づくりに時間がかかり、肝心の危機感が届くタイミングを逃してしまいます。
まずは、現場の現状を一次情報として届ける。そのうえで、コストや事業計画の議論に進む。この順番のほうが、話がこじれにくくなります。
背景|人数は増えているのに、役割と業務量の見える化が追いついていない
この会社では、以前よりも人員は増えていました。社員に加えて、パートや派遣も含めると総勢30名前後の体制です。過去の最大人数と比べても、組織は大きくなっています。
それでも現場には負荷感がありました。
理由のひとつは、人数だけでは実態が見えないことです。たとえば、マネージャーが顧客対応やメンバー管理に時間を使うと、現場作業に入れる時間は減ります。組織図上は1人いても、実務担当として丸ごと1人分とは限りません。
また、案件数の山もあります。月平均では回っているように見えても、ピーク月には件数が大きく増えます。小口案件や修繕案件が多い場合、売上金額以上に確認や報告の手間が増えます。
つまり、経営層へ伝えるべきなのは、単なる不満ではありません。
「現場が忙しいです」ではなく、次のように整理する必要があります。
- 現在、誰がどの役割を担っているのか
- どの業務に時間がかかっているのか
- ピーク時に何人分の稼働が必要なのか
- 採用、DX、外注のどれで吸収できそうか
- 現場スタッフの声として、何が不満や離職リスクにつながっているのか
ここまで整理されると、経営側も「感情的な訴え」ではなく「判断材料」として受け取りやすくなります。
解決|まず現場の声と名前入り組織図を整理し、施策の方向性までを報告する
経営層へ伝えるときは、最初から完成された事業計画にしなくても構いません。むしろ、初回は現場の現状と施策の方向性を共有する場にするほうが、議論が進みやすいことがあります。
整理したい資料は、大きく3つです。
1つ目は、現場面談の要約です。誰が何を言ったかをそのまま出すのではなく、勤務時間、業務量、報告作業、役割の偏りなど、テーマごとに整理します。個人攻撃にならないようにしながら、現場の温度感は落とさないことが大切です。
2つ目は、名前入りの組織図です。部署だけでなく、誰がどの業務を担っているかを見える化します。これにより、特定の人に確認や判断が集中している、マネージャーが実務を抱えすぎている、といった構造が見えます。
3つ目は、案件数と必要人数のざっくり試算です。案件をランク別に分け、1件あたりの工数を置き、月平均とピーク月で必要人数を比べます。ここでは完璧な数字よりも、経営層が「今の体制ではどこが足りないのか」を理解できる粒度が重要です。
この3つをそろえたうえで、施策の方向性を添えます。
- 採用で埋めるべき役割
- DXで減らせそうな定型作業
- 外注化できそうな報告書作成や事務処理
- 協力会社に委託できる案件領域
ここまで示せれば、次の議論でコストや利益計画に入りやすくなります。
「現場は大変です」ではなく、「現場ではこの負荷があり、原因はここにあり、打ち手はこの方向です」と伝える。これが、経営判断につながる報告の形です。
まとめ
現場の危機感を経営層へ伝えるとき、いきなり採用費や利益計画までまとめようとすると、話が重くなりがちです。
まず必要なのは、現場の一次情報を整理して届けることです。勤務時間への不満、業務量の偏り、ピーク月の負荷、役割の曖昧さを、組織図や案件データと合わせて見える化します。
そのうえで、採用・DX・外注の方向性を示す。細かなコストや事業計画は、その後に議論すれば十分です。
経営層に伝えるべきなのは、不安ではなく判断材料です。現場の声を起点にしながら、数字と役割で整理することで、組織強化の話は前に進みやすくなります。